第12話 ジェリーが死んだ⑫

私は自分の悲しみにとらわれ、大切なことに気がついていなかった。

そう、私はジェリーを失ったと同時に娘の声も失っていたのである。


あんなに元気におしゃべりしていたのに、今はすぐそばに行って耳に手を当てないと娘が何を言っているのかわからない。こんな大事なことに今まで気がつかなかったなんて、親失格である。頭を殴られたような気がした。


どうすれば娘の声を取り戻すことができるのだろう?昔、自分が声を出せなくなった時、どうして良いかわからず放置していて、ずいぶん直すのに時間がかかった。もっと早く声を取り戻すことはできないものか?私はジェリーの事務的な後始末もしながら調べ始めた。


位牌に何も感じなくなっても四十九日までは毎朝、ジェリーの遺影と位牌に新しい水とご飯にオヤツ、花とろうそくと線香を供えて読経をした。

ジェリー、お姉ちゃんの声、どっか行っちゃった。どうしたらいい?

心の中でそっとジェリーに聞いてみた。


そんな日が続いたある日、娘が嬉しそうに言った。

昨日、悲しんでたら夢でジェリーが初めて出てきてくれたよ。

その日から何日間か毎日ジェリーが夢の中で娘を励ましてくれたのだという。私のところには全然出てきてくれないジェリー。ジェリー、冷たいな。


ジェリーが夢に出てきてくれないものかと思いながらジェリーの保険金の請求のため、お世話になっていた動物病院に足を運んだ。

そして、ジェリーの思い出話を先生としていた時、ふと娘がペットロスで声が出なくなった話をした。すると先生はこう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る