第93話 ドーベルさんの居ない騎士団

 ドーベルさんが騎士団を辞めました。




 そこからでした。全ての歯車が狂ったのは――――






 こんにちは。ロザリンドです。とりあえず言わせてください。








「どうしてこうなった!?」








 私の作戦はこうでした。夢で未来を見せたらどうだろうか。ドーベルさんが居なくなり、キチンとした書類がなくなればどうなるか。実際体感させれば、理解するのではないか。ロザリア協力のもと、天啓・未来予測でシミュレートしたまでは多分よかった。


 急ごしらえだったんで、騎士団が崩壊していく後は特に作らずオートにしたんです。それが多分いけなかった。


 現在は庶務課メンバーで共有中の夢を見ていたのですが…




「あああ、嫁に捨てられ、娘がぐれた!」




 脳みそ筋肉軍団は家庭も蔑ろだったらしく、勝手に不幸になっています。騎士団崩壊だけでなく、家庭まで崩壊していく!!ああ、借金までして…早まるな!自殺はダメ!!




「ロザリンド!早くやめてあげて!」




「うん!最後の仕上げだけするね!」




 私の意思に空に浮かび上がるドーベルさん(お釈迦様風)




「ちょっとおぉ!?」




 流石に叫ぶドーベルさん。はっはっは。諦めてください。




 空に浮かぶドーベルさん(お釈迦様風)は言いました。




『皆さんの不幸はきちんと書類仕事をせず、家庭をかえりみなかったからです。これは、今後起こりえる未来です。これからはきちんと書類を書いて、提出してください』






「…せめて使うなら使うと言ってくださいよ」




「言ったら断ったでしょう」




「…断りましたね」




 おや?地響きが…近づいてくる!?




「うおおおお!!」




 扉を破壊しかねない勢いの脳みそ筋肉軍団が部屋に押し寄せ、ドーベルさんを取り囲みました。とっさに武器を構えようとしたら、ディルクが首を振った。




「殺気はないし、敵意もない。様子を見よう」




 私が頷いた、その直後に事件は起きた。


















 脳みそ筋肉軍団は、一斉に土下座した。練習したのかと思えるほどに揃ったうえ、綺麗な土下座だった。




「すまなかった!」




「辞めないでくれ!」




「俺達が悪かった!」




「妻に捨てられたくない…」




 夢が予想外に効いた模様です。ドーベルさんは最初囲まれて怯えた様子でしたが、すぐにいつもの調子で話しかけた。




「あの、辞めません。僕、騎士団好きですから。これからきちんと書類書いてくれれば、それでいいです」




「おお、そうか!」




「皆、ドーベルを胴上げだ!」




「え、ちょっと!?」




 脳みそ筋肉軍団はドーベルさんをわっしょいして行ってしまった。あまりの光景に硬直したが、ドーベルさん居ないと仕事にならないよ!




「ドーベルさぁぁぁん!!」




 脳みそ筋肉軍団には予想外に素早く、ドーベルさんを巻き込むわけにもいかないので捕獲できませんでした。


 結局本人が自力で帰還しました。




「…酷いめにあいました。高いわ怖いわ荒っぽいわ…」




 尻尾が股下にきてます。本当に怖かったんですね。私もエルフの村でやられましたが、怖かったです。




 それから騎士団では書類の書き方講座がひらかれ、書類はかなり改善。ちゃんとした事務職も入り、私以外は助っ人も不要になりました。


 余談ですが、あの夢のおかげで家族関係が改善したご家庭もあったとのこと。よかった、よかった。

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