第8話 ジェリーが死んだ⑧
スタッフの言葉に恐る恐るジェリーの頭を手に取った。触って砕けてしまうのではないかと心配したがそんなことはなかった。
ジェリー、可愛いアップルヘッドをまた触らせてくれてありがとう。私は生前と同じように頭を撫でた。
今まで骨を触るなんてそんな気持ちの悪いこと考えたこともなかった。ところが不思議なものでジェリーの骨はこんなにも愛おしい。
そういえばジェリーが白内障になり片目が白濁してしまった時、かわいそうと思うだけでジェリーがかわいいという気持ちに全く変わりはなかった。以前、動物病院でよその犬の白濁した目を見た時、気持ち悪いとしか思えなかったのに。
死ぬ前、ジェリーは認知症になりクルクルとまわりつづけた。後ろに下がることが出来なくなり、物の隙間に頭を突っ込んでは助けてとよく鳴いていた。そこで子供用のビニールプールを買い、その中でジェリーを飼った。
以前、認知症になった犬の話を聞いた時はよくそんな犬を飼うなあと思っていた。
しかしジェリーがそうなると、どうすればジェリーが安全に心安らかに過ごせるかといろいろ調べ、ああでもない、こうでもないとトライアンドエラーの日々だった。飼い主なんてそんなものなんだろう。苦笑いである。
私はジェリーにありがとうと心の中で語りかけ、気をつけながら骨壷にジェリーの頭蓋骨を収めた。残りの小さな骨を骨壷に収めてもらい、フタをした。
これから骨を共同墓地に埋葬するという。ジェリーの名が書かれた白木の位牌を胸に抱き、スタッフについてすぐ近くの共同墓地に向かう。骨を入れる入り口の前で骨壷から骨を移していく。
最後にジェリーの頭蓋骨を手に取った。かわいいジェリー。骨になってもまだかわいいんだから。最後に以前のように頭を撫でた。これで本当に最後。
ありがとうジェリー。これからも大好き。
私と娘は鼻をすすりながら、ゆっくりとジェリーを埋葬した。
白木の位牌になったジェリーを大切に持って帰宅することになった。
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