第17話 やっちゃって!

『探偵とか言う奴。キモい書き込みはやめろ。俺らはお前を許してねーからな。お前のせいで受験なのに先生いなくなったんだぞ。うちのクラスの奴らが受験で失敗したらお前のせいだからな。お前の正体がわかり次第ボコる』


「これでよし」


その書き込みと平然とした顔の桂木に花咲はドン引きした。偽探偵とは別の意味でやばい。


「いや、やりたいことはわかるけどこれはどうなの……表情も変えずに友達のことボコるとかさ。いくらネットが変わっても人間が変わんなきゃ意味ないって話したばかりなのに」

「でもこれでもう偽物は怖がって書き込まないだろ」


桂木の考え。それは偽探偵を否定する者を演じ、暴力で脅す事だった。

偽探偵はきっと何の努力もせずモテたいはず。だからいつか名乗り出すかもしれないが、こうして名乗る事により暴力を振るわれるとなれば考えを改める。これで怖くなって名乗らなくなるだろう。


しかし、予想外の投稿が続いた。


『ちょっと! 探偵猫様にひどいこと言わないでよ! 彼は私達女子の救世主だわ。探偵猫様に何かしたら女子全員敵に回すわよ』


緑のフレームで違和感のある文章だった。今度は桂木だけでなく花咲も鳥肌が立つ。この鳥肌には覚えがあった。 


「これ、もしかして自演?」

「そだね。IDが偽探偵と同じだ。色も緑で同じだし。だいたい女子って『〜よ』とか『〜だわ』なんてネタでもなきゃ言わないし。きっと女の子とろくに話したことがないんだろうなぁ。すごく寒い」

「花咲さん、そこまでにしといてあげて。さすがに可哀想だ」

「あと性別について明かしていないのに『彼』って言ってる。みんな結構失言するもんだねえ」

「だからそこまでにしといてあげて。僕が可哀想だ」


これほどまでその気はなくても桂木を辛くさせる言葉はない。偽探偵のすることはいろいろと雑すぎて簡単に見破れてしまい、いっそ哀れにも思う。しかしこれは脅しが効いていないということだ。逆に女子の存在を利用して脅しに脅し返してきたのだから。


「偽探偵はIDと色のこと知らないのかな」

「知らないかもね。私だって今桂木君に初めて教えたくらい。普通の使い方なら自演なんてするはずがないものだし。取説的なページを読む人ってのも少数派だろうしね。普通なら色で気付くものだろうけど、色の違いがわからない人もいるらしいし」

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