第9話 ジェリーが死んだ⑨
最寄り駅まで霊園のバスに送ってもらった。
もう昼過ぎ。駅ビルの中のうどん屋で娘とお昼を済ます。いつもはおしゃべりの娘も今日は言葉が少ない。さっさとお昼を済まして帰宅しよう。家が好きだったジェリーを早く連れて帰りたい。
ジェリーは保護犬だったせいか、人間をどこか信じていなかったのだと思う。いつもカットに行くお店のペットホテルに親戚の用事で1週間と長めに預けた時、引き取りに行くと見ず知らずの他人のような顔をされた。
あなた、誰ですか?
きっとまた捨てられたと思ったのだろう。
だから病気が進行して入院しますか?と聞かれた時、それで完治するならまだしもそうでないなら家でできるだけのことをしたいと家で過ごせるようにした。
もう捨てられることはないんだよ。それだけは絶対に伝えたかった。
家に着く前にろうそく立て、お供え用の食器、花を買う。加えて、元気な時に食べていたご飯と大好きだったオヤツを何種類か買う。家に着き、ジェリーの寝ていたビニールプールのあたりに折り畳み椅子を出し、綺麗なお盆に白木の位牌、読経の時に遺影として使った写真、お花と水、ご飯とオヤツを供えた。ろうそくに火を灯し、線香にも火をつけた。
清浄な香りが漂う中、手を合わせた。ジェリーの写真を見ているだけで涙が込み上げてくる。白木の位牌にジェリーの魂が宿っているのだと思うと思わず位牌の上部をジェリーの頭を撫でるように何度も撫でてしまう。位牌のあたりに元気な姿のジェリーが座ってこちらを見ているような気がする。
声を詰まらせながら般若心経を読んだ後、たまらず白木の位牌を抱きしめた。
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