第100話 先生と生徒とボス

 別に受けなくてもいいのですが、たまにはクラスメート(主にミルフィリア嬢)と交流をはかるため、授業に参加することに。私はミルフィリア嬢の隣の席です。やったね!




 始業の鐘が鳴り、私のクラス担任教師のミレイユ先生がやって来た。相変わらずオドオドしているが大丈夫だろうか。










 案の定、クラスは混沌と化した。学級崩壊ですね。分かります。しかも獣人は子供といえど人間が捕まえるのは大変だ。しかもミレイユ先生は女性だし、余計ナメられているのだろう。




「いいかげんになさい!ここは授業を受ける場所ですわ!授業を受けないなら出て行きなさい!!」




 ミルフィリア嬢が耐えかねて叫んだ。正論だが虎獣人の身体が一回りでかいのと、狼獣人が反応した。




「弱っちい人間が指図してんじゃねぇよ!」




 狼獣人と虎獣人がミルフィリア嬢に襲いかかる。私は3人の間に身体を滑り込ませ、獣化した狼の鼻をしたたかに手刀で叩いて怯ませ、頭を掴んで床に叩きつけた。


 更に踏み込み、虎獣人を平手打ちした。普通の平手打ちではなく、魔力強化した平手打ちである。回転しながら虎獣人は床に倒れた。




「ミルフィリア嬢、お怪我は?」




「あ、ありませんわ」




「…よかった」




 私はミルフィリア嬢に微笑むと、床に転がる愚か者共は無視してミレイユ先生に近寄った。




「ミレイユ先生」




「は、はい」




「私、先生は凄いと思います。家業でもない限り、女性がこういった職に就くのは今の制度と男尊女卑社会では非常に難しいことです。先生が授業のために沢山準備してらっしゃるのも分かりますわ」




「ロザリンドさん…」




「泣いてはいけませんわ。獣人は上下関係をハッキリつけてしまいますの。女性であっても、貴女が先生としてここに立つならば強くあらねばなりませんわ。私が魔法をかけてさしあげます」




 私は自分の化粧道具でミレイユ先生にメイクを施した。ナチュラルで、普段よりつり目に…少し気が強い印象に仕上げた。手鏡をミレイユ先生に渡す。




「どうぞ」




「これが…私?」




「化粧は女の戦闘装束ですわ。自分を変える魔法をかけるにはもってこいだと思いませんか?いかが?授業はできまして?」




「…はい!皆、席について!」




 ミレイユ先生は見違えるほどハキハキとしゃべりだした。おまじない効き過ぎた?ま、まぁいっか。




 そういや、私がシバき倒した獣人は…あや?様子が…狼獣人と虎獣人が…キラキラしてる?




「「すいませんでした、姐御!!真面目に授業受けます!!」」




 言うが早いか、2人は倒した机を素早く片付け、床に垂れた自分の鼻血を拭き、授業を受ける姿勢になったばかりか、いまだ状況を把握しきれない一緒にふざけていた他の獣人達を叱り飛ばした。




「姐御が授業をお望みだ!」




「皆、先生の言うこと聞け!」




 いや、待て。待ってくれ。姐御って誰だ。つん、と袖を誰かが引いた。ラビーシャちゃんだ。




「あの2人はこの学年で獣人のリーダー格だったんです。すっかり手下になっちゃいましたね。さすがは私のご主人様。見事な手腕です」




「う、嘘ぉぉぉ!?」




「あの、私のせいですみません…」




「いや、ミルフィリア嬢は悪くないけど、姐御はいやぁぁぁ!!」




「ロザリンドさん、授業中は静かに」




「あ、すみません」




 こうして、ミレイユ先生はちゃんと授業が出来るようになり、オドオドした態度も無くなった。ラビーシャちゃんいわく、さっき私が注意されて謝罪したのも私より先生が上位と認識され、よかったのだろうとのことでした。




 私は今回の一件で貴族には怒らせると超怖い令嬢と認識され、獣人には完全にボスと認識されてしまいました。




 ロザリンド7歳。友人を助けたら、同学年の獣人達を配下にしてしまいました。






 どうしてこうなった!?

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