ロザリンド7歳・日常と騒動編
第99話 久しぶりの学校と代理講師
アルディン殿下との約束通り、プリン持参で登校しました。今日は魔法基礎の授業があるんで午前中は授業、昼は兄とランチ。午後は騎士団でお仕事です。騎士団での仕事予定なんで、私はいつも通りの騎士服です。
ちなみに兄は私とのランチのためにわざわざ受けなくてもいい授業を受けると話してました。
「おはようございます」
久しぶりに自分の教室に入ると…あや?
「ロザリンド様、おはようございます」
「お久しぶりですね、ロザリンド様。僕を覚えてらっしゃいますか?」
クラスメートが増えていた。何故??わけがわからずオロオロする私に、人の囲いから見慣れた美少女が出てきた。
「ロザリンド嬢、お話がありますの。来ていただける?」
「はい、喜んで!」
ミルフィリア嬢に誘われるなんて、今日は素晴らしい日だとついていく。しかしミルフィリア嬢、なんか疲れてなかったかな?気のせい?
校舎を出て、裏庭に来るとミルフィリア嬢は大きく溜め息をついた。
「はー、助かりましたわ…煩わしいのなんのって」
「クラスメート、やたら貴族が増えてましたよね?多分」
ほとんど学校に来ないから自信がないけど、見たことあるがクラスメートではなかった貴族の令嬢・子息が居たし、机も多分増えてた。
「…非常に不本意ですが、多分私達と殿下達のせいですわ」
「あー」
公爵令嬢と子息に殿下2人。確かにお近づきになりたいよね。わざわざ転校してきたのか。
私もミルフィリア嬢も基本居ないから、お近づきになれるのはアルディン殿下ぐらいかな。兄の話だとアルフィージ殿下も基本城で仕事らしいからめったに来ないらしいし。
「…ギリギリまでここに居ましょう。貴女も面倒は嫌いでしょう」
「賛成。ミルフィリア嬢の魔法院でのお話聞きたいです」
「なんで私が…仕方ありませんわね、誘ったのは私ですもの」
ミルフィリア嬢のお話はなかなか面白く、あっという間に予鈴が鳴った。
「次は貴女が騎士団の話をなさい」
「はーい」
ミルフィリア嬢に癒されつつ、授業に向かいました。ツンデレ美少女って素晴らしい。さりげなく手をつないだら、びっくりした顔をしたものの、握り返してきました。
大事なことなんでもう1回言います。ツンデレ美少女って素晴らしい!!
さて、魔法基礎の授業です。今回が初回となったのは、講師が賢者のじい様だからだそうです。嫌な予感しかしません。魔法学講師の先生もワクワクしたご様子だが、大丈夫かな…
「ロザリンドさん、これ…」
私のクラス担任教師のミレイユ先生が、私にそっと手紙を渡した。見覚えあるクセのある筆跡で、私宛てとなっている。封筒の中身を見ると、ひとことだけ書いてあった。
『任せた』
私は手紙を引き裂きたい衝動に駆られつつ、なんとか抑えて多分引き攣った笑みを浮かべつつ、オロオロするミレイユ先生に話しかけた。
「この手紙は誰から?」
「賢者様の使いの方が…」
私は頭を抱えた。あの野郎、初講義でボイコットとか、絶対奥方様にチクるからな!と内心怒りを燃やした。無情にも始業の鐘が鳴り響き、私は諦めて教壇に立った。
「賢者のクソじ…賢者様は急用で来られないそうですので、急遽私が代理を勤めさせていただきます。私は一応賢者様の弟子ですので…問題はないかと思います」
ざわつく周囲に殺気をとばして黙らせた。私だってやりたくないからね?皆おとなしく、お聞き。
「今日は魔法の基礎中の基礎、魔力コントロールについてです。皆さんは魔力とはどのようなものだと思いますか?」
「…見えないもの?」
「獣人には、無いよな?」
ちらほらと意見があがる。
「いいえ。目に見える場合もありますし、魔力は全ての生き物に存在します。量の差はありますが、全くないのはありえません」
私は手にふわりとお手玉ぐらいの魔力の塊を出した。
