第70話 ハクと匂いとディルク

 ハクが来て、2週間が経ちました。ハクはなんというか…相変わらずです。毛並みはよくなったかもしれません。普段モグラスタイルなので、いまだガリガリなのかはわからず。




 働き者で、早朝からトムじいさんを手伝い、ご飯も忘れて働くので、子供達に連行されています。




「い、いただきますぅ」




 ご飯をテーブルで食べるのは相変わらず緊張するらしいですが、吐くほど食べようとはしなくなりました。食後、ハクに声をかけられました。




「ロザリンド様ぁ」




「…」




「ろ、ロザリンド様ぁ」




「ロザリンド」




「ろ、ロザリンド……さん」




「ハク様って呼ぶ?」




「ロザリンドちゃん!」




「はい。で、なんか用かな?」




「お仕事がしたいんですぅ」




「毎日働いていると思うけど?」




「ボクは土の精霊ですぅ。たくさん畑を耕したりできますぅ」




「…なるほど。領地で必要がありそうならお願いします」




「はいぃ!」




「うん。ハク、しゃがんで」




「はいぃ?」




 素直にしゃがむハクをなでなでした。相変わらず固めの毛並みだなぁ。




「いつも頑張ってくれてありがとうね」




 私が笑いかけるとハクは泣き出した。いや、むしろ号泣した。




「うぇ!?」




「うわぁぁぁぁぁん!嬉しいよぉぉ!うわぁぁぁぁぁん!」




「あ、あわわわわわ」




 嬉しい反応なの!?何が嬉しいの!?


結局、ハクは奴隷=家畜と同じで働いて当然。働かなければ死ぬという図式があり、褒められることが初めてだったらしい。それを聞いて、兄と甘やかそう同盟を設立しました。




 おやつを持ってハクを捜すと、ユグドラシルさん1階で子供達+精霊さん達とお昼寝をしていました。うーむ、リアルト○ロ。ハクのお腹に寝転びました。うむ、素晴らしいモフ心地。




「はうぅ!?ロザリンドさん、どうしたんですか!?」




「気にしないで。私も昼寝する」




「いやいやぁ、ロザリンドさんつがいがいますよねぇ、ボクの匂いがついたら多分怒りますよぉ!」




「大丈夫…多分」




 私はそのまま眠りました。




















「ん…」




 目が覚めると、私の隣にはジェンドとオルド。ポッチとマリーが羨ましそうにしています。




「ぼくもお姉ちゃんとお昼寝したい…」




「お姉ちゃん…私も」




 さすがに5人は無理ではないか。ハクから下りておやつでごまかしました。結局ポッチとマリーはごまかされず、翌日一緒にお昼寝しました。




 私はハクに心配されました。




「ロザリンドさんの匂いが大変な事にぃ…」




「お風呂に入ってるし大丈夫では?」




「いえぇ、獣人はわかりますよぅ!」




「えー?」




 そんな会話をしていたらアルディン様が遊びに来ました。前回の件で味をしめたらしく、素敵なお土産ディルク付きです。カーティスも居ます。




「ディルク、お疲れ様」




「…ロザリンド?」




「ふにゃ!?」




 ディルクは険しい顔で匂いを嗅ぎます。いや、首くすぐったい!




「…ちょっと来て。カーティス、すまないが少し抜ける」




 ベッドに押し倒され、匂いを嗅がれる。胸のボタンもきわどい所まで外され、足先から太ももまで念入りに匂いをチェックされた。




「あ、あう」




 私は羞恥で涙目である。恋人にあからさまに匂いを嗅がれるとか…軽い気持ちで大きなモフモフと昼寝をしたら、まさかの仕打ち。




「なんで、他の男の匂いがこんなにするの」




 ディルクは真剣に怒っていた。獣人にとって、他の男性の匂いがする=浮気なのかもしれない。私が説明すると、ディルクは脱力した。




「ロザリンドはもう少し考えて行動して。ハクにも言われてたのに聞かなかったロザリンドが悪い」




 怒ったディルクに舐められました。…ええ、隅々まで舐められました。どこをとは聞かないでください。黙秘します。


 匂いを上書きするために、時間がないから舐めたそうです。それはもう大変な羞恥プレイでした。




 私はもう2度とハクのお腹で昼寝はしないと心に誓いました。




後書き編集

 ロザリンドの予想通り、他の男の匂い=浮気です。他の男の匂いが移るぐらいベタベタしてたの!?…となります。




 ちなみに種族にもよりますが、一応匂いの上書きは本能的なものです。後で我にかえったディルクがひたすら謝りました。

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