第90話 騎士団庶務課と助っ人

 すっかり慣れた騎士服に身を包み、騎士団に転移しました。今日は助っ人も来るはずなんで、スイとハルのみお手伝いです。




 庶務課へ行くと、屍のような4人を発見。マッチョサボテンさん達は仕事を完遂し、彼らに最後まで書類をさせた模様。




「サボテンさん達、お疲れ様」




 サボテンさん達は一斉に敬礼をする。…マッチョポーズをかましたサボテンさんも居たが、スルーした。




「おはようございま…うわ!?サボテンでかくなってない?」




 マイダーリン・ディルクが来ました。言いたくない私の代わりにスイ(毒舌)が説明しました。




「ロザリンドが魔力をあげたら進化した」




「…ああ」




 残念なモノを見る目なディルク。




「わ、わざとじゃない!そもそもスイがご褒美にあげたらって言ったんだもん!」




「普通、魔力あげてもああならないよ。加減とかほどほどという言葉がロザリンドには無いの?」




「あるわ!」




「あー、まぁロザリンドが全力で魔力分けたら多分サボテンが壊死するから、多分加減はしたんだよな」




「え」




 フォローのつもりなんだよね?ハルさん。何それ超怖い。確かに全力であげたりはしなかったよ。やらなくてよかった…




「サボテンさん達が無事でよかった…」




「…加減は多少してたんだよな?」




 私のリアクションに自信が持てなくなったのか、ハルが確認してきた。




「した。加減してよかった。スイの説明が足りなかったんだと思う」




「ロザリンドの魔力が規格外過ぎるんだと思う」




「……」




「……」




 にっこりと笑いあう私達。ディルクが間に入りました。




「…とりあえず、仕事しようか。すごい書類の量だね」




「これでも昨日より3割は減りましたけどね」




「え」




 固まるディルクの背後から、聖獣様と闇様が来ました。




「手伝いに来たぞ」




「わ、我は多忙だが、ロザリンドがどうしてもと言うなら手伝ってやらんこともないぞ!」




「聖獣様、ありがとうございます。闇様、超有能かつ賢い闇様にぜひとも手伝っていただきたいです。よろしくお願いします」




 私は深々と頭を下げた。気をよくした闇様はさっさとお仕事にとりかかる。聖獣様もプルプルしつつ昨日と同じ席で仕事をし始めた。




「…ロザリンドさん」




「はい」




「どこの世界に精霊に書類仕事手伝わせる人間がいるの!?」




「ここに居ます!3歳からスイとハルは手伝ってましたよ!」




「そういえばそうだった!」




 ディルクが納得したところで、ロスワイデ候爵子息が来ました。あれ?ドア閉めちゃった。




「ロスワイデ候爵子息?」




「ロザリンド嬢。何故室内にあんなにマッチョネスト=サボテンが居る」




 あ、思い出した。砂漠中盤のサボテンモンスターだ。マッチョネスト=サボテン…まんまですな。ちなみに全部で4体居ます。囲まれると圧迫感がハンパないです。




「…昨日進化しました」




「………そうか」




 ロスワイデ候爵子息は何かを諦めた表情で庶務課に入室し、精霊さん達…主に聖獣様の扱いについてひとしきりツッコミを入れました。


 今度はアデイルさんが来ました。




「おはよー」




 ドアを閉めました。見た目と裏腹に常識人枠なアデイルさんは大体ロスワイデ候爵子息と同じリアクションでした。




 ちなみにドーベルさんはこの騒動の中、全く動じずに黙々と仕事をこなしていました。












 とりあえず、ドーベルさん指示の下、全員仕事を始めました。首を傾げるアデイルさん。




「でも、なんでアタシなのかしら?他2人は高位貴族なのに、アタシは平民よ?」




「すいません、私が昨日ルドルフさんにディルクとロスワイデ候爵子息とアデイルさんぐらい有能な人材を今日中によこせと言ったので…」




「…確実にそれが原因ね」




「団長はその辺りがいい加減だからな…しかし私は何故有能だと?書類処理が出来るかなど知らないだろう」




「真面目、勤勉、実直と三拍子揃ってますし、提出書類は全て不備なし。素晴らしい能力だと思います」




 ロスワイデ候爵子息は微妙に嬉しそうだ。納得した様子。




「…なるほど。ところでそのパチパチいってるのはなんだ?」




「ソロバンです」




 使用方法を教える。気に入ったようなんでハルとスイに作ってもらいあげました。しかし兄ほどのソロバンさばきではありませんね。やはりうちの兄はおかしかったらしいです。


 しばらく全員黙々と仕事に没頭しました。