「獣人は獣化に魔力を使っているから魔力が弱いと思われがちですが、完全獣化が出来る獣人はかなりの高魔力保持者です」
ポッチが挙手した。
「お姉ちゃん、じゃあ僕はずっと獣化してるの?人間みたいな姿にもなれるの?」
「どうかな?どれどれ…」
活性化した魔力が体内を常に巡っている。魔力を変化に使わないよう方向を変えてやる。
「はい、鏡」
「わあ、僕人間だ!」
ポッチは獣の顔から可愛い犬耳少年になっていた。周囲がざわついた。
「獣人は強化特化の魔力を持っています。魔力コントロールが出来れば、身体の部分強化も可能です。やって損はありませんよ」
やっても無駄と諦めていた獣人達も出来ると分かればやる気になった模様。
「では、心臓から身体の中に血が巡るのをイメージして下さい。その巡るものを両手に…手に熱を、血を集めるイメージです。手が温かくなってきた人は、手を挙げて下さい。温かくなってきた人は、その温かさを丸くするイメージ。温かくない人は私がサポートします」
8割が挙手。魔力的にも上手くコントロールしている。貴族はすでに魔法を使える人間もいるから、貴族はほぼ全員できている。獣人はコントロールが難しいのかな。今まで使えないと思ってた、思い込みもあるんだろうな…って、ラビーシャちゃんは完璧ですね。魔力の塊でお手玉…いやお手魔力?してる。マーサが教えたらしいです。
できなかった人には、私の魔力を手に集め、感覚を教える。それでもできなければ、魔力を少しわけて刺激してやる。それで全員が魔力コントロールを習得して授業は終了した。
「魔力コントロールができれば身体部分強化もできますが、慣れないうちは加減を誤る時があります。具体的には、走っている最中に脚力を強化して飛び上がりすぎる。強化した手が当たって壁が割れるまたは武器が壊れる」
アルディン殿下が挙手した。
「…やけに具体的だが、実体験か?」
「…若気のいたりです」
顔を逸らす私。実体験です。何回も失敗しました。
「今も若いだろ」
「言葉のあやです。とにかく!魔力による身体強化は慣れないと危険ですから、必ず先生が側にいる時に練習してください。授業を終わります」
私は礼をして自分の席に戻った。私の席に誰か来た。魔法学の講師だ。名前は知らないけど、ひょろくて身体測定の時に魔法院に行くべきとか、講義してとかお断りに苦労したので顔は覚えている。
「すぅぅんばらしいぃぃ!!」
「へ」
ポカンとする私と周囲。何が?先生、落ち着け。
「全ての生徒に1回の授業で魔力コントロールを習得させてしまうだなんて、すごすぎる!!ぜひ、ぜひ他のクラスにも講義を「お断りします」
私はニッコリと微笑んだ。
「今日は賢者様が急用のため、どうしてもとおっしゃるからいたしました。しかし、私のような若輩者よりも賢者様は素晴らしい講義をなさるはずです。首に縄つけて引きずってでも次は来させますから、賢者に講義をさせましょう」
「縄?」
後半本音が出た。ヤバいヤバい。
「いいえ、次は必ずおいでになられますと申しました」
「なるほど」
かなり無理矢理だったが、先生はなんとか納得してくれた。とりあえず、賢者の奥方様にお手紙を魔法で飛ばしました。
『こんにちは、ロザリンドです。
お忙しい中、大変恐縮なのですが、賢者様が私の学校で講師をする予定だったのですが、すっぽかしたあげく私に丸投げしやがりました。
お仕置きしてください。
とりあえずハードル上げたので、次からまともに授業しろとお伝えください』
そして、後に私は獣人も魔力があるなんて知らなかったので論文を書けと魔法学の先生に執拗に迫られ、必死で拒否して賢者のじい様に丸投げしたのでした。
因果応報とはまさにこのことですね。
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