こんにちは赤ちゃん。私が魔王です。 その3

 「おー。なんか初めて見たかもしれねえな。生まれて間もない赤ん坊」

 「そうなんですか?」

 何故かキラキラと輝く瞳でハリルは魔王に問いかけた。

 「ああ。俺は兄弟なんていねぇし、前のメイド達も基本独身だったからな」

 「そうだったんですか。で、どうです?初めて見る赤ちゃん。可愛いですよね~」

 「そうだな。なんかこう守ってやりたくなるっていうか」

 「ですよね! もう本当可愛すぎる!」

 両手を頬に当てて、鼻息を荒くしながら、にへら~と蕩けるハリル。

 何故だろう。俺の知らないところでメイド達がおかしな変化を遂げている。

 魔王は、これからのメイド達の変化に戦々恐々としながら、もう一度赤ちゃんを観察した。

 「なあ、赤ん坊って角無いのか?」

 魔王は赤ちゃんを見たままの格好で、医務室にいる全員に聞いた。

 「いいえ。分かりにくいですが、あるはずですよ」

 魔王が不意に放った疑問にパインはそう答えると、魔王の反対側へと回り込んだ。

 「ごめんなさいね」

 パインは一言呟くように謝罪の言葉を述べ、赤ちゃんを起こさないように細心の注意を払いながら、頭を撫でた。

 「多分この辺りに・・・・・・あれ?」

 数回頭を撫でると、パインは首を捻った。

 パインが首を捻る事など滅多にないため、メイド達と兵士、加えて爺までもが赤ちゃんが寝息を立てるベッドを囲んだ。

 すると、魔王の口から途轍とてつもない言葉が飛び出した。


 「なあ、この赤ん坊見た時から何と無く思ってたんだけどさ・・・・・・こいつ、人間じゃねーの?」

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