第11話 ジェリーが死んだ⑪

私は位牌を見た。

どうして?ジェリー!

どこ行った?まさか…

位牌に今まで感じていたジェリーの存在がなぜだか全く感じられない。


さりげなく家族が大好きだったジェリー。今日家族そろってジェリーに会いに行ったから納得できたの?もう成仏してしまったの?

たしかに成仏してねとは言ったけど、こんなに早く?私は見捨てられた?


こんなにショックを受けているけれど霊園に行く前までは位牌しか目に入らなかったのが今は位牌を見てもなぜか心は一ミリも動かない。

本当に不思議。心はジェリーが天国への虹の橋を渡ったのだと知っていたようだ。


私はジェリーに言った。

成仏したんだね。これからはいつでも遊びに帰っておいで。ジェリーの家族は私たち。ここはジェリーの家なんだよ。今までもこれからも大好きだよ。


私は位牌に感じていたジェリーの気配がなくなってしまった、成仏したんだろうと娘に話した。娘はキッと私を睨みつけた。

四十九日まではジェリーはウチにいるんだよ!変なこと言わないで!

娘は暗い顔をして音を立ててドアを閉めた。


娘とジェリーは普段、仲良しとは言えなかったと思う。でも、娘が悲しい時、辛い時、いつもジェリーは自分から娘の隣に行き、前足でトントンと娘の腕や足を叩き、娘を呼んだ。

それを合図に娘はジェリーを抱く。普段は嫌そうに抱っこされていても、そういう時はおとなしく抱かれ、ペロペロと娘の顔をなめる。娘にとってジェリーは究極の癒しであった。


悲しんでいる娘にひどいことを言ったものだと反省をした。少し落ち着いて冷静になった時、私は気がついてしまった。

私はジェリーだけを失ったのではないということに。



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