第61話 ワルーゼ家の行き先とお説教
この分なら捜索は問題ないので、私とディルクはワルーゼ邸に戻りました。
まだここにはラビオリさんが預かってる子供達がいるので結界とかはそのまま。ワルーゼ家の皆様は今後の話をするために我が家に来てもらうことにしました。
「おかえり、ロザリンド。僕に言うことは?」
「ただいま、兄様。ち、ちょっとお転婆しちゃった」
帰宅したら大魔神・兄がお出迎えです。今回絶対反対だと思ったから内緒にしてましたが、ばれたもようです。ディルクの後ろに隠れる私。
「ロザリンド、素直に謝りなよ。ルーベルトも多分許してくれるよ?」
「あう…兄様、ごめんなさい」
「…次はないよ?」
「はいぃ!次からはちゃんと説得します!」
「そもそも危険なことしないって発想はないの!?」
「目的のためなら多少は仕方ないと思います!」
「馬鹿ロザリンド!毎回毎回心配する僕の身にもなれぇぇ!」
謝ったけど結局叱られました。解せぬ。
「ロザリンド様、お兄様には弱いんですね」
おお、ウサ耳美少女のスマイルいただきました。
「弱いですねー」
私も苦笑する。
「…どちらさまですか?」
ようやくお客様に気がついた兄。説明はまとめてしたいので、父・母・兄・ルーミアさんに集まっていただき、応接室で説明です。
「本当に、本当に、大事なご子息に申し訳ございません!」
今日この人何回土下座したかしら。今回は私がされているわけではないので気が楽です。ラビオリさんはルーミアさんに土下座しています。
「顔を上げてください」
「謝罪して済む話ではないと理解している。父ではなく、ジェンドを見捨てた俺に責任がある。殺すなり痛めつけるなり好きにしてくれ」
ゲータにナイフを渡され戸惑うルーミアさん。ロザリアさん、お願いします。任されたよ!との返事がありました。
そして見事な踵落としがゲータの頭に炸裂しました。
「馬鹿!死んだらジェンドが悲しむでしょうが!私はジェンドにお願いされてるのよ?それに罰を待つのではなく償いなさい」
「償い?」
「自分のしたことが罪だと言うなら、死なずに一生苦しみぬいて被害者のために働きなさい。あんたが死んでも何も変わらない。あんたの自己満足でしょうが」
私の言葉にゲータはうつむいて動かない。私はラビオリさんと視線を合わせた。
「ラビオリさん。無罪放免というわけにはいきません。家財没収と3年の無償労働でいかが?」
「はい」
「親父は「関係あります。あんたの頭が足りなかったのが原因なのは確か。でも家の長として今回のことを防げなかった。預かってる子供を救えなかった。無関係とは言えません」
うなだれるゲータ。家族が好きなのはわかったよ。私は父に視線をうつした。
「父様、ラビオリさんが預かってる子供なんですが、これって国の責任もありますよね。貧困層を放置した結果ですよね。傷ついた子供達にケアも必要ですよね」
「そうだな。国の責任もある」
私の意図を察し、ニヤリと笑う父。
「貧困の放置は治安悪化に繋がりますよね」
「うむ」
「私の草案、ごり押しできます?」
「国営の孤児院または託児所か。任せなさい。ところでロザリンド、この騒動だ。無能が山ほど解雇されて人材が不足するな」
「そうですね。使える罪が軽い者は数年無償労働で使うとして、女性文官と女性騎士雇用案、平民の文官雇用案もいけますかね」
「いい機会だな」
「ですねぇ」
笑いあう私と父。王様が大変でしょうが頑張っていただきましょう。
私におずおずとラビオリさんが聞いてきました。
「あ、あのう…孤児院と託児所というのは」
「親を亡くしたあるいは何らかの事情で家に居られない子供を預かるのが孤児院。共働きの親が一時的に預けるのが託児所です。国営施設にするつもりです。ラビオリさんはそちらで働いていただきます。当面はラビオリさん宅を流用。改装して使いやすくしたいと思ってます」
「はい!」
おお、ラビオリさんやる気ですね。
「私はどうしたらよろしいですか?」
かわいらしく首を傾げるラビーシャちゃん。
「貴女は私付きのメイドとして働いていただきます。教育はマーサに任せます。マーサの指示に従ってください。マーサはすごいメイドさんです。彼女はきちんと貴女を指導してくれますよ」
「はい!」
「お任せください、お嬢様。このマーサ、責任をもってラビーシャ嬢を立派なお嬢様のメイドにしてごらんにいれます」
マーサが超やる気で、ラビーシャちゃんちょっとひいてます。
「ご、ご指導ご鞭撻をよろしくお願いします!」
しかし、気を取り直し即座にマーサに頭を下げる。彼女本当に賢いな。マーサもにこりと笑った。及第点のようですね。
「お、俺は…」
「どうしよっか」
「おい!」
涙目でつっこむゲータ。いや、軽い冗談じゃないか。
「正直このままじゃ使い物にならないから、アークに扱かれてください。一応は兄の従者予定です」
「僕!?」
いきなり水を向けられて驚く兄。え?嫌?
