第116話 拗ねた黒豹

 今日は久しぶりにディルクと騎士団ランチデートです。私はディルクに正座して土下座をしております。




「なんでいきなり土下座?」




 いきなり土下座した私に、困惑するディルク。




「ごめんなさい!ちょっともふりました!」




「ああ…ギュッとしたぐらい?ずっと我慢してたし、精霊さん達も甘えたかったんじゃない?」




 匂いを確認するディルク。怒ってないようで安心しました。


 さて、ランチです。




「そういえば、ディルクに紹介してなかったよね。魔獣のもふ丸だよ。もふ丸、この人はディルク。私のつがいで恋人だから」




「アルジノ、ツガイ。ヨロシク」




 もふ丸はもふっとおじぎした。




「可愛いぃぃ!もふ丸可愛い!最近はもふ丸が私のもふ欲を満たしてくれてるから、きっとディルクにもふ欲が暴発することもないよ」




 それにしても、さすがは夢のもふもふ!素晴らしい可愛いさです。すりすりすると、ふっかふか!




「アルジ…」




「ぎゅー」




 何故か困った様子のもふ丸。そういや、さっきからビターン、ビターンって音がしてる。




 ディルク、怖い。


 無表情で尻尾が地面をビターン、ビターンと叩いてます。




「…ディルク?」




 ディルクは返事をせず、ムスッとしたまま私のお膝に来ました。獣化してスリスリされる。しかし尻尾は不機嫌ぽい動きだ。痛くならないのか心配だ。




「ディールク?」




 返事がない。私にスリスリするが、尻尾は相変わらず不機嫌そうだ。さて、どうしたものかな。




「アルジ、ワタシ、サンポ、イク」




 もふ丸が空気読んだ!なんて出来たもふもふなんだ!ポヨン、ポヨンと離れていく。




 えーと…さっきまでディルクは普通だった。不機嫌の直前にしたのは…もふ丸をもふってました。








 つ、ま、り。








 嫉妬ですか?嫉妬ですよね!これは私に可愛がって、かまってというアピールなんですね!!間違いない!拗ねたふりして私の気をひくなんて…なんてあざと可愛いんだ!もふ丸にもヤキモチやくなんて可愛い過ぎる!!私は素早く結界を展開。






「ディルク?」




 ディルクは返事をせず、私にスリスリする。顔をみせないようにしている。やばい。なんかもうキュンキュンしてきた。




「大好きなディルクに、かまってほしいなぁ。ね、もふもふしていい?」




「…好きなだけ、して」




 ディルクはやっぱり顔を見せてくれないけど、尻尾は私にじゃれついた。ディルクがツンデレに!?私をどれだけ萌えさせる気だ!?弾けて飛ぶぞ!?




「もふもふ…」




「ん…気持ちいい」




 うっとりするディルク。なんというか、色気があります。最近ディルクをモフってなかったなぁ。普通にイチャイチャしてたしね。普通のイチャイチャも大好物だけど、こうしてモフるのも幸せ…




「幸せ…」




 微かに聞こえた声に、私の中のナニカが切れた。ディルクを力一杯抱きしめる。




「わぁ!?」




「可愛い!ディルク世界一可愛い!んもう、ちゅーしちゃう!大好き!ディルク、ディルク、ディルク!好き好き好き好き愛してる!!」




「…俺も、すき」




 首にスリスリしながら恥じらいつつ私に甘える素敵なマイダーリン。さりげなく喉がゴロゴロ言ってます。ご機嫌は直ったらしく、やっと笑顔を見せてくれました。尻尾も態度も明らかに私に甘えています。








 萌 え 死 ぬ








 なんだもう、可愛い過ぎて死ぬ!萌えすぎて死ぬ!いや生きる!!可愛いマイダーリンを残して逝けません!