「…許せん!ドーベル殿!この書類は酷すぎる!!直接苦情を言ってくる!!」




「待って、ロスワイデ候爵子息」




「止めるな!」




「違う。どうせならこれもよろしく」




「あ、これも」




「こっちも」




「こちらもお願いします」




「…何故こんなに酷すぎる書類が多いんだ」




「…騎士団=脳みそ筋肉疑惑」




 ロスワイデ候爵子息がしゃがみ込んだ。いや、偏見かもしんないけど、昨日一日の私の学びです。




「…否定できん」




 否定できないんだ。そんなにか。




「物理特化だけじゃなく、サポート特化や頭脳特化が上手くフォロー出来る編成だといいですよね。そういう意味だとアデイルさんとこは本当に理想的でしたね」




「そうなのか?」




「カーティスが脳筋、ヒューさんは情報を引き出したりサポートに長けてます。アデイルさんはまとめ役ですね。彼らのグループはアデイルさんがチェックしているだけあって問題ありません。リーダーとしてアデイルさんは優れています」




「…そんなことないわよ」




 視線は書類だが頬が赤い。照れてるのかな?私もふっと微笑んだ。




「私、人を見る目は確かですよ。ロスワイデ候爵子息、効率的にまわれるようルート考えますから、もう少し行くのは待ってください」




「了解した」




「脅迫用…じゃなかった、護衛にサボテンさん達は要りますか?」




「何故脅迫する必要が!?騎士団内部で書類の苦情を言うだけなのに、何故護衛が要るんだ!?」




「ロスワイデ候爵子息と違って、小娘の苦情を聞いてくれなかった結果です」




「…同僚が申し訳ない。昨日はそれでどうしたんだ?」




「武力行使しました」




「何故そうなる!?」




「こらぁぁぁ!」




「アンタにはよく話し合いをする選択肢は無いの!?」




「あっはっは」




 ロスワイデ候爵子息、ディルク、アデイルさんにツッコミされる。痛い痛い。ハンドクローやめて、ロスワイデ候爵子息。


 そしてドーベルさんはやっぱりいい性格ですよね。笑ってるし。




「言い訳させていただけるなら、時間が無かった。あまりにも字が汚くて判読不能なモノが多い、不備多い、もはや書類ではない書類が多過ぎた結果、荒ぶった私がいました」




「「「……」」」




 騎士3人が頭をかかえて沈黙しました。この現状を見ているだけに、否定しようがないご様子。ロスワイデ候爵子息は私を解放すると、脳みそ筋肉と戦いに行きました。












 数分後。ロスワイデ候爵子息が荒ぶって帰ってきました。




「話にならん!サボテンを貸してくれ!!こうなれば武力行使しかない!あの脳みそ筋肉共を矯正してやる!」




「よっしゃあ!サボテンさん達、やっておしまい!」




「理由ぐらい聞いてからにしなさいよ!ためらいが無さすぎる!」




「落ち着いて、フィズ!後で絶対後悔するから!」




「あっはっは」








 結局、ロスワイデ候爵子息を2人が鎮静させ、ディルクが行くことに。
















 数分後。


 涙目で帰ってきました。とりあえずナデナデし、さりげなくモフる私。


 どうでもいい相手には基本鋼のメンタルな私と違い、かなりへこんだご様子です。話も聞いてくれなかったんだね。酷いね。よしよし。




「ディルクの敵は私の敵!私が殲滅「お待ち。アタシが行くわ」




 アデイルさんに首ねっこをつかまれました。アデイルさん、私一応公爵令嬢なんだけど、扱い酷くない?
















 数分後。




「ロザリンド、オレが悪かった。あの脳みそ筋肉共を殲滅してこい。オレが許す!」




 ちょっと!アデイルさん、キャラ忘れてる!エセオネエキャラどこ行った!?


 でも話し合いで3枚は書き直しさせたんですね?さすがはカーティス(脳筋)を操縦できる男です。あああ、いらつくのはわかりますが、爪噛むとせっかくのネイルがはげますよ?












 というわけで全員の同意を得て、ロザリンド発進です!




「いってきまーす」




「いってらっしゃい。書類は汚さないようにお願いします」




 ドーベルさんはかなりの鬼畜だと判明しました。




 結局私が脳みそ筋肉を矯正してきました。まだら赤いサボテンさん達を見ても、もはやツッコミが不在という酷い状況の中昼休みになりました。


 聖獣様と闇様静かだなと思ったら、彼らは集中していたらしく、声をかけたらえらくびっくりしてました。いや、本当にありがとうございます。

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