「兄様園芸は力仕事が多いから助手欲しいって言ってたじゃないですか。ゲータは獣人だから力持ちだしタフだし、向いてますよ」
「うーん、君はどうなの?」
「俺は…園芸って野菜ぐらいしか育てたことない…です。というか、それ従者か?」
「植物は好き?」
「え?見る余裕が今までなかったからわかんね…わかりません。野菜は好きです。上手く育てば嬉しい」
「僕は彼でいい。ゲータ、よろしく。アーク、使えるように指導よろしくね」
「えええええ、俺しばらく忙しいですよぅ…」
嫌がるアークに利点を説明することに。私はアークの後ろに立ち、肩に手をやる。
「ゲータはこれでも一応商人の子供でラビオリさん不在時に屋敷管理してたんだよね?」
「お?おう」
「帳簿とか、書類整理や作成できるよね?当然、先輩のお仕事で出来ることあれば手伝うよね?」
「まあ、そりゃ俺に出来ることなら」
「よし、使えるよう扱いてやる!」
俄然やる気のアークに引き気味なゲータ。うーん、ここんちの男2人、純粋なのはいいけど腹芸には向かないな。まだラビーシャちゃんの方がマシかもね。
ワルーゼ家の行き先が決まった所でジェンド達も帰ってきました。
「ただいまー。お姉ちゃん、僕たくさんみつけたよ」
ほめてほめて、と尻尾をパタパタさせるわんこ…じゃないジェンド。
「ジェンドはおりこうさんだね。お姉ちゃんのお手伝いありがとう」
「えへへ」
「ロザリンド、ロザリンドに悪さをしようとした馬鹿はがっつり心を折ってきたから」
「あ、うん。ありがとう?」
スイさんや。何をしたのか怖いんですが?確認したくない。笑顔が真っ黒ですよ?
「ママ!アリサもね、泣きながらにげるわるものをしばったりしたよ。わなもといたよ!」
「…うん、ありがとう。頑張ったね」
マジで何があった。私の可愛い子達(スイ含む)をナデナデしつつ遠い目になる。私の心の平穏を思うなら聞きたくないけど、後でレオニードさんに確認せざるを得ない。
「ところでジェンドはどうして喋れるようになったの?」
兄から当然の疑問があり、焦る私。正直なジェンドは得意げに笑って言った。
「お姉ちゃんがナイフでさされそうになってて、たすけようとしたらしゃべれた!」
しん、と静まり返る室内。だらだらと流れる冷や汗。
漂う冷気。
…冷気?ちらっと両親をうかがう。見なきゃよかった!母もめちゃくちゃ笑顔だ!すごい怖い!父も凄い!目から破壊光線出そう!
窓から咄嗟に逃げようとしてあっさり捕まり、両親と兄から散々説教をされた私だった。
うう…足が…正座で説教は地味につらいよぅ。
私は延々と私を心配してくれる優しい家族達から説教をされるのでした。ディルクも家族の剣幕に真っ青で、叱られる私の隣で手を握ってくれてました。
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