「あの、ロザリンド…ごめん。俺、もふ丸にも嫉妬した」




「知ってる。そんなディルクが大好きです」




「…ロザリンドは変だよね」




「そんな私が大好きなくせに」




 顎を撫で、ちゅっとかわいらしいキスをした。




「そうだよ。だから離れて欲しくない。嫌なことは嫌っていって?本当はもふもふだって我慢したくないでしょう?」




「ディルクが我慢した分ご褒美くれるんでしょう?」




「うん…ロザリンドはそれでいいの?」




 ディルクも迷っているようだ。私は妥協案を提示した。




「できたら、魔獣とか聖獣様はどうがんばっても恋愛対象にならないから、たまにもふりたいかなぁ。あとハクとか子供達。もふらないけど、多少の接触は許して欲しいかな」




「ジェンド以外なら」




「もちろんジェンドは対象外です。変に期待されても困ります。私はディルクのものです」




 ディルクは私の肩にもたれかかった。




「自信がなくてごめん。もふもふは多分ロザリンドが俺を好きな理由だから、ちょっと焦った。もふ丸がいたら、俺にはもうしてくれないのかなって」




 なるほど。誤解されましたか。そんなわけないのにね。




「もしディルクからもふもふが無くなっても、ディルクが好きだよ?ハゲても愛せる自信があるよ?」




「え?」




「私の愛を甘くみてもらっては困ります。私はディルクが人間でも幼児でもおじ様でも美女でも愛せる自信がありますよ。むしろ老後も面倒みる気ですから、素敵なお爺さんになってくださいね」




「…うん」




「さて、そろそろ本気を出します。いいですよね?」




「………うん?」




 ディルクが若干怯えているような…気のせいですよね!




「私的に、もふ丸とディルクは別腹ですから。ディルクは私にもふもふされたいんですよね?」




「べ、別腹って何!?そりゃあ、されたい、けど…」




 恥じらいつつ返事をするディルク。乙女か!なんか女子力で負けた気がします。




「では、リクエストにお応えします」




 私のゴールデンフィンガーが絶好調でした。


 いやあ、もふ丸とディルクはやっぱり別腹ですよね。もふ丸にはアリサ達みたいに可愛いとしか感じませんが、ディルクにはやましい気持ちも満載です。私のゴールデンフィンガーでにゃあにゃあ言うディルク…いくらもふっても足りません。




「はぁ…可愛い。飽きるとかありえないね!」




 ふはは、ここか?ここがいいのか?マッサージだけでなく、時折甘噛みして刺激する。




「ふみゅう…ゴロゴロ…にゃあ…あん、そこらめ…」




 もはやディルク、ろれつが回ってません。フニャフニャになって私に身を委ねています。今日は容赦無く尻尾も触りまくりです。もはや抵抗ができないレベルのディルク。たぎりますね!
















 やべ、やりすぎた!!










 私が正気にかえると、ぐったりとしたディルクが居ました。




「あわわわわ、ディルク!ディルク!?」




「ふにゃ…ん」




 またしても人間の言葉をなくしている!




「ディルク!大丈夫…ではないな!えーと、正気に戻すには…えい」




 ディルクが常に死守する尻尾のつけ根をギュッと触った。




「やあっ!?あっ!ダメ!」




 即座に飛び起き、涙目になるディルク。びっくりしすぎて獣化も解けたようです。




「…ごめん、ディルク。やり過ぎた」




「うう…いや、もう仕方ないよ。俺もされたかったし…き、気持ちよかったし…次は休みの日にしてね」




「それ、誘ってる?さすがの私もムラムラするんですが。ディルクは私より色気がありますよね」




「む!?お、女の子がそんな言葉を言ったらいけません!さ、誘ってなんかないし色気も無いから!」




 ディルクは顔を真っ赤にして私を叱る。




「ディルク、想像してみてください」




「え?」




 ディルクは首を傾げた。私はかまわず続ける。




「ディルクに身体を弄ばれ、息も絶え絶えな私に気持ちよかった、次は休みの日にしてねと頬を赤らめて言われたら…ムラムラしません?」




「……する」




「男女の差はありますが、私も同じ気持ちかと。しかも相手は最愛のつがい。誘われてると感じても仕方ないですよね」




 ディルクは首まで赤くして、自分がどれだけ大胆な発言をしたのか理解したようです。




「う…で、でも嘘はついてない。好きだから、触られたいし、触りたい」




「うん。私もそう思うよ」




 私はディルクの胸にスリスリした。ディルクが優しく撫でてくれた。










 幸い回復魔法が効いたので、ディルクは無事午後のお仕事に行きました。もふ丸はディルクと入れかわりで戻りました。




「アルジ、ナカナオリ、デキタ?」




「うん、ありがとうもふ丸」




 なんてできた毛玉なんだ!私は可愛いうえに気が利くもふ丸にお礼を言い、もふ丸を頭に乗っけて私も仕事に行きました。ドーベルさんが微妙そうな表情をしています。




「…ディルクさんの匂いがものすごいするんですが…いえ、なんでもありません」




 ためらいながら話し、ドーベルさんが赤くなりました。え、そんなに移り香すごいの?いや、確かに今日はベタベタしまくったからね!


 次からは仕事前のもふもふはやめようと心に誓いました。獣人の嗅覚ってすごいね!!

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