第15話 リベンジとマーサ最強疑惑

 今日は長かったよ…ようやく我が家に着きました。




「おかえりなさい」




 おお、母よ。お出迎えとかレアですね。今日は顔色もいいようです。




「…シンシア?」




 父、信じられないものを見たような顔しない。最近母頑張ってるのですよ。




「おかえりなさいませ、旦那様」




 はにかみながら父におかえりなさいのキスをする母。


 母、可愛い。超可愛い。


 あ、父も可愛い。照れて顔を背けるとか、ごちそうさまです。




「父様、ロザリア、おかえりなさい。ロザリア、僕を置いて行くとかどういうこと」




 おうふ、兄が案の定拗ねています。父、行くのです!


 父は私の目線に気が付き、兄の前で膝をつき目線を合わせた。


「ただいま、ルー。すまなかった。ロザリアを急に連れて行ったのは私だ。明日はお前も連れて行こう」




「え?」




「ただいま、にいたま。よかったね」




「え?ええ?」




「明日は坊ちゃんにも働いてもらいますよー」




「えええええ!?僕にもって、ロザリアは何しに城に行ってたの!?」




 本当にね。何しに行ったのかな?


 ま、まあいっか。




「うむ。働いていた。素晴らしい働きだったぞ」




「え!?なんの仕事!?癒し?マスコット的な?」




 兄の中でも私は癒し系ですか?確かに兄にもかわいがってもらってますが。


 自分的には荒み系(闇さんと敵限定)なんですけどね。




「いや、書類仕事だ」


「なんで子供に!?」




「…魔がさした」




 父ぃぃ!!


 ちょ、父!!


 兄絶句してるよ!


 私もびっくりだよ!!


 正直に言えばいいってもんじゃないんだよ!!




「ま、まぁ結果オーライってことで」




 出来る従者のフォローにより、話しはうやむやになりました。




 疲れてたんだよね、父もアークも。どう考えても3歳に書類仕事させるとか狂気の沙汰ですよ。




 あれ?そういえば、いつもならマーサがお出迎えなのに居ません。




「あれ?マーサは??」




「狩りに行かせた」




「かり?」




「どうしても奥様に滋養がいいインシェントタートルの肝が欲しい。調合の関係で今日中にって嘘ついた」




 ガチで狩りだった!しかもその魔物はSクラスのヤバい奴でしたよね!?


 マーサは何者ですか?それ嘘だってばれたら…考えただけで恐ろしい。




「えええ、マーサどう考えても怒るよ、それ」




 兄の言葉に頷く私。




「いや、情報の真偽を見定めるのも優れた従者には重要なんです。今回は騙されたマーサが悪いんですよ。捕ってきたら、今日のディナーになるんで完全に嘘ではありませんよ」




「…みかたどうちであちのひっぱりあい、よくない」




 一般論のようだが、実際は私怨と私情が混入しまくっている。




「いいんですー!俺らだって、坊ちゃんとお嬢様のお祝いしたかったのに仲間外れにしたのはクソ姉なんですから!今日中に帰還不可能なミッションにしなかっただけマシですよ」




 言ってる間にマーサは帰ってきた。




「うわぁぁぁ!!」




「わー」




「……」




 叫ぶ兄、びっくりし過ぎてリアクションが薄くなった私、気絶した母を素早く抱きかかえた父。




 巨大なスッポン的亀を担いだマーサが帰還した。




「おー、立派な奴捕ってきたな」




 全く気にしてないアークは血まみれマーサに平然と近寄った。




「ま、マーサ…だいじょうぶ?」




「問題ありません、お嬢様。返り血がほとんどです」




 念のため治癒魔法をかけておく。確かに外傷の気配は無かった。




「お嬢様…」




 ん?なんかマーサ嬉しそう。どうしたのかな?




「ところで、アーク」




 マーサはニコニコとしている。両手には双剣。なんとなく、殺気が漂っているような?




「先程お嬢様と嘘がどうのと話していたようですが?」




 アークは全力で離脱した。目で追えないぐらい速かった。


 マーサも同じぐらい速かった。こんな大物狩った後なのに、マーサは元気ですね。




「おお、こりゃ大物だなぁ。腕の振るいがいがあるぜ」




 ダンはさっさとマーサが狩ってきた獲物を運んでいる。


 うげ、この魔物もSランクだ。マーサは凄すぎる。




「え、食べるの!?」




「美味いですよ、有り得ないぐらい」




 そうなの!?


 晩御飯、楽しみだなぁ。遠ざかる破壊と戦闘の音を聞きながら、私は現実逃避した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る