第7話 何が起きているのか?
俺は舞が帰ったあとも本を読み続けた。
舞が残した言葉の意味が本に載っているんじゃないかと思って。
でも、この本は、読めば読み進めるほど変化していく。
本の厚みは、他の本よりもページ数は少なく、薄いんだけど、話の内容が、変わっていく。だから繰り返し読み返す必要がある。
この本は、俺の世界の本じゃない‥‥
こんな特殊な本、俺たちの世界にはない……
いや、それとも俺が知らないだけで、どこかで開発されたのか?
そうであれば、すごい本が作られたものだ。
そんな最新の本を手に入れることができたけど、変な奴に狙われる結果になって、俺は正直、怖いことが起きて、さらに痛い思いをした。
このまま死んでしまうと思った。
こんな本なんか、捨ててしまえばいい‥‥‥と本を本当にゴミ箱に捨てようとした。
しかし、それでも俺を狙ってくるのが、止まらないことだってある。
初めは本だけを狙って俺の部屋を荒らしたが、首を絞めた時、本なんか眼中になかったような気がした。
つまり、俺を狙ってきているように感じた。
どうして俺なんか、狙う必要がある?
高校生の俺を狙ったって意味はないと思う。
どうして俺が狙われるのか、いくら考えてもわからない。
本を最後まで読んで、また、本を開いてみると本の内容が変化している。
俺が本を読むのを待っているように、ページを捲るたび次々と新しい内容になってくる。
ページを
SF好きな俺でもわかる言葉、それが次元転移装置、つまりタイムマシンだ。
タイムマシンの中枢部である装置に苦労しているみたいだ。
形は、丸でも四角でも構わないが、全部を覆うように装置を装着すれば問題はないが、肝心の次元を超える装置に問題があって、それに苦労していると書いてある。
「そう、そう、偉い、えらい」と急に声がした。
後ろを振り返るとベットの上に舞が座っていた。
「びっくりするじゃないか舞」
「うん、うん、それほど集中しているということだね」
話が微妙に噛み合わない。
「いいよ、いいよ、本を読み進めなさい」と舞
と俺には本を読めっていうのに、自分は本棚から漫画を持ってきて、ベットの上で読んでいる。
時々、舞の笑いを堪えた声が聞こえてくる。
「クックックッ あはは」と声に出して笑っている。
俺は本に集中することができない‥‥‥
チラッと舞の方を見るとベットの上で足を組んで本を読んでいる。
時々、笑いながら、足をバタバタとしている。
「あの〜、舞、集中できないんだけど」と俺がいうと
「やっぱり、こんな綺麗な女の子がいては集中できないか?」と勝手なことを言い出したけど、間違っていない。だって舞は学園一、可愛いので人気がある。
「じゃ、目を瞑って」と舞が言い出した。
なんのことかわからずに俺が目を閉じると、一瞬、俺の顔に風が吹いたので目を開けると舞はいなかった。
舞がいたベットには、痕跡が残っている、そこに手を当てると温かい。
舞は、どうやって俺の部屋に来ているのか? そこが不思議でたまらない。
「‥‥‥」
舞がいなくなった部屋は、ただ、ただ静かないつもの俺の部屋に戻った。
なんだか俺の部屋が寂しくなってしまった‥‥‥
妹と違う女性がいることに慣れていない俺は、なんだか憧れのようなことを思ってしまう。
別に舞が俺の彼女というわけでもないのに、突然、現れるし、しかも俺の部屋に来るわけだから、でも、舞は、どうして俺に、こんなことをしてくれるんだろう?
舞は肝心なことを聞こうとしても、すぐに、はぐらかしてしまうから何も聞けていない。
俺は舞が座っていたベットから離れて、本を読み始める。
さっきまで読んでいた部分は、本に
あれっ、今までこんなことってなかったのに、どうしてだ?
俺は栞を挟んだまま、初めのページをめくってみた‥‥‥そこに書いてある文章が、また、違っている。
俺は栞を挟んでいるところから抜いて、また本を読み始める。
”やった、とうとう、次元転移装置の心臓部分が完成した”といきなり核心をついてきた。
でも、どうやって完成させたのか? そこは書いていない。
なんだか、わからないことだらけだけど、誰が書いた本なのか?
