第15話 貢献度
俺たちは順調するぎるぐらい順調だった。何故なら、たったの一日で依頼を成し遂げてしまった。さらに三倍以上の数を得てくるなどしているので、貢献度は大いに期待がもてそうだ。とはいえ、今回俺は何もしていない……。ただついていった付き添い程度だ。
「シャナさーん! 戻りました!」
いつもの通り元気よく、エミリーはシャナのところへ向かう。親しみを込めて、笑顔と驚きで迎えてくれた。
「え? エミリーさん? もうですか?」
そう思うのも当然だ。一日で、成し遂げていける内容ではないからだ。
「ええ。十体も倒せたので期待しちゃいますね」
「そんなにですか?! それでは、いつもの会議室へ……」
「シャナさんすみません。遺体も回収してきたので、別の場所に……」
こうして俺たちは、依頼品確認のため、ギルド専用の解体場に向かう。そこでは所狭しと働く、ずんぐりむっくりで、小柄な毛むくじゃらな人らが、複数人動き回っている。広さはかなりあり、人が百人以上入れそうな場所だ。倉庫としても機能しているのか天井が高い。
「ゴダードさん、ミノタウルスを預かれる場所ありますか?」
シャナは中でも、意気揚々と作業をしていた人に、声をかけていた。名前と見た目の雰囲気が俺的にはかなりあう感じの人だ。
「ん? 何じゃ? ほれそこあいとるだろ? その程度ならわざわざ聞かんでも………」
「そうですよね〜。おっしゃる通りです。ただ今回はその場所の十個分は必要でして……」
「なんじゃと! 十個だと? 一体何をとっ捕まえてきたんじゃ?」
「ミノタウロスを十体ほどですね」
「か〜。なんてことだ。ちょっと待て、今場所を作る。おーい! お前らミノ十体分場所あけろー! 空けられるならどこでもいいぞー!」
「おーう」
仲間達の返事が地響きのように聞こえる。低い声の連中の集まりだ。
するとゴダードと似たような者たちがわらわらと集まり、せっせっと荷物を移動させていた。物の十分もしないうちに場所の確保ができた。なんて早い連中なんだろう。さすが職人という感じだ。
「準備できたぞ、こっちだ」
「はい。いつもありがとうございます」
「な〜に、仕事じゃよ」
俺たちは案内されるままついていくと、確かにこの状態ならおけそうな場所が確保されていた。
「エミリーさん、こちらにお願いします」
「はーい」
戸惑いなくかつ豪快に、エミリーは次々とミノタウルスを並べていく。あの巨体が十体も仰向けになって、横になる姿は圧巻だ。
「はあ〜。こりゃたまげるな。嬢ちゃん、ほんといい腕持っているんだな。こっちもこの数だけあれば、やりがいがあるな」
シャナはそこで、切り上げようと声をかける。
「ゴダードさん。あとはお任せしますね。チームの人とこれから話がありますので」
「おう! 任せておけ。こんなスゲー物持ち込んだんだ。名前ぐらい教えてくれないか? 覚えておくぞ」
エミリーの方に顔向けて、満面の笑みで覚えておくという。いい仕事をした後の笑顔みたいだと、ボンヤリ俺は思っていた。
「うん。私はエミリー。トワイライトチームよ。そこにいるのがキセラとリリーよ」
「そうか! 覚えておくぞ! また頼むな!」
ゴダードは仲間を集めて、せっせとまた作業を始めた。なんせ十体だ、やりがいはかなりあろうだろう。
俺たちは、シャナに再び案内されて会議室に向かう。
会議室では、依頼品の魔石十個を用意されていた木のオケに乗せる。この量だとさすがにすごい。このオケ自体は、パー研で用意した物だそうだ。まるでこちらが、依頼以上の数を持ってくると予測したようにも見える。
シャナは一個ずつ丁寧に確認すると、貢献度の表を俺たちに手渡した。今回の貢献はこんな感じだ。
【貢献一覧】
案件名:人身牛頭魔石三個回収(カルダ地方)
成果:十個回収 + 十体回収
納期:締め切り九日間前納品(納期十日間)
トワイライトチーム 合計33:累計1,079
エミリー 合計:20(累計42)
樹瀬良 合計:8(累計1,020)
リリー 合計:5(累計17)
個人内訳(五段階評価)
エミリー
合計:20
無血:5:流血なしに貢献
依存:5:作戦の成否は100%依存
対象:5:チョキ勢力
成果:5:依頼品全て収穫
特別褒賞:
十個回収のため、七個分のボーナス
樹瀬良
合計:8
無血:0:流血なしに貢献
依存:0:作戦の成否は100%依存
対象:5:チョキ勢力
成果:3:依頼品全て収穫
特別褒賞:0
特になし
リリー
合計:5
無血:0:流血なしに貢献
依存:0:作戦の成否は100%依存
対象:5:チョキ勢力
成果:0:依頼品全て収穫
特別褒賞:0
「わーすごい! 私、満点取ったのはじめてだよー!」
「エミリーさん。おめでとうございます」
「やったな! おめでとー」
「へへーありがとー」
そして次は期待の女神の雫だ。とは言っても、この貢献点数に応じた割合で公平に決めることにしている。俺の用途は違うけど、誰でも欲しい特別なアイテムだからだ。
割合でいったら、俺はざっくり24%ぐらい。リリーは15%ぐらいで、エミリーは61%だ。
「はい。お待ちかねの女神の雫ね。エミリー頑張ったね」
「うん……。ありがどうぅぅ……」
エミリーは思わず、涙ぐんでしまった。ここまでくるのに色々あったんだろうなとも思う。なんせ、俺が加入するまでひとりだったらいしい。今回のエミリーの能力活用は、本人も思いもよらなかったらしい。もっぱら、テレパシーで伝達役を担っていたとのことだ。
しかもチーム員ではなく、臨時の助っ人としてだ。
その状態だと、どこか疎外感はあるだろうし、達成感も大きく違うだろうなと思った。俺たちのチームは、まだまだ強くなる。力も工夫次第で他にも色々できるだろうし、超能力召喚なら傾向はあるにせよ奇想天外なことも可能な気がする。
そんな、和気藹々としている中で、シャナが不穏なことを発言し始めた。
「実はね。勢力幹部の人らが、トワイライトチームに何か、気になることがあるらしいのよね。断ってもらって構わらないわ。わざわざ会わなくても問題ないし、あなた方はギルド預かりでもあるからね」
要は、勢力側のいわゆる権力者たちが、俺たちのことが気に食わないのかもしれない。
そうならば、ことが大きくなる前に、対処した方が良さそうだ。今のうちから、牽制しておいた方がいいかもしれないと、俺は皆にそのことを伝えた。
エミリーもどうやら、勢力幹部の連中のことをよく思っているわけでない様子だ。
「私もキセラに賛成ね。ここでハッキリいっておく必要があるわ」
こうして俺たちは、後日勢力幹部の館に向かうことになった。果たしてこのことが、吉とでる凶とでるか、今はまだわからない……。
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