こんにちは赤ちゃん。私が魔王です。

「赤ん坊はどこだ?」

 

 「魔王様! パイン殿も、こちらです。」

 医務室に入ると、薬品の匂いが充満した室内には、カーテンで囲われたベッドが右の壁側に3つ備え付けられていた。左側の壁は、多種の薬品がガラス戸に入って並んでいる。

 ガラス戸とベッドの間のスペースには小さなテーブルと椅子が4脚あり、入って一番奥の席に鎧姿の兵士が一人座っていた。

 その顔には疲労の色が浮かんでいたが、魔王達を見るなり胸に手を当て一礼し、右側一番手前のカーテンを静かに開いた。

 中には話を聞きつけてきたのであろうメイド5人がベッドを囲むようにして、殺し切れていない黄色い歓声をあげていた。

 左から、ヴィエル、セリア、ハリル、バンゼイン、コリユス、平均年齢20歳の若々しいメイドたちである。

 「赤ちゃんを見せてください」

 「あっ! 魔王様。それと、め、メイド長っ!」

 パインの声にメイドたちは全員振り向いた。そして魔王を視界に入れた途端に仰々しく頭を下げた。

 しかし、ベッドの正面にいたメイドだけは、パインを見るなり体を強張らせた。

 パインをメイド長と呼んだのは、ハリル=ベルール=ハンゼルセン。

 城内に常駐する5人のメイドの中で最も若い16歳で、まだ幼さの残る彼女は、メイドや兵士を問わず、みんなの妹分として可愛がられている。

 そんなハリルがパインの姿を見るたびにビクつきながら話す様は、可愛らしい反面なんとも可哀想な思いを抱かせる。

 パイン本人も顔に似合わずぬいぐるみや小物などのファンシーなものが好きなので、

 「私の顔はそんなに怖いのでしょうか・・・・・・」

 と愚痴ってきたこともある。

 もっと姉妹のような関係になりたいのだろう。そう思うとパインの方も可哀想なのかもしれない。

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