第21話 □たいたたひた

「そ、そう。お父さんが仕事の関係でもらってきて。そんな高かったの知らなかったよ」

「やっぱりな。細川、俺がその景品ゲットしたら一万で買うか?」

「買う買う。つか普通にゲームでも勝つからな」


花咲の調子やクラスの雰囲気はいつも通りにもどった。父親の仕事の関係なら高額であっても、それを知らなくても仕方ない。中学生主催ゲー厶の景品としては高額だが、グッチーは花咲父も関わっている。そのアプリのアンケートみたいなものだからと納得した。

そして次に気になるのはゲームの内容だ。


「ゲームは簡単。私が今から問題を黒板に書き込むから、答えがわかったらそれをグッチーに書き込んでね。一番最初に答えた人が景品ゲット。でも参加人数を確認したいだけだから問題がわからなくても好きなおでんの具材でも書き込んでくれると助かる。正解者がいない場合はその人たちから選ぶし」

「名前とか書き込んだ方がいいか?」

「匿名だから書き込まないで。三日以内に私に声かけて、書き込みIDを教えて。それから私がリアルで指定する言葉をグッチーに書き込んでね。それで本人確認って事にするから」

「どういうこと?」


やはりクラスの大半はグッチーの仕組みを知らないらしい。そこで改めて花咲は投稿者に与えられる三日限定のIDについて説明した。すでに桂木に一度説明してあるので、なめらかにわかりやすく説明する事ができた。


「つまり、三日間同じ色で書かれた投稿は同じ人ってこと。色の違いがわからないときは▲のボタン押したら英数字が出るから、それがIDだよ」


花咲はちらりと田中を見た。田中はスマホを見たまま青くなっている。やはり彼もIDの仕組みを知らなかったか、こうして仕組みを明かされる事によりもう自演はできないと悟ったのだろう。


「じゃあ問題を書きまーす」


そうして花咲は黒板に向かう。

まずは『たいたたひた』という文字。それを強調するように四角く囲み、その左下にゆるっとしたたぬきらしき絵を描く。


問題とは、それだけだった。

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