第86話 騎士と書類
騎士団派遣も3日目になりました。今日も昨日と同じスケジュールです。午前は訓練。午後は見回り。
今日もメンバーは昨日と同じ。
「いいこと?今日はふ・つ・う・に!見回りするわよ!」
「昨日のは普通じゃないんですか?」
「あれが普通だったら過労死するわよ!」
「宰相執務室ではあの10倍ぐらい書類捌いてましたが…」
「……」
「……」
「さ、宰相様と一緒にしない!」
「はい」
「捕まえて全部死刑にしちゃえばいいのにな」
「綺麗な女の子以外はな」
アデイルさんのゲンコツがバカ2人の頭に炸裂した。
「バカはほっといて行くわよ!」
「はーい」
素直にアデイルさんの後をついていく私。俺らの扱いと違わない?という呟きが聞こえたが聞こえないふりをした。
数分後。
「ロザリンドさん!弟がさらわれてしまって…」
「……うん」
どうしてこうなった。助けを求めてきたのは、よく行く紅茶のお店のお嬢さん。以前ごろつきに絡まれている所を助けたので、私が強いのを知っている。だから騎士ではなく私に助けを求めたのだろう。
私はアデイルさんをジッと見る。アデイルさんはため息を吐いたが、さすがプロ。目線でチャラい騎士に促し、私に助けを求めてきたお姉さんから必要な情報を聞き出した。
「キミの弟は必ず、この俺が助けるからね」
チャラ騎士、輝いてますね。歯磨きのCMに出られそうなぐらい歯が輝いたよ。
「カーティス、なんか解る?」
「んー、解らん」
超直感も万能ではない。近くに居れば見つけることはあるが、基本的に自分か大事な存在の命の危機に気がつきやすいぐらいのモノらしい。英雄は天啓をさらに磨く事でトラブル感知…とでも言うのかな?な力にしているみたいだけど。
「ご主人様」
ラビーシャちゃんが…君はどこから来たの?今空から降ってきたよね?学校はどうしたの?びっくりして固まる私にラビーシャちゃんは気にせず話しかけてきた。
「先程の女性の弟はこの道の先の廃屋に捕われておりました」
「…ええと、どうやってというか、いつからというか…」
さすがの私も何をどうツッコミすべきかわからない。
「ご主人様を陰ながら警護しておりましたら、悲鳴が聞こえましたので追跡いたしました」
「学校は」
「私も飛び級制度を利用しております。今日は必要な授業がありませんでした」
全然気がつかなかった。うちの忍者は確実に成長して…え?ロザリアは気が付いていたらしいです。教えようよ!
我が家の忍者の働きにより、事件はスピード解決しました。アデイルさん達には聴取等してもらい、それをもとに調書を作成。更に罪状や捕縛した時の状況等、書類を作りました。アデイルさんがチェックする間にお茶と茶菓子を人数分用意。そしてちゃっかり居るラビーシャちゃん。
「ご主人様のお茶とお菓子、おいしいです」
「良かったね。たんとお食べ」
今日はお手柄でしたから、好きに食べるといい。アデイルさんはお茶をすすりつつ呆れた表情だ。
「…主がお茶いれるわけ?普通逆じゃ…あら、おいしい」
「紅茶はご主人様の方が上手なんで、たまに教わるんです。そのお茶菓子もご主人のお手製ですよ」
「は?これ手作り!?」
「ロザリンドのメシもうまいぞ」
「…ロザリンドちゃんは変なのね」
アデイルさんが何かを諦めたような表情で告げました。
「さすがに失礼ですよ!書類は大丈夫ですか?」
「完璧ね。文句なし。早い、読みやすい、解りやすい。流石は元宰相秘書官様だわ」
頭をナデナデされました。褒められた!
「えへへ」
へにゃりと笑うと、アデイルさんも笑いかけてくれた。
ヒューさんが俺もと撫でようとしたので避けました。
「結構です」
「ロザリンドちゃん、俺に冷たくない!?」
「すいません、チャラい男性は生理的に受け付けないんです」
「まさかの全否定!生理的にって、どう頑張っても挽回出来ない奴だよね!?」
「申し訳ありません」
「そこで肯定しちゃう!?嘘でもいいから否定して!」
「ソンナコトナイヨー」
「急にカタコトになった!しかも超棒読み!」
「嘘でもいいとおっしゃるので、心にもない事を言ったらああなりました」
「超真顔!そんなに俺が嫌い!?」
「嫌い…というか、普通に喋れ。私はディルク以外には全く興味がない。口説くな、ウザい」
「ガチ本音いただきました!」
「あ、アンタたち、そのコント止めなさい…」
アデイルさんがプルプルしている。双子だからかアデイルさんも笑いの沸点が低いのね。カーティス、ラビーシャちゃんは…息をしなさい。笑い過ぎて死ぬとかやめて。普通に笑いなさい。
そんな感じで騎士派遣3日目は終了しました。
その後ヒューさんになるべく口説かないから仲良くしてくれないかと言われたので、家に持ち帰って検討しますと返事しました。それ遠回しなお断り!?と涙目でした。
よくわかりましたね。カーティスだと解らないんですよ。
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