LET’S人間界 その7

 「どうやってこの魔力結晶を? 私はいつも懐に入れていましたが」

 「パイン殿は料理の際にエプロンドレスを外されるのでその時に」

 「それで何に使ったんです?」

 「それだけは言えません。この身が滅びようとも墓場までこのことは持っていきます。」

 魔王様。この爺がなんとしても魔王様の秘密を守り通しますぞ!私も魔王様と同じ頃は大変苦労したものです。その苦労を魔王様にも味わって欲しくなかった。パイン殿にはなんとしても見つかりたくないとおっしゃったのですから、この爺がなんとしてでも守り抜きます。

 魔王様のエロ本。

 爺は心の中で決意を新たにした。

 「そうですか。まあいいです。だいたい見当もついていますし」

 「なんですと!? パイン殿、それはどういう」

 「首謀者が一番に口を割ってしまうとは難儀なことですね」

 「そんな、魔王様……」

 爺に呼ばれようやく愚痴るのをやめた魔王だったが、周りの話など全く聞いていなかったためぽかんとするのみだ。

 「なんでそんな目で俺を見るんだよ。爺」

 「所詮はこの爺も魔王様にとっては代替品がいくらでもある、いち老兵士に過ぎないのですね」

 「なんでいきなりそんなこと言い出すんだ。 俺がなんかしたか?」

 「男の約束だと思っていたのは私だけだったのですね。こんなにもあっさりと裏切られてしまうとは」

 「男のって? 約束なんかしたっけ……。あ! あれか。いや、なんつーかあれは話の流れでっていうか。何にせよ悪かった! 俺が自分で頼んでおきながら。でも、ブツはもうパインの手中にあったからてっきりもう全部筒抜けなのかと思って。すまん」

 「そんな……。私の極秘ルートを用いて手に入れ、隠し場所もご指導させて頂いたのにも関わらずこんなにも早く見つかってしまうとは。これはもう魔王様の責任などではありません。パイン殿の目を欺くことのできなかった私の責任です。魔王様、先程の無礼な言葉お許し下さい」

 「いや、俺こそもっと大切に肌身離さず持っておくべきだった。爺の気持ちを無下に扱ってしまった。こんな俺を許してくれ。爺」

 「魔王様っ」

 「爺っ」

 医務室の中で抱擁を交わし新たに強い絆で結ばれた魔王と爺を見つめるハリルとパイン以外のメイド達は、会話の内容から大方の話察したのか苦笑いを浮かべていた。

 ハリルは少々そう言った方面には疎いのかわけもわからず感動の涙を瞳の端に浮かべ、リングスは少年時代を思い出しているのか感傷的な表情で頷いている。

 パインはというと暇を持て余しているのが見え見えな様子で髪の毛先を指に絡めている。

 魔王と爺はひとしきり互いの健闘を讃えた後、満足気まんぞくげに離れた。

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