第2話 おばあちゃん子
そうなるとクラスで一番腕っぷしが強い郷田が黙っていない。郷田は以前から花咲に好意がある事を隠さず、いいところを見せる機会としたようだ。
「つまり盗まれたってことかよ。花咲、その財布にはどれくらい入ってた?」
「今日志望校に書類取りに行くから、その交通カードと受験対策の参考書買うための二千円」
「なんだその額。しょぼ!」
「額じゃないし! おばあちゃんに買ってもらった大事な財布だし!」
「相変わらずおばあちゃん子だな。確かピンクのラメラメのやつだっけ。前に俺の財布と一緒に貴重品袋に入れたとき、俺の財布までラメラメになってたぞ」
「いーでしょラメぐらい!」
花咲は派手な見かけに反しておばあちゃん子だ。なので金銭よりも財布がなくなった事の方がつらいらしい。
額は少なく他の物の財布もあるのに、花咲の財布だけがなくなるとはますますわからなくなる。
「細川君! 私の財布細川君の財布の中にまぎれ込んだりしてない?!」
「どんだけミニ財布使ってんだよ。俺の財布こんな小銭入れだぜ」
細川は財布を改めて見せる。それは黒の革で出来た、カードも入らないような小さなものだった。巾着内で大きな財布の中に小さな財布が入ってしまった、というのも考えにくい。
「盗難だとしたら先生くらいにしか盗めそうにないんだけど」
平が呟く。財布は金庫に入っていたはずで、金庫に入ればただの生徒は盗めない。となれば金庫の鍵を持っている教師達が怪しくなる。
「いや、魔が差したとしても二千円くらいだしねえ。先生がそんなお金盗んでもどうしようもないよ。そんな額で誰が見てるかわからない場の金庫開けないだろうし」
財布の中身をよく知っている花咲が苦々しい表情で答えた。教師ならすぐに発覚する二千円よりも自分の安定した給料の方が大事なはずだ。なので教師が盗んだとは考え辛い。
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