人間界へ

パインのおっぱ、げふんげふん!

 「「「え!?」」」

 魔王の爆弾発言は、医務室を揺るがした。

 その中でも、本来は顔色一つ変えないパインの動揺ぶりが最も大きかった。

 「んっ、んあっ」

 そしてそれは、ベッドの上の赤ちゃんにも被害を及ぼした。

 「おいっ! 赤ん坊が起きるだろっ」

 

 「「「っ!!」」」

 

 全員が息を呑み、ベッドの上に視線を向ける。そこでは目覚めるか、再び#微睡__まどろ__#みに落ちるか迷うように身をよじる赤ちゃんの姿があった。

 「頼む・・・・・・起きるな」

 「んあ、あ・・・・・・」

 魔王の祈りが届いたのか、赤ちゃんは何事もなかったかのように眠りについた。

 「あっぶねー。お前らなあ、騒ぎすぎだろーが」

 「そうは言いますが魔王様、この子が人間だなんて・・・・・・」

 「じゃあパインも確かめてみろよ」

 パインはしばら逡巡しゅんじゅんする仕草を見せたが、自分で確証を得るべく、魔王の対面になるベッドの横に歩み出ると、「ごめんね」と声を掛け、優しく赤ちゃんの頭を撫でた。

 「わっ・・・・・・柔らかい」

 少しでも力を入れたら壊れてしまうのではないか。

 そんなおっかなびっくりの様子が彼女の年相応な姿に見え、魔王をはじめとする皆の頬に笑顔が宿った。

 「どうだ? ねーだろ、角」

 「ええ・・・・・・。信じられないことですがこの天使、ではなく、この子は人間の子です」

 「この子が人間なんですね。こんなに可愛い子が、どうやったらあんな忌々いまいましい生き物になるんでしょうか」

 いつの間にか、ベッドの正面にハリルが歩み出ていた。

 ハリルは悔恨の念が滲んだ表情で赤ちゃんを見つめた。

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