前、見た時は書いてなかった。
もしやと思い、改めて見てみると‥‥‥書いていない。
俺は、少しがっかりした。
もしかして書いてあると予想したんだけど‥‥‥
俺は落ち込んだ気持ちを変えるために、風呂に入ることにした。
もちろん本は持っていく。本をビニールに入れて風呂場まで持っていった。
*
俺が、風呂から上がってリビングで水を飲んで食卓テーブルの椅子に座る。
今、ここには妹の陽葵と母親がいる。
「あっ、お兄、さっきの誰」と早速聞いてきた。
「ん? 友達?」咄嗟に聞かれたので、どう答えていいか迷ってしまう。
「えっ、友達が、こんな時間、尋ねてくるの?」
「ああ、学校の行事で聞きたいことがあったみたい」
「あっ、ふ〜ん、そうなんだ」と陽葵はテレビの方を向いた。
テレビの方を見ながら「綺麗な人だね」と言ってきた。
「そうだな」とそっけない返事をした。
「この前も登校途中にお兄と話していたよね」
「あっ、そうだったか?」
「まぁ、いいや」とテレビを見る。
母親が「今度、また、家に連れてらっしゃい」
「えっ」
「何よ、その声は」
「いや、だって、高校の友達だから‥‥‥」と俺が焦る。
「友人なんでしょう、だったらいいじゃない。お母さん、もう一度、会っておきたいわ」
「舞が来るっていったらね」
陽葵が突然、振り向いて「なに、名前で呼んでの、そんな中なの?」
「あっ、いや、ちがっ」
「まぁ、まぁ、慌てなくていいから‥‥‥ヒュー、ヒュウ〜」と陽葵が冷やかしの目と煽ってくる。
「じゃ、2階にいくから」と言って俺は、早々と階段を上がっていった。
上り詰めたところで、部屋に入ると舞がいるような感じがして、止まっていた。
自分の部屋の部屋なのにノックをすることはおかしく感じたのでノックもなしに部屋の扉を開けた。
部屋の扉を開けると、突然、黒い物体が飛びかかってきた。
俺の顔に飛びついた、それを引き離して見てみると、ネコ?‥‥だった。
真っ黒い猫が、どうして俺の部屋にいるのか?
窓も開いていない‥‥‥
どこから入ってきた?
俺は襲ってきた黒い猫を、もう一度、見てみるが首輪がついている。その首輪に鈴がついているのが目に付く。
俺の家では猫は飼っていないから、どうしようか?
餌もいるし、母親がOKを出さないと思う。
「あっ、餌は入りませんよ、ご主人さま」と誰かが喋った。
「あれっ、誰? 舞? いるの?」でも声が違うし、舞はご主人さまなんて言わない‥‥‥、俺は猫の方をみると俺を見ている‥‥‥
「ご主人さま、私ですよ、私」と猫の口が動いた。
俺はあまりにびっくりして、後ろの壁まで下がった。
「な、な、な、な‥‥‥」
「な、なんです?」
「な、なんで猫が喋るんだよ」
「チッ、チッ、チッ、私は普通の猫ではありませんので、そこいらの猫と一緒にしないで頂きたい」
「私は餌の心配も入りませんので、大丈夫です」
「でも、猫だろ?」
「まぁ見た目は猫ですが」
「いや、見た目だけじゃなく、どう見ても猫だろ」
「えっ、そうですか、そんなに猫に見えます?」
なんだか話がややこしくなってきた。見た目で見ても、猫なのに本人に自覚がない。いや人じゃなかった。本猫?? まぁ、本人でいいや。
「君は、どこから入ってきたの?」
「いや〜よくぞ聞いてくれました。実はですね‥‥‥」というので俺が聞き耳を立てると「いや〜、これが、また、言えないんですよ」とガックリするようなことをいう猫
「あっ、私の名前はブラックと言います」
見たままんだ。
「じゃ、ブラック、君は、これからどうするんだい」
「えっ、これからですか、スバル様のそばを離れませんよ」
あれっ、俺の名前を言ったか?
いや、言ってないよな。
「どうして俺の名前を知っているの?」
「いやですよ、ご主人さま、この名前をつけてくれた‥‥‥あわわわ、ここからは言えません」
「君って、そんなに秘密主義なの?」
「はい、今はですが。私はあなた様を守るためにきました」
「えっ、君が俺を守る?」
「あっ、なんですか、その
猫に守ってもらうなんて‥‥‥
誰だって変だと思うよ。
「私の使命はご主人さまを守ることです、それだけの能力があるから、ここにいます」
「そ、そうなの?」あの時もブラックがいたら守ってもらえたのか?
いやいや、そもそも猫だぞ。
猫が俺を守れるのか? そもそも何から?
「まぁ、見ててください、そのうちに、ごらんいただけますから」というと俺のベットの上に上がり、丸くなって寝てしまった。
しかも寝ているところはベットの中央‥‥‥
ブラックが丸くなって寝たことで、俺も急に眠気がきた。
なんて、説明しようか?
母親や陽葵がなんていうか?
そもそも喋れる猫なんて‥‥‥と考えていたら本当に眠くなって俺もベットの端に入り寝てしまった。
その夜は、ブラックと俺が活躍する映画みたいな夢を見た。
ブラックが偉大な魔法使いで、俺はブラックの弟子という関係だった。
なので主人公はブラックだ。
俺は怒られてばかりの弟子だった。
ブラックのことを師匠と言って世話をしていた。
ブラックから、不甲斐ない弟子でとばかり言われていたので、俺はうなされていた。
夜に目が覚めたら俺の胸の上にブラックが寝ていた。
もうっ、俺は両手でブラックを持ち上げて移動させようとしたが、重たくて上がらない。
「ふんっ」重たい
えっ、猫ってこんな重たいんだっけ?
せいぜい10キロくらいの感じだが、それ以上ある。
重たくて上がらないので、少しずつ横にズレしてベットの上に置いた。
なんだって、こんなに重たいんだ?
しかしブラックが退いたことで、解放され俺は眠りについてしまった。
そうすると、また同じ夢を見た。
またブラックが魔法使いで、俺は弟子だという夢だ。
もちろん俺がうなされたのは間違いない。
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