LET’S人間界 その8
二人の様子を茶番劇でも見るように眺めていたパインは、独り言を装って特定の人物に対して伝わるように呟いた。
「さて、この際爺と魔王様の一件についての粛正は後回しにするとして、どうやって魔力を集めましょうか」
「さらっと死亡宣告が聞こえたな。まあいい。なあパイン、俺の魔力使ったらどんくらいの魔法が発動できんだ?」
「いや、幾ら何でも門の召喚は無理だと思いますよ」
「なんだよ、ばれてたのか」
「魔王様が魔力を使わずとも、新たに魔力結晶を買えば解決です」
「パイン殿、残念ながら魔具屋は商品調達の旅に出ておりますゆえ」
「なっ、こんな時に……!」
怒りを露わにしたパインは魅惑の唇に手を当て考え事を始めた。
「おやおや? これは俺の力が必要なのではないかな、パインくん?」
いやらしさここに極まれり。
OLに立場を利用して関係を迫るエロ上司の如き顔で、魔王はパインにゆっくりと歩み寄った。
「ご心配なく。この程度問題にもなりません」
「ほほう?」
「魔力を持っているのは何も魔王様だけではありません。ここにいる皆さんの魔力を合わせれば中位魔法程度なら発動できます」
「本当にそうかな?」
「ええ。お見せしましょう。すみませんが、皆さんご協力お願いします」
呼びかけに応じた魔王以外の7人が近くに集まると薬品庫を向いたパインの背中に手を当てた。
すかさずパインは右手を前にまっすぐ突き出し
「門よ開け!」
門の召喚を行おうとした。
が、またもやパインの右手には何の変化も起こらなかった。
「全員の魔力を持ってしてもたりないというのですか……」
絶望のあまりパインは動けなくなってしまった。後ろのメイドと兵士も申し訳なさそうに俯いた。
「いやいや、まさかあれだけの大口を叩いておきながらこの様とは実に滑稽だな。これは俺の魔力も必要だよな~。でもな~、必要ないって言われたしな~。赤ん坊もミルク飲みたいだろうな~」
絶望に打ちひしがれるパインを見ながら嘲笑する魔王の姿は、なんとも卑劣な、それこそ魔王そのものだ。
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