第3話 犯人探し、開始

「じゃあ犯人は教室に誰もいないときを狙って、先生から盗んだ鍵で花咲の財布を盗んだんだ!」

「郷田、あんた推理向いてないね。だったらなんで細川君の財布は無事だったの?」

「それは……」

「そもそもその方法は難易度高すぎ。今日移動教室なかったじゃん」


誰も見てない時すらなかった。クラスメイトが盗んだというのも難しい。花咲達はあれこれ考えては唸った。


「あのう、僕は役に立たなさそうだし、塾があるから帰っていい?」


膠着状態の教室で あまり口数のないガリ勉と呼ばれる生徒、三田が言いだした。彼らは受験生。犯人探しも大事だが、受験のための勉強も大事だ。花咲が財布を預けたという証言もすでに出ているのなら、その証人以外は帰っていい。


「待てよ、犯人は現場から離れたがるものだぜ?」


決め顔の郷田にそう言われれば三田も皆も帰るわけにはいかなくなった。このクラスで一番強いのは体格がよく格闘技もしている郷田で、彼とは別の意味で強いのは花咲だ。推理に向いてない郷田は何がなんでも犯人を見つけようとするだろう。もしかしたら今から帰ろうとする人物を犯人に仕立てあげるかもしれない。


「待って郷田。変な事言わない。三田君も帰っていいから。皆も、転校生の桂木君もね。最近来たばかりでまだクラスのことよくわかんないでしょ」


塾のある三田をこれ以上引き止められない。そして最近、五月という妙な時期にこのクラスの一員となった桂木も。桂木はまだ学校に慣れるだけで精一杯で、金庫のシステムすらよくわかっていないはずだ。引き止めてはかわいそうだ。

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