@hugehuman

第1話 ユウ

 300年ほど前、この世界では5つの剣の所有者を巡る戦いがあった。

 火、水、風、地、空それぞれの属性を宿した剣は、手に入れたものに土地や人を支配できるような強大な力を与えるといわれていた。その剣を求め、大小様々な国が総力を挙げて戦争に望んだ。そして、その戦いの後世界は5つの剣長による5大国によって統治されるようになり、現在へ至る。


 地の国、港町ピラクにて


 「今日の依頼も達成と。」


 依頼の通りに獲物を狩り、戦利品を鞄に詰める。そしてこれをテラーの元へ持って行く。この生活を続けて早2年になる。冒険者ギルドに所属していない俺は、こうやって知人のつてを頼りにさまざまな依頼をこなして生活している。今回の依頼は、ピラクの港に現れた金魚の駆除兼ひれ集めだ。


「ユウ、今日も助かったよ。また何かあったらよろしく頼むよ。あと、これはいつものお礼だ。とっておいてくれ。」

 ピラクの住人はそう言ってユウへ手のひらサイズの包みを手渡す。


「これ水の国の特産のスパザメの卵。結構貴重なものじゃないか。もらっていいのか?」

「ああ、もちろん。最近は物騒で、水の国との貿易も止まりそうなんて噂も聞いたからね。入手できなくなる前に渡しておこうと思ってね。テラーは頼みを聞いちゃくれるが、いつもこっちへ来て解決してくれるのはあんただ。ちょっとした感謝の気持ちだよ。」

「そう言うなら、ありがたく受け取らせてもらうよ。確か、水の国は最近国土内で反乱があったらしいからな。5国の世界とはいうものの、それぞれの国土内の地域ではいろいろないざこざがあるみたいだし、それこそこの国でだって何か起こるかはわからないからな。」


 ユウは卵が入った包みを受け取る。


「そう怖いことを言うなよ。俺たちはここで生きているんだ。何があろうと漁をやめるつもりはないよ。」

「すまない、へんなことを言った。それじゃ、俺はテラーから報酬を受け取りにアガンタに戻るよ。卵おいしくいただかせてもらうよ。」


 俺は住民に感謝を伝え、ピラクを後にした。テラーとはこの後、アガンタにある酒場で合流の予定だ。






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