パインのおっぱ、げふんげふん! その2
「人間は本来、争いを好む種族じゃない。だが、周りの環境や昔からの教えによって徐々に争いに抵抗がなくなっていくんだ。誰が悪いわけじゃない」
「だからって、私は許しませんよ。おじいちゃんの和解に応じずに問答無用で切り捨てた人間を」
ハリルはスカートの裾を握りしめ、憎しみをあらわにした。
「《あの》時は本当に予測不能だったんだ。あっち側から門を開いてこっちにやってくるなんて思わなかった。できるだけ早く対応したつもりだったが、予想よりも早く手を出されちまった。すまなかった」
魔王は頭を下げなかったが、まっすぐに見つめてくる瞳の奥にある謝罪の気持ちがハリルにはよくわかった。
5年前(人間年15年前)、人間が魔法で門を開き魔界にやってきた。理由はおそらく敵情視察。
言語の違いによってまともなコミュニケーションが取れなかった所に、ハリルの祖父が現れ、通訳をかってでた。
ハリルの祖父は、人間の語学に精通し、僅かだが人間との会話を成立させた。
が、いくらこちら側に敵意がないことを示そうとも、人間側はこちらを敵視し、剣を構えたままだった。
ハリルの祖父は仲間達に両手両足を縄で縛らせ、膝を地につけ、近くで会話をするように求めた。
おそらく兵士長であろう人間が剣を
笑顔でそれを迎えたハリルの祖父に向けられたのは、同じ笑顔ではなく、大上段からの斬り伏せだった。
それから魔族の兵士達がついた頃には、人間達は門から帰った後で、ハリルの祖父の亡骸が静かに横たわっていた。
この出来事が決着した後、先代魔王は当時10歳のハリルに直々に謝罪をしていたのだ。
一介の魔王ともあろう者が一般人の前に現れること自体稀なことであるのに、先代魔王は10歳の少女に地に伏して謝罪をしたのだ。それほどまでに己の力の及ばぬことが招いた事だと思ったのだろう。
この事は現魔王にも語られ、先代魔王の心残りの一つだった。
「いえ、そんな、魔王様が謝られる事では・・・・・・」
祖父の死が自分にとって辛い記憶なのは分かるが、それが目の前の雇い主、魔族の王に楯突くほどのものだとは・・・・・・。
今までの自分の言動を振り返り、ハリルは自分が怖くなった。
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