第85話 騎士と精霊さん達と書類

 今日も学校から騎士団へ。転移の魔法陣で移動。今日は既に騎士団の服を着ています。全員が揃った所で本日の説明です。今日は午前は訓練、午後は別れて各部署に行き見回りだそうです。午前中は普通に訓練して、ディルクとお昼を食べたら見回りに参加となりました。私と見回りするのは…




「いやぁ、運命なんじゃないかな」




「カーティス、正直に言わないと酷い目にあわす」




「昨日の騎士寮賭けポーカー大会でヒューが優勝した結果です!正直に言ったから絞めないで!」




「あらあら、うふふ。よろしくねぇ」




 カーティスとヒューさんとアデイルさんの3人と見回りすることに。なんでディルクじゃないのか、よく解りました。ディルクは腹芸が苦手なタイプだから、ポーカーは不得手だろう。真面目だからイカサマという発想もなければ、多分出来ない。




 アデイルさんも攻略対象。口調はオネエだが、オネエではなく性格は男前。結構好きなキャラでした。言い寄る女性をあしらうのが面倒なのと、ヒューさんの双子の兄なんで見た目も大改造。言われなきゃ双子とは思えないレベルです。ヒューさんが茶髪なのに対しアデイルさんは黒髪ピンクメッシュにバッチリメイクとネイル。…女子力負けてる気がするよ?あだ名はエセオネエ騎士でした。




 しかし…


 アルディン⇒バカ殿


 アルフィージ⇒腹黒様


 カーティス⇒アホ犬


 兄⇒チョルー(チョロいルー)


 ヒュー⇒チャラ騎士


 アデイル⇒エセオネエ騎士


 ジェンド⇒病んデレショタ


 攻略対象のあだ名、マジでろくなのないね!特にジェンド!そしてバリエーションは豊かだけど、ろくな男が居ないね!運営は何を考えていたのか一時間ほど問い詰めたい。


 そんな事を考えてたら、アデイルさんに話しかけられた。




「ヒューに何かされたら遠慮なく言ってね?シメるから」




「ありがとうございます。お心遣いに感謝します。困ったら遠慮なく相談します」




「任せて。絞殺でいいかしら?」




「まさかの物理!」




「ぶはははは!」




「え?俺殺害予告されてる?」




 やはり口調以外男前ですね、アデイルさん。カーティスは笑いすぎ。ヒューさんには大人しくしてればシメませんよと返事しました。ほどよく緊張が解けたところで、いざ見回りです。
















 今回の見回りルートは比較的治安のいい王都のメイン商店街周辺です。




「ロザリンドちゃんや、この間ハル君が来て、荷物を運んでくれたんだよ。これ、お礼ね」




「おう、ロザリンドちゃん。こないだスイが棚直してくれたんだよ。礼だ、持ってけ」




「あ、ロザリンドだー。今日はコウ居ないの?コウね、いじめっ子を怒ってくれたんだ!」




「ロザリンドさん、この間アリサちゃんが病気を治してくれたのよ…ありがとう」




「お嬢様、野菜持ってけ!こないだハクが耕してくれてな!礼だ!」




 私の精霊さん達は働き者らしいです。商店街を歩いたら、両手がお礼でいっぱいになりました。さらに情報もいっぱいです。精霊さん達に帰ったら詳しくお話を聞きたいと思います。全員褒めてやろう。




