第8話 猫のブラック
翌朝、目が覚めたら、またブラックが俺の胸の上に乗っていた。
朝から冷や汗を欠かされた、重たくて……。
俺がベットから起きた時には、ブラックは、まだ寝ている。こんなんで俺を守る事ができるのか?
俺が制服に着替えていると目を覚ました。
「あっ、ご主人さま、もう起きたんですか?」
「うん、学校があるからね」
そういえば学校では、どうするんだろ?
「ねえ、ブラック、俺、学校にいくんだけど、君はどうするんだい?」
「えっ、私もいきますよ」
「でも猫を連れて学校にいけないよ」
「あっ、それは大丈夫ですよ」
「どうして?」
「私の能力で、こうして消えることができるんですよ」と言ってブラックは視界から消えた。
「へ~、すごいね」と言ったらブラックが姿を現した。
そこに「お兄、もう朝だよ」とノックもなしに妹の陽葵が部屋に入ってきて、ブラックを見られた。
俺とブラックと陽葵の3人が固まる。
「……」俺とブラック
「きゃ~なに、この猫?」と言って陽葵が猫に飛びつく。
しかし陽葵が抱き上げようとしたが、上がらない。
それに気が付いたブラックが何かしたみたいで、重たくて上がらなかったブラックの体が軽くなり、それに気がつかない陽葵(ひまり)は、おもいっきり尻もちをついてしまう。
みえたけど妹なので、すぐに目をそらした。
ブラックの奴、できるんなら、昨日から軽くしてほしかった。
「なに、これ、かわいい」とブラックの迷惑そうな顔は無視して頬ずりをしている。
陽葵がブラックを頬擦りしながら、俺の方をチラッと見て、「お兄、猫飼うの?」と聞いてきた。
「いや、その猫は‥‥‥」なんて答えようか迷ってしまう。
「私、賛成、前から猫欲しかったんだよね。お母さんに飼っていいか、聞いてくる」と言って俺が止めることもできずに、猫のブラックを持って、階下に降りていった。
下で、どんな話をしていたのか、気になって階段の上で聞いていたが母親が「何、その猫?」
「お兄が拾ってきたみたい」
「まぁ、昴が?」
「うん、ねえ、お母さん飼っていい?」
「本当に野良猫なの?」
「うん」と飼いたいからいい加減なことを言っている。
「じゃ、いいわよ」
「わ〜い、やった」
「猫の世話は2人ですること、いいわね」
「うん、わかった、お兄にも言っておく」
「明日、猫の餌を買ってこなくちゃ」
陽葵が上に上がってきた。
「お兄、飼っていいって、やったね」と陽葵は手を広げて出した。
「‥‥‥お兄、ここ」と言って要求したので、俺はハイタッチした。
「よかったね、君の名前は何にしようか?」
「名前ならついているぞ」
「えっ、なんてつけたの?」
「ブラックだってさ」
「だってさって誰がつけたの?」
「あっ、いや、なんとなく、黒いからなブラックだ」
「そうかぁ、君はブラックっていうのか?、よろしくね、ブラック」
「あっ、もうこんな時間だ、食事して学校、行かなきゃ」と言ってブラックを床に下ろして、ダイニングに降りていった。
「ご主人さま、私、猫の餌だけは嫌です」とブラックが言ってきた。
「えっ、そうなの、猫ってみんな美味しそうに食べるじゃない」
「お母様に言ってきてください」
「じゃ、何、食べるの?」
「私は人が食べるものと同じで構いませんから」
「そう、じゃ、言っておくね」と言って階下に降りていき、食事と母親に伝えた。
部屋に残ったブラックは、立って自分で扉を開けて、四つん這いになって階段をゆっくり降りてきたリビングに来て「にゃ〜」と泣いて陽葵から食べるものをもらっていた。
これぞ、まさに猫かぶり‥‥‥なんて思ってしまった。
俺も、パンをちぎってやってみたが‥‥‥一度は振り向いてみただけ、母親に食べるものをもらいにいった。
こいつ‥‥‥俺がやったパンは食べないで、妹と母親からもらったものは食べている。
まぁ、いいや、猫はそこまで好きじゃないし‥‥‥と強がりを考えているとブラックが、俺の考えていることを読んだかのように振り向いてニヤッと笑ったような気がした。
俺は食事を済ませ、歯磨きして荷物を持って、玄関を出て行こうとすると、ブラックが俺の肩に乗ってきた。
「あっ、お兄、ブラックを連れて登校?」
「いや、そんなわけないから、恥ずかしいし‥‥‥、途中で、どこか散歩でもいくんじゃないか」
「あっ、そうか」と陽葵
「じゃ、いってきます」
「はい、行ってらっしゃい」と母親。
俺は荷物を持っているのに肩にブラックが乗っているせいで余計に重たい気持ちになる。
玄関を出ると人が歩いているので肩に猫を乗せていると、恥ずかしい。
俺は人がいない路地に入って「おい、ブラック、どうにか、ならんのか?」
「えっ、何がですか?」
「いや、その、猫を肩に乗せて歩くのもな、恥ずかしいんだが」
「えっ、そうなんですか、もう、仕方ないですね」と言ってブラックは透明になった。
「これならいいでしょう」
「ああ、いいけど、今、どこにいるんだ?」
「ここですよ」と言って急に肩が重たくなった。
「そこに乗る必要があるのか?」
「あなたを守るためですよ」
本当かな? 肩に乗らないで横を歩いてもいいんじゃないかな?
