第82話 学校と飛び級
ロザリンド7歳。今日から学校。本日は入学式です。私は結局庶民向けな王立魔法学校に行くことにしました。決め手は飛び級制度。試験的にこの学校は他に先駆け飛び級制度を導入したため決めました。
理由は商人の子供は算数ができて当たり前。出来ることを
習うのは無駄、という声があったり、貴族も基礎知識は家庭教師でついてますから、貴族の呼び込みとそれに伴う寄付金を期待って所かな?国営だからさほど資金に困窮してないけど、最新設備作れるほどではないしね。
今日は馬車で送迎。兄はここでお別れ…あれ?兄はにっこりと私に微笑みます。あれ?兄よ、シルベスター魔法学園の制服は?コートの下、明らかに私服…
「馬鹿な貴族の相手に疲れたし、せっかく飛び級が使えるなら使いたいだろう?転校しちゃった」
「へ?」
「僕も同じ学校だよ。嬉しいでしょう?ロザリンド」
「あ、はい…………兄様酷い!報告・連絡・相談を私に義務づけておきながら、自分が守ってない!」
兄は愉快そうにケラケラ笑っている。
「たまには僕がロザリンドを驚かせてもいいじゃない。僕に嫌なら別のとこにしたらって言ったの、ロザリンドだし」
「ま、まぁ言いましたけども」
確かに兄が何やらイライラしていたから相談に乗ったら、クラスの馬鹿な貴族にゲータを悪く言われてお怒りだったから言った。やめるぐらいの気持ちの方が気が楽だろうと思ったから。
しかしまさか私の入学式に合わせて転校とか誰が予測するんだよ。兄はしてやったりと上機嫌に笑っている。
「ロザリンド、入学おめでとう」
校門前で待っていたらしく、礼服を着用したディルクが、私の王子様が花束持参でお祝いしてくれました。
「ディルク!ありがとうございます。はあぁ、礼服超素敵です!後で抱きしめてくださいね!」
「え、あ…後でね」
私の婚約者は今日も天使です。兄の呆れた視線が突き刺さりますが、気にしない!
兄と別れ、入学式の会場に入ると違和感があった。何故警備の騎士がいる。しかも多い。果てしなく嫌な予感がした。
入学試験首席だった私は、代表として挨拶をする。壇上にあがると、来たのは王子両方だったことが判明した。王子だからってなんで特別席なんだよと内心ツッコミつつ、私はつつがなく代表挨拶を終えた。
挨拶後、クラス分けされたが、私は案の定アルディン様と同じクラスになりました。
「よろしくな、ロザリンド」
「はい。よろしくお願いします」
アルディン様に挨拶を返す。周囲は遠巻きにアルディン様を見ている。
「お姉ちゃん、同じクラスで嬉しいなぁ」
「よろしくお願いします、ロザリンド様」
体格が小さかったので年下に見えていたが実は同じ年だったポッチとラビーシャも同じクラス。
ネックス・マリーも実は年上だが、全く勉強してなかったので私と一緒に入学している。2人とはクラスが別れたようだ。
あれ?あの後ろ姿はもしや…
「ミルフィリア嬢?」
声をかけると即座にふりむき私に叫んだ。今日も可愛いです。
「わ、私は貴女が入学すると聞いてこの学校に来たのではなくてよ!飛び級に興味がありましたの!勘違いなさらないで!」
「はい。同じクラスで嬉しいです。よろしくお願いします」
「…こら。俺と態度が違わないか?」
ジト目でツッコミを入れるアルディン様。
「私はミルフィリア嬢と仲良くなりたいのでしかたありません」
「ふーん、既に仲良さそうだけどな」
「え?」
「そんなことはありませんわ!わ、私はロザリンド嬢と仲良くなんて…あ、ありません!私はロザリンド嬢なんてきら…」
え!?私まだ嫌われてたの!?泣きそうな私の視線に気がついたミルフィリア嬢。
「き、きら…いではありませんが、とにかく!仲良くはありません!」
ミルフィリア嬢はもう言うことはない!と優雅に身を翻して席についた。すかさず席にかまいに行く私。うざかられようが、怒られようが、仲良いと言わせてみせる。
「…仲いいな」
「ミルフィリアちゃんはつんでれだってお姉ちゃん言ってた」
「仲、いいですよね」
アルディン様達の声は聞こえないふりでやり過ごしました。
今日は簡単なミーティング後に解散となった。
「飛び級の希望者は職員室まで来てください」
そう気が弱そうな女性のクラス担任に言われたので、職員室に行くことに。
職員室から空き教室に移され、飛び級について説明を受けた。そのあとテストを受け、翌日私は職員室に呼び出された。
「その…ロザリンド嬢」
確か、学園長だった…よね?このおじ様とか思いつつ相槌をうった。
「はい」
「言いにくいのですが、君の学力はこの学校で学ぶレベルを完全にクリアしてしまっているのです」
「は?」
「全てのテストを全問正解でした。更には数学にいたっては未知の方程式による解き方をしていて、数学教師が教わりたいと騒ぐ始末です。まだ我が校では飛び級での中等部編入の準備が出来ておりません。そこで提案なのですが、今年1年は我が校の特色でもある魔法院か騎士団あるいは商家派遣制度を利用されてはいかがでしょうか。我が校としても優秀な人材を手放したくはないのです」
「わかりました。派遣制度を利用したいと思います」
派遣制度とは、庶民向けのこの学校ならではの制度。見込みのある生徒を派遣させ、職場体験させるというもの。基本は小学部の高学年が行うが特別に許可してくれるとのこと。派遣中は出席扱いになりテストも免除される。ちなみにディルクはここの卒業生で、この制度で10歳から騎士団に居たらしい。
「どちらを希望されますか?」
「騎士団で」
私は即決した。騎士の内通者探ししたかったし、渡りに舟だ。
「騎士…ですか?」
学園長さん呆然。情報を補足することにした。普通魔法院にするもんね。
「私は冒険者として騎士団の討伐に参加経験がありますし、一応冒険者ランクもSです。よく手伝いもしていましたし、父と女性騎士の登用について話していたので必要な施設や備品・予算諸々やりたいことがありますのでぜひお願いします」
私、討伐やら工作員妨害で魔物を倒しまくったら入学前にSに昇格しました。学園長さんに渡された書類に目を通し、捺印をした。
「ちなみに兄君もここで学ぶことが無くてね。魔法院の魔法薬科に派遣になったよ。来年には君達は中等部行きになるだろうね」
「そうですか」
私は出る必要は無いが初歩魔法学は賢者のじい様がちゃんと教えてくれなかったし、基礎は大事だから出席することにした。それ以外は騎士団に派遣となり、無事受理されたと翌日書類が来ました。
帰宅して騎士団派遣の話をしたら、呆れた兄に言われました。
「ディルク、好きだよね」
「愛してますが、それだけで決めたんじゃありませんよ!」
兄の中で私はどうなっているのか…聞きたくないので確認はしませんでした。
ちなみにディルクには内緒なので、びっくりさせようと思います。
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