第22話 解答
やけに多い『た』。それにたぬきと思われるゆるい絵。
まさかそんな中学生にもなって、と皆が思う。『たぬきだから【たを抜く】』なんて小学校低学年の問題だ。しかしこの問題を出したのは花咲。いっちゃ悪いがそこまで知的には見えない。
『いひ』
『いひ です』
『まさか、いひ?』
『いひ。かんたんすぎでしょ』
『いひ だけどはんぺん』
『【いひ】 大根!』
『なにこれ?』
グッチー画面には『いひ』が続いた。十人程が答えている。しかし花咲はにんまりしているだけで正解だなんて言わない。そんな中、特別改行の多い書き込みがあった。
『探偵猫 答えは【化】。たいたたひたからたを抜いて、それを片仮名に変換。
イとヒになったらひっつけて化。たぬきだから化ける。出題者よ、簡単すぎるぞ。この程度の謎で俺は満足できはしない』
クラス中があっとなる。ひらがなで『いひ』だけでなくそれをカタカナにしてひっつける。
さらに花咲はにんまりとした。探偵猫が書き込んでいる。それも花咲の思い描いていた通りにに。
そしてクラスの中、同時ににんまりとした生徒が一人。
『答えは【囮】。途中までは探偵猫さんの言うとおり。だけどイヒは枠線で囲ってある。その枠線も答えのうち。□の中に化をいれて、囮。化という答えは囮だった。いい問題だ』
今度は書き込んでいる姿が見えないよう気をつけて書いた桂木の書き込み。それにクラス中は盛り上がる。
「そっか、そこまでが問題……」
「なんだよ、ひっかけ問題かよ」
「花咲さん、まさかここまで狙って……?」
クラスの大半が『いひ』と答え、探偵猫さえ『化』と答え、本命である桂木だけが『囮』と答える。それが花咲の狙い通りだ。
本物の探偵だけが答えられる難問を考えろ、と言われた時には悩んだものだが、焦って早く答えたい人達がひっかかるような問題を作ればいいと花咲は気付いたのだった。
そこから先は辞書を見ながら使えそうな漢字を見つけるだけだ。桂木もそれを読んで、焦らず答える事ができた。
「これさ、もしかしてこの間の盗難事件の時の探偵じゃね?」
郷田が書き込みを眺めながらつぶやいた。
「ほら、この必要な事しか言わないかんじ。変に主張しないとこがそれっぽい。あ、最近よくいる変な偽物とかじゃなくて本物な」
郷田もずっとグッチーを利用していて、細かな違和感に気付いていたのだろう。本物の探偵は理路整然と推理だけを書き込む。それは盗難事件の時と同じで、同一人物であると気付いた。
「ID探ったらわかるか、ってID変わってるし前の先生の事件の書き込み消えてるし」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます