第15話 三日限定の色
望みが通じて花咲は瞳を輝かせる。長く語ったかいがあった。本音の言えない彼ならばわかってくれる。もしくは根負けして目立ちたくないから助けてくれると信じていた。
「う、うん! ありがと!」
「まずは田中の書き込みを見ればいいかな。本当にあいつが探偵を名乗っているのかが気になる。あとチャットがどういう作りかを教えて。まさか本当に他サービスのアカウントと紐付けてはいないよね?」
「ねちっこいな桂木君は。私がカマかけたことまだ根にもってるし」
「あんなのにひっかかるのがすべての敗因だった」
「私とこうして話すのが負けかよ」
そんな軽口を叩きながら、花咲は改めてスマホを指差しながらチャットルームについて語りだした。
「これはグッチー。うちのお父さんが作ったアプリなの。名前通り愚痴をはくのが目的ね。愚痴ってよくないものに思われがちだけど、企業的には宝の山がどうたらかんたらで」
「ああ、クレームが新製品のヒントになるとかって話か」
「うん。そういうかんじー」
元は企業向けのアプリだったのだろう。匿名で愚痴をはく場。それはストレス発散のためでもあるし、新たなアイデアを生み出す糸口になるのでは、となかなかに人気があるらしい。それは花咲父が作った。
「で、そこで私が設定してルームを作ったの。ほらカラフルでかわいいでしょ」
「カラフルだけどそれがなに?」
「これ、匿名だけど発言者はずっと同じ色なの。名前は出なくてもこの人の発言をさかのぼりたければ同じ色を探せばいいってはなし。でも時間経過で切り替わって、投稿から三日すれば色が変わるよ」
「つまりIDか。切り替わりは三日後?」
「そ。で、発言も三日後に消える。スクショでもしない限り残らないよ」
「色、似てるのが出てくると思うけど」
「短時間にそんなに書き込まれるものじゃないし、似た色は使われないようわりふられるけど、ほらここ、三角のマーク押すと細かい情報出るよ。英数字のIDと投稿日時」
そういえば、前に桂木が推理を披露した時は画面が青ばかりになっていた。その青が桂木に設定された色だったのだろう。
三日ごとで発言者に色を割り振り、それで同一人物かどうかは確かめられる。誰がどの色かまではわからない。どれだけ書き込んだかはわかる。ただしその色は三日間限定で、書き込みは三日後には消去される。投稿者についてわかるのはそのくらいだ。
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