そこに陽葵が俺を追いかけてきた。
「お兄、あれっ、ブラックは?」
「あ、いや、散歩に行ったんじゃないか?」
「あっ、そうなんだ、せっかく触ろうと思ったのに」
「残念だったな」と言い訳したが、肩に乗っている。
「あっ、じゃあね。お兄」と言って友達を見つけたみたいで走っていった。
「ねっ、見えないでしょう」と小声で話してくる。
そこにタイミングを測ったように、話しかけてくる人物がいた。
舞だ。
「おっはよ、元気してた」と舞
「あっ、うん、元気は元気なんだが」肩が重たいとも言えずに‥‥‥
俺の左肩に乗っているブラックがいるが、舞にも見えないのか、気にしていない。
てっきり舞がらみかと思ったんだが‥‥‥
そんな矢先に声がした。
「これはこれは舞様、いつもお綺麗で‥‥‥」とブラック
やっぱり舞がらみじゃないか。
「うん、君も溶け込んだね」
「はい、こちらの家にお世話になることができました」ブラック
「うん、よかったよ」と言って消えて見えていないのに頭を撫でるような仕草をしている。
「舞、ブラックが見えるの?」
「それは、わかるよ、だってブラックは、私の指示で昴の家に行ったんだもん」
「やっぱり舞の仕業か?」
「あっ、何、仕業って?」
「あっ、いや、ブラックが突然、現れたから、舞の関係かな?と思って」
「うん、私のブラック、可愛いでしょう?」
「あっ、うん、そうだね、か、かわいいよね」
「あっ、なんか無理していってない?」
「いや、そんなことないよ、かわいいよ」
「ブラック、昴の家で可愛がってもらうんだよ」
「はい、舞様」
「‥‥‥もしかして、本当にブラックが俺を守ってくれるの?」
「そうだよ、だから昴の家にいかせたんだから」
「猫の手で守ってもらっても‥‥‥」
「なに、もしかして猫パンチで守ると思っているわけ?」
「えっ、違うの?‥‥‥だって猫だし」
「あのね、君‥‥‥」あっ、学校に急がなきゃ、遅刻だよ」と舞
「あっ、うん、本当だ、急がなきゃ」俺が腕時計を見ながら走り出す。
舞は結構、走るのが早い、俺は肩にブラックを乗せているので、重たさと走りにくさがあるから、舞に置いていかれる。
舞は通学路の階段を登り始める。
舞が階段を登り切って俺の方を振り返ると、一陣の風が吹いて、舞のスカートが
舞は慌ててスカートを押さえたが、顔が真っ赤で
「見た‥‥‥見たでしょ」と顔をさらに赤くして俺に言ってくる。
「う、うん、少し……」といい訳したけど、しっかりと目がくぎづけになっていた。
「もう、ダメだよ」
「いや、俺がわるいんじゃないし」
「まぁ、そうだけど、でも、許してあげない……」と言って舞はスタスタと速足で歩き始める。
俺は許してあげないという言葉を無視して「時計を見ると、もっと走らないと間に合わない……
前を走っている舞の手をつかんで、「ほら、急がないと間に合わないぞ」と俺が舞の手を引っ張ると舞もつられて走り出す。
つながられた手をほどかれることは無かった。。
俺たちは手をつないだまま、走って高校の校門にたどり着いて門をくぐった。
俺たちが門を通ったときに、門が閉められた。
「はい、ここからは遅刻だから生徒手帳だして」と先生
俺たちはハァハァ息を切らせながら、お互い顔を見つめる。
「はぁ、よかった~」
「うん、昴のおかげだよ、ありがとう」
後ろでは先生が、遅れた生徒の手帳に書いている所だったけど、なんだか、今日は時間が立つのが遅い感じがした。
そんなに遅くに家を出た記憶はないんだが……
普通どおりに歩いてきたはずだし、道草もしていない……?
*
舞とはクラスメイトだけど、一緒にはいることは恥ずかしいので、舞が前を歩いて、俺は少し遅れていく。
そんなときに限って舞が後ろを振り向いて「遅いよ」と言ってくる。
俺は少し小走りになって舞に追いついてみる。
舞と二人して歩く廊下は違った景色になって見える。
外を歩くときとは、あきらかに違う感じがする。
女の子と学校の廊下を歩くのって、こんなに変わることなのか?
そして廊下を歩いている生徒たちからの目線で恥ずかしいやら目のやり場に困ってしまう。
話をする訳でもなく、舞と連れ立って歩く廊下……
そこに舞が「でも、朝はほんとうに助かったよ」
「うん、危なかったね」
「ほんとだよ、もう少し遅かったら遅刻する所だった」
「そういえば舞って、どの辺に住んでいるの?」
「えっっ、私の家を知ってストーカーするつもり?」
「いや、そんなことしないけど」
「あっ、じゃ、私の洗濯物を眺めるか、取るつもりなんでしょう」
「いや、そこまでしないよ」
「しないまでも、教えてあげないよ、女の子の家を簡単に教えられるわけないでしょ」
「うん、まぁ、そうだね」
「あっ、でも俺の家は舞は知っているし、部屋まで来ているじゃなか?」
「それは、それ、これは、これでちがうでしょう」
なにが違うのか? まったく、わからない……
舞には、いつも肝心なことを聞いても、はぐらかされる。
「ほら、教室に着いたわよ」と舞
「あっ、うん」
「ブラック、。あとはよろしくね」
「はい、わかっております」とどこからともなく声がしたけど、もちろん俺の肩にいるブラックからだ。
今日は、ブラックを乗せたまま授業を受けることになるのかな?
肩が凝りそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます