第114話 呪いとドラゴン

 とりあえず、我が家に戻った私達。おや?庭にたくさん魔獣がいるんですが。




「コウ、なんで居るのか聞いてもらえる?」




「うん」








 待つことしばし。






「お姉ちゃん、ごめんね。ぼくじゃ説得できなかった」




「…説得?」




「お姉ちゃんに恩返しする為に、お姉ちゃんにつかえたいって」




「…どうしてそうなった」




「ぼくもお姉ちゃんはそーゆーのいらないって言うよっていったんだけど…魔獣は種類にもよるけど、お姉ちゃんが買った魔獣とオークションの魔獣は知能が高くて義理堅いタイプがほとんどなんだ」




「ええと…今困りごとはないし、君達は自由だよ。人間が酷いことしてごめんね。君達が私に恩を感じたなら、他の困った人間を助けてあげて。それが恩返しじゃ…だめ?」




「グルゥ…」




「お姉ちゃん…逆効果だよ。なんと謙虚な、我が主に相応しいとか言われてるよ」




「なんでそうなった!?」




「もう面倒だから、勝ち抜き戦やって勝った1匹だけ飼ってやるとかにしたら?」




 本気で面倒そうなルラン。おい、疲れてるのかもしれないけど、投げやり過ぎる!




「おバカ!それで怪我したら可哀相でしょうが!許可しない!」




「じゃあどうするの?」




「い、1番素晴らしいモフ心地の魔獣だけにする」




「…お姉ちゃんらしいね」




 コウの呆れた視線が痛い!他に思いつかなかったんだよ!とりあえず、魔獣をひたすらもふる。なかなか皆様素敵なモフ心地ですな。いや、今回はディルクも咎めないよね?獣人じゃないから浮気じゃない。相手は動物さんだもん。












 私は見つけだした。これぞ至高のモフ心地!




「君に決めた!」




 魔獣の種族はケサランパサラン。手の平サイズのふわもふ毛玉である。しかもつぶらな瞳が超可愛い!




「ガルゥ!」




「…さすがは我が主様!我らの中で1番の実力者を選ぶとは…だって」




「え?」




 いや、普通に純粋にモフ心地で選びまし…いや待て。


 劣悪な環境下でも変わらぬ毛並み→とても丈夫で強い?




「そのケサランパサラン殿は我らが束になっても敵わぬ。さすがです。ケサランパサラン殿を選ばれるなら、我らは身をひきましょう」




 コウが通訳するが…魔獣さん達は切なげな顔でこちらをチラチラしている。あ、あうう…罪悪感が…仲間になりたそうにしてます…




「とりあえず、お前が仮所有してやれば?んで、他に行きたいとこがあれば首輪を外してやればいいだろう。そのままだとまた捕まる可能性もあるが、お前の所有魔獣にしておけば手を出すアホはいないだろ」




「じ、じゃあそれで…」




 魔獣さん達は嬉しそうです。ラビーシャちゃんに特殊な魔獣用首輪を用意していただき、私が魔力をこめて魔獣さん達につけました。持ち主登録され、盗難不可・城門の結界スルー可のスグレモノです。城門では魔物・魔獣が弾かれますが、慣れた魔獣の場合魔獣のみで探索に行くこともあるので開発された魔具だったりします。




「お嬢様はお人よしですよねぇ。まぁそこに助けられた私が言うのもなんですけどね。そこがお嬢様の良いところだし、仕方ないかなぁ」




 上げてるか落としてるのか微妙な独り言を呟くラビーシャちゃん。




「苦労かけます」




「…お嬢様の望みなら、私にとって苦労ではないです。お人よし過ぎるから心配なだけですよ」




「なら、ありがとう」




 お互い笑いあった。




 ケサランパサランには首輪が入らないので魔具のリボンになりました。真っ白いまんじゅうみたいな毛玉に、赤いリボン…これは…




「もふ丸…!」




 かつてリンが溺愛し、そだてたもふ丸にそっくりです!




「アルジ、ソレ、ワタシノナマエ?」




「しゃべった!?」




「そのケサランパサラン、つよいからかな。魔獣もたまにしゃべるやついるよ」




「そうなんだ…名前、もふ丸でいい?」




「ウン。アルジ、ヨロシクネ」




 声も可愛い!リンが現実に居れば飼いたいと思っていた夢のもふもふが今、我が手に!




「よろしくね、もふ丸」




 私の頬にスリスリするもふ丸…可愛い!幸せです!こんな所に合法もふもふがあったのですね!これで私のモフ欲求不満も解消です!ディルクは別腹ですが、多分もう暴発はしないはず!












 さて、他の魔獣さん達は森にお帰りいただいて私達は応接室に居ます。




「ルランに呪いをかけたのは、どんな奴だった?」




「それは…」




 ルランが室内に何かを見つけだし、威嚇した。私はルランの前に立ち、彼を落ち着かせる。




「よく見て、違う獣人だよ」




「ああ…しかし、よく似ている。あの男より筋肉はない。身体も一回り小さく、若かった。だが、顔も毛並みもそっくりだ」




「…そう」




 犯人は間違いないかな…脳筋英雄が余計な謝罪をする前に話を変えようとしたら、ハクが意外な事を言い出した。




「ルラン君から前のご主人様の匂いがするぅ」




「は?」




「ボクにキノコの呪いをかけて捨てたご主人様の匂いだよぅ。ルラン君に呪いをかけたのも、元ご主人様なんだねぇ」




「…ハクは自分に呪いをかけた相手を見てないんじゃなかったの?」




 確か、昼寝していたら呪いをかけられたと言っていた。




「奴隷紋の制約で話せなかったんだぁ。ごめんなさいぃ。今の生活に慣れるので精一杯でぇ…毎日が本当に幸せ過ぎてぇ、忘れちゃってたのぉ。本当にごめんねぇ、ロザリンドちゃん」




「ううん、辛い思いたくさんしたもんね。ハクが幸せならそれが1番だよ。元ご主人様はどんな人?嫌じゃなければ教えて?」




「うん。酷いことされたボクが言うのもなんだけどぉ、悪い人ではないと思うよぉ。銀狼族でぇ…名前はしらないぃ。元ご主人とはすごく短い間を過ごしたけどぉ、奴隷のボクにも普段は優しい人だったよぉ。呪いをかける時は多分泣いてたよぉ。役に立てなくてごめんねぇ」




「…確かに、俺に呪いをかける時も、すまないと泣きそうな表情だったな」




「…銀狼族で呪いに特化した者は一人だけですよね」




「ああ…」




 ジェラルディンさん超しょんぼりしてる。珍しいな。




「ルラン、呪いをかけた相手はできれば生け捕りにして欲しい」




「…理由は?」




「多分誰かの命令でやらされている可能性が高い」




「約束しよう」




 ルランは納得してくれた。ジェラルディンさんもホッとした様子。




「ロザリンドはお人よしだな。害する者を許すとは」




「いえ?ボッコボコにはしますよ?私の可愛い精霊さんと友人に手をだしやがった輩を無罪放免なんてありえません。死ぬ恐怖より死ねない地獄を見せてやります!特に裏で糸引いてる奴は念入りに!!」














 場がシンとしました。












「ふ、あははははは!」




 ルランが爆笑しました。どうした?あれ?皆笑ってます?




「いや、わかった。捕まえたら必ず連れて来よう。いや、お前は本当におかしい人間だ」




「お姉ちゃんといると、たいくつしないよね」




 コウもニコニコして私に笑いかけます。うん。どういう意味だよ、ドラゴンコンビよ。


 呪いが使える銀狼族捜索にはルランにも協力してもらえることになりました。しかしなかなか捕まらないあたり、転移の魔石とか何かを使っているのかな。最近王都付近での事件が多いのも気になる。




 そういや書類のゴタゴタで後回しにしてたけど、結界や巡回ルートなんかも情報漏洩していたから、全部組み直しだなぁ…明日からの騎士団でのお仕事が格段に忙しくなる気配を感じて、憂鬱になりました。




「アルジ、カナシイ?」




 私の頭で大人しくしていたもふ丸が心配してくれました。




「大丈夫だよ、もふ丸!私、頑張る!!」




「アルジ、ガンバレ」




 もふ丸超かわいい!新たなる癒しにめろめろな私なのでした。ちなみに、ヤキモチを妬いた精霊さんと子供達にギューされて、私は幸せでした。もふってないから許して、ディルク!




 訂正します。うちの子は皆かわいい!!

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