「ええと、ロザリンドちゃんは公爵令嬢…よね?」




「はい」




「馴染み過ぎじゃね?」




「庶民派令嬢を目指してます」




「…とりあえず変わってるのは解ったわ」




 カーティスとヒューさんは爆笑している。別にいいじゃないか。公式ではちゃんとしてるよ。大容量鞄にお礼を全てしまい、町の人達の情報をもとに調査することに。












 まず、最初。最近人さらいがでるらしいです。




「囮になりますか」




「…ためらいがないわね」




「釣りは得意です」






 幻覚魔法で耳は人間のラビーシャちゃんに変身。オドオドしながら裏路地を突っ切ろうとして…




袋を被せられ、雷撃魔法をかけられました。イテテ。普通なら気絶しますが、耳飾り効果で気絶はせず。




 アジトらしき場所には女の子がたくさん。15人ぐらい。拘束はされてない。そのうちの一人が声をかけてきた。




「大丈夫?」




「うん。心配してくれてありがとう」




 周囲を見回し確認する。廃屋かしら。気配を探る…30人ぐらいか。念のため防音結界をかける。




「闇様ー」




「ふむ、呼んだか」




 ふわり、と闇様が現れる。女の子達が悲鳴をあげるかと思ったけど、固まってます。




「この部屋以外の人間を全て朝まで眠らせてください」




「ふむ。我に任せよ。たやすい事だ」




「さて、カーティスー」




 通信用魔具を起動すると気が抜ける返事があった。




「はいよー」




「さらわれたと思われる女の子達は確保。15人ぐらいだから運搬に馬車かなんかない?借りて王都に帰ろうか。賊は朝まで起きないよ」




「了解」




「闇様、ありがとうございます。さすがは偉大なる精霊様です」




「うむうむ。我にはたやすい事だ。また呼ぶがよい」




「あ、ありがとうございます」




「た、助けてくれてありがとうございます」




「わ、我はロザリンドに頼まれただけだ。ま、まぁ汝らの感謝は受けよう」




 闇様、ツンデレ?捕まってた女の子達に口々に感謝を告げられ、照れた模様です。


 私は扉をあけて堂々と歩く。女の子達は決意したのか私の後をついて来た。建物から出ると、カーティス、ヒューさん、アデイルさんが待っていた。




 手際よく女の子達を馬車に誘導し、乗せていく。




「さて、ロザリンドちゃんはアタシと騎士団に一旦帰還で、ヒューとカーティスは賊を見張ってもらおうかしら」




「あ、それは大丈夫です」




「ロザリンド!」




「早かったね、ディルク」




「囮なんて危険なことは駄目「もう捕まえちゃった」




 てへペロ、として見せたら、ディルクが崩れ落ちました。




「大丈夫?」




「仕事が早過ぎる!」




 あ、ディルクと組んでたと思われる騎士さん達も追いついてきましたね。疲労しきってますな。すいません。回復魔法で疲労を回復してあげました。




「ディルクに通信用魔具で連絡してあったんですよ」




「便利ねー、それ」




「備品申請通らないですかね」




 などと話している間に、真面目な騎士さん達は賊を縛り上げた。




「あの、何しても起きないんですが…」




 困惑した様子の騎士さんに説明しました。




 後処理はディルクの隊がしてくれることになり、この後山賊と女の子達を受け取る予定だった奴隷商人も捕まえました。


 騎士団に戻り、調書とって書類作って…騎士さんって捕まえるだけじゃないんですね。勉強になりました。








 一段落ついた騎士3人は騎士団本部の部屋で机に伏せてぐったりしています。




「久しぶりに口説く余裕もないわ…寝たい」




「疲れたー」




「働いたわね…」




「お疲れ様でしたー。お茶とお菓子どうぞ」




 さすがに書類は手伝えないのでお茶汲みをしてみました。お菓子は快く騎士団の料理長さんが分けてくれたので、焼きたてです。ちゃっかりディルクの隊にも横流ししました。




「「なんでそんなに元気なんだ!」」


「なんでそんなに元気なのよ!」




「…若さ?」




「シバくわよ」




「あだだだだ!すいません調子に乗りましたぁ!」




 アデイルさんにハンドクローを喰らいました。痛かった…




「私は捕獲しただけで、事後処理は見学だったからですかね?」




「つうか、なんなんだよ!ロザリンドちゃんの遭遇率!普通こんなホイホイ捕まえらんないから!」




「あはは…」




 リンにも何か天啓あったりして。トラブルメーカーとか?…そんな天啓あったら嫌過ぎる。




「カーティス、ヒュー、アデイル。今日の報告書作って」




 愛しのマイダーリンが来ましたが、今のタイミングはまずいかも。




「…ディルクが書いて」




「は?」




「もおお嫌ぁぁ!終わったと思ったのにぃぃ!!」




 アデイルさんご乱心!?そんなに書類が嫌ですか!?ディルクは机の上の書類を手に取った。




「…あれからまた何か捕まえ…山賊に奴隷商人!?えええええ!?」




「てへ」




「ロザリンド、無茶するんじゃありません!仕方ない。俺が基本を作成するから、サインくれ。ロザリンド、説明して」




 ディルクは私の不始末は自分の不始末と思っているのか、お手伝いするつもりみたいです。不始末ではないけど私のせいで発生した面倒ではあります。でもディルクの手をわずらわせるぐらいなら私が…サインは無理でも作成ならイケますよね?手本は見てたし多分大丈夫!




「サインだけアデイルさん達にしてもらって、私が作成では駄目ですか?見本は散々見ましたし、当事者が書くべきですよね」




「出来るの?」




「一応、元宰相秘書官ですから」




「「は?」」




「3歳から仮とはいえ宰相秘書官として働いてましたから、各種書類作成は大丈夫です」




「「「はぁぁぁぁ!?」」」




 驚いている3人…カーティスもそういや私が働いてるのは知らなかったんだなと思いつつ、私はサッサと書類を書き上げた。ディルクは親切にも細かい書き方を説明してくれた。うむ、なかなか。アデイルさんに書類を渡す。




「…完璧だわ。カーティスとヒューよりちゃんと出来てるじゃないの」




 アデイルさん、さりげなくカーティスとヒューさんがおとされてますよ?




「この書類簡略化したいですね。草案作って父に頼んでみます」




「…どんな?」




「基本穴埋めにして、犯罪に丸。欄が無ければ書く。捕縛した日にちと時間を書く欄、作成者氏名…」




 少し雑ですが、簡単な草案を作りました。基本的なものはこれで大丈夫かな。アデイルさんに草案を渡す。素早く彼はチェックした。




「…天才ね!でかしたわ、ロザリンドちゃん!団長にかけあうわ!」




「え?ならもう少し丁寧に作りたい…って速い!」




 アデイルさんは素早く出ていきました。疲れてたんじゃなかったの?




「ロザリンドちゃんてスゲーのな」




「頭いいのは知ってたけど、通り越しておかしいんだな」




「ヒューさんはともかく、カーティスはおかしいってなんだ!正直に言えばなんでも許されると思ったら大間違いですよ!」




 そしてカーティスと私の追いかけっこが開始され、カーティスがロスワイデ候爵子息にぶつかり2人揃って叱られた。


 しかもそこにアデイルさんが戻ってきて、




「ロザリンドちゃんて、すごいけど残念よね」




 と言われた。上げて落とすは基本ですよね!解ります。




「ぎゃはははははは!」




 そして、復活したら爆笑しているヒューさん。


 ディルクは苦笑してロスワイデ候爵子息を宥めてくれました。




 そんな感じで私の騎士団派遣2日目は過ぎていきました。

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