7.門倉 舞彩(23)の場合
世界の半分の人が消えてから1年この世界は、変わり果てた。人が消え、物が消え、お金が消え、食物が消え、残り物のような世界。
私は今、お母さんと一緒にいる。もうずいぶん前から寝たきりだけど。蛍はどうしているかもう分からない。スマホの充電はずっと前に切れたままだから。
この世界にはもう何もない。
礼司が居なくなってからも私は同じ家に住み続けていた。だって礼司はきっとあの部屋にいたから。だって蛍との電話のあと、ダイニングテーブルにあった私の作ったご飯が消えて、食器は洗われていたから。だって、だって、だって。
何かあって見えなくなっただけで、きっと存在してるって。きっと一緒にいるって。気配がするからって。でも、だんだん気配は薄くなって、3ヶ月経つ頃には全く感じなくなった。
気配がだんだん薄くなるのと同じようにだんだんお店から品物が無くなっていった。
何をしても新しいものが造り出せないらしい。
どんなに種を蒔き、肥料をやって水をやっても作物は育たない。どんなに発電所を動かしても発電できない。色んな物が減っていった。有るものが無くなれば、もう終わり。
それだけじゃなくて、既に作られていた物や私物、銀行に預けているお金、ありとあらゆる物が減っていった。確か8ヶ月経った頃、私の部屋の物は何も無くなった。その3日後二人で使っていたものも全部消えた。なあんにも残らなかった。
消えなかった人たちもどんどん減っていった。どんどん、どんどん。
どうして私はこんな世界にいるのだろう。何もなければ、卒業して社会人になって、もしかしたら、もしかしたら、礼司と結婚してたりして、もしかしたら…
どうして、私はこんな世界で生きてるんだろう。礼司はいない。お父さんも、弟の颯も。お母さんもずっと目を覚まさない。
こんな世界で。私は独りぼっちだ。
助けてくれる人はいない。
みんなみんな助けが必要な人だ。
こんな現実早く終わらせてしまいたい。
どうして、私はまだ動くのだろう。
早く早く止まって。
早く。早く。早く。
…
…
嫌だ…
…まだ……
…
…会いたい………
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