第83話 学校と測定

 基本学校に参加しないことになった私ですが、今日は身体測定と体力・魔力測定のため登校しています。




 先に身長・体重・スリーサイズを計りました。身長は145cm。体重は秘密。胸が少し成長してました。バストアップ体操とマッサージの成果ですかね?




 さて、体力・魔力測定です。体操服に着替えて体育館へ。体操服は白いTシャツに紺のハーフパンツです。


 短距離走・幅跳び、反復横跳び・垂直跳び・前屈を体力測定で行います。リンの世界とほぼ同じ内容ですね。










 うん。内容は同じだけど、獣人は規格外でした。オリンピックで優勝できそうな値がバンバン出まくってますよ。


 さて、短距離走はそろそろ私の番ですね。アルディン様も一緒に走るようです。




「負けないからな!」




 これは勝負ではないのですが、そう言われると勝ちたい私。




「先生、魔法が使える人は使用可能ですか?」




 気弱な女性…たまたま短距離走計測担当だったらしい私のクラス担任教師のミレイユ先生が返答した。




「使用はかまいませんが、使用と不使用の2回測定になります」




「わかりました」




「…魔法は無しだぞ」




 チッ、読まれたか。仕方なく着けていた重りの魔具を外す私。あー、手足軽い。見た目リストバンドなんで不思議そうなアルディン様。先生に預けたら、異常に重かったから先生が倒れそうになった。ここで異常に気がついたアルディン様は私に話しかけた。




「…ロザリンド、あの魔具はなんだ?」




「効率よくトレーニングするための重りです。両手両足で40kgです」




「…そ、そうか」




 アルディン様は明らかに引き攣っていた。いや、筋トレする暇あんまりないから考案したんだよね。




「位置について!よーいドン!」




 掛け声はどの世界も一緒だなぁとノンビリ考えてたら、ぶっちぎりでゴールしてました。ロザリアさん、さすがです。アルディン様が涙目ですよ。加減は?勝負に情けは禁物だし、手加減がばれたら失礼?確かに。




 担任教師が恐る恐る話しかけてきました。




「あの、ロザリンド嬢…今の、魔法は…」




「使ってませんよ?」




「…………………そうですか」




 何故先生は微妙な表情なのですか。ちなみに魔法使ったら、私もオリンピックどころか人としてありえない数値が出ました。




「ロザリンドは何を目指していたらこんなことになるんだ!?」




「公爵令嬢としてこの数値はありえませんわ!」




 体力測定が終わったら、アルディン様とミルフィリア嬢に責められた。なぜだ。




「…何があっても生き延びれるように、ですかね」




 目標は18歳を越えて、ディルクのお嫁さんになって素敵なおばあちゃんになってディルクと死ぬことかなぁ。




「何と戦うつもりだ!?」




「そもそも本来なら守られる立場でしょう!?ありえませんわ!鍛える意味がわかりませんわ!」




 理由を素直に言ったら納得されませんでした。おかしいな。




「…本当は鍛えるのが趣味なんです。自分の限界を知りたいというか」




 これはどちらかと言えばロザリア寄りの理由だが、納得された。残念なモノを見る目だった。なんでだ。










 魔力測定は魔力を特殊な加工をした水晶に注いで測ります。色が属性。輝きが魔力量だそうです。




「では魔力を注いでくださいね。魔力を全部注ぐつもりでやってみてください」




 言われた通りに魔力を注ぐ。水晶は目が眩むほどまばゆい様々な色の光を放ち、ピシピシと嫌な音がした。ヒビ入った気がする。




「…よろしいですよ」




 気のせいだろうか。先生の顔が引き攣っていた。私の次はアルディン様だ。




「わぁ!?」




 水晶はまばゆい黄金の光を放ち、割れた。こっそり離脱しようとして、ミルフィリア嬢に捕獲された。




「あの、私見ていたのですが、ロザリンド嬢が魔力を注いだ時にヒビが入ってました」




 ジト目で私を見るアルディン様。目を逸らす私。




「は、ハルー!」




「はいよー」




「これ直せない?」




 ハルは水晶を手に取り考えてから返答した。




「俺よりハクが適任だな。土属性は鉱石系統も扱えるよ。頑張れば俺もできなくはないかもだけど、正直苦手な部類だな」




「わかった。ありがとう、ハル」




 じゃあな、とハルが消える。




「ハクー!」




「はぁい。どうしたのぉ、ロザリンドちゃん」




「これ直せる?」




「んん?ボク元の形を知らないからぁ、元通りは無理だけど直せるよぉ。これ魔力測定の魔具だよねぇ」




「それでいいですか?先生?」




 先生が頷くのを確認して、ハクにお願いした。




「じゃあ、お願い」




「はぁいぃ」




 柔らかな光と共に大きな鉱石の塊だった水晶は、手の平に乗るサイズの水晶球になった。




「効果は変わらないよぉ。魔力容量は増やしたけどぉ、ロザリンドちゃんが本気出すとまた壊れちゃうから気をつけてねぇ」




「わかった」




「じゃあボクお仕事中だから帰るねぇ。今ねぇ、ルー君の新作トマトを植えてるんだぁ。美味しくできたらロザリンドちゃんにもあげるねぇ」




 兄はゲータの影響か家庭菜園…いや規模が違う。家庭農園にはまり中である。兄の天啓・緑の手は野菜にも発揮され、兄の作る野菜はどれも美味しい。野菜嫌いの母がサラダでもりもり食べちゃうぐらいである。


 そんな兄は最近品種改良にも着手し、害虫がつきにくいものや痩せた土地でも育つ作物を作成中だ。ハクは最近自主的にそれを手伝っている。




「楽しみにしてる」




 じゃあねぇ、とハクも戻った。あ、あれ?私めちゃくちゃ視線集めてません?




「ロザリンド嬢」




「はい」




「…職員室に来て下さい」




「…はい」




 私は計測係とは別の先生に連れられて職員室に行くことになった。お説教…ですよね。壊したのスルーしようとしたし、直せばいいってもんでもないですよね。気分はドナドナです。














 職員室に到着すると、先生の瞳はキラキラしていた。痩せてひょろっとした男の先生は確か魔法学の講師だったはず。




「君は複数の加護持ちなのかい?」




 先生は興味津々なのを隠そうともしない。面倒な気配がする。これお説教でもなんでもなく、自分が興味あるやつだ、多分。




「…そうです」




 ハルとハクを呼び出した手前、嘘をついても仕方ないので正直に返答した。




「属性は?」




「風と土です」




「へ?」




 先生が固まった。正直に話したんですが?先生は硬直が解けると興奮して普通は対極とされる属性加護は持てない。計測時の魔力量といい属性といい、魔法院に行くべきだと熱心に告げた。しかし、残念だ。




「興味ありません。私、賢者様から魔法は指導受けたんです。彼以上はこの国に居ませんよね?」




「…賢者様!?」




 やっべ。薮蛇だった模様。先生はさらに瞳を輝かせた。ビーム出るんじゃないかなぁ…授業をして欲しいとまで言われたけど、じい様の指導は正直適当以外の表現が思い付かない。他人に指導出来る気がしない。基本は好きに本読んで実践だったしなぁ…




 先生を鎮静させて断ることにかなりの労力を費やし、翌日学園長にも魔法院に行かないかと言われました。




 だから今は行かないってば。バッサリとお断りしました。

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