第25話

僕が、このサーシャルランドで、エルフィーとして、過ごして結構な日にちが経過した。

結構な日数が経過して、思う事が出来た。

それは……この元の体のエルフィーの両親の事である。気がついたら、シュミッツ平原にいて、この体になった訳だけど……冒険者として、アリサさんと一緒に活動をしていたとしたら……天涯孤独なのか?って思えてくる。

誰も両親の事、言って来ないし……多分、一人なんだろう……と思っていた。

そんなある日、シュガーレストの店長、アニーさんが、こんな事を言って来た。


「エフィー、出かけるわよ」


「出かけるって、何所にですか?」


「グランド王国よ」


「グランド王国にですか? あ、じゃあ……依頼を受けに行くんですね?」


「いいえ、違うわ? エフィー……実はね? 今日は……聖誕祭なのよ」


「聖誕祭?」


「ええ、今日はグランド王国で、聖誕祭が開かれるわ、で、せっかくだから私達も行こうと思ったのよ、ね?そうしましょう」


アニーさんが、そう言って来る。

グランド王国の聖誕祭ね……と言う事は、お祭りって事らしいし、ちょっと興味があるかも……と思ったので


「はい、そうします」


「じゃあ、行くわよ? 格好はそうね……このまま行きましょうか?」


「このままですか?」


「ええ、何か言って来たら、このお店の宣伝をしましょう、そしたらお客を増えるかも知れないしね? さ、お店を閉めて、行きましょうか」


アニーさんが、そう言うので僕は、シュガーレストのお店を閉店させて、アニーさんと、グランド王国に出かける事にした。

アニーさんに「転送魔法で行くんですか?」と聞いてみた所


「そうね……歩いて行きましょう、魔法で行く事もないしね」


そう言ったので、そのままの格好で、移動する事になり、でも……エプロン姿で、出歩くとか、ちょっと変わってるよなあ……と、思いながら、シュミッツ平原を移動する事にした。

移動中、魔物が現れるのか? と思ったが、そんな事は全くおきず、何事もなく、グランド王国に辿り着く。グランド王国の門番の二人に


「お、おい、その格好で来たのか?」

と、驚かれてしまった。まあ、そうだよな……って思う。服装は、僕もアニーさんも、はっきり言って、エプロンドレス姿なので、この格好で町の外に出歩くとか、かなり変わってるんじゃないかな?って感じだと思う。

ちなみに元の素材がいいから、僕もアニーさんも、見た目はかなりの美少女風に見えるので、サーシャルランドの街中を移動中、やたら男の視線を感じたりもしていた。


「ええ、そうよ? 何か問題でも?」


「いや……よく無事で来れたな?って思う……」


「どう? 似合っているでしょ?」


「……ま、まあな」

門番の二人が、顔を赤らめていた。

まあ、アニーさん……見た目、かなり美人だから、解る気がする。


「でしょ? じゃあ、中に入っていいわよね?」


「……よし、許可する、くれぐれも問題を起こすなよ」

と言って、中に入れてくれた。グランド王国の中に入ると、結構沢山の人がいて、とてもにぎわっていた。今日は、グランド王国の聖誕祭らしいので、こんなに賑わっているのか?って思えてくる。


「とりあえず……あそこに行ってみましょうか」

と、そう言って指差したのは、お城だった。

見た目……西洋風のお城で、結構大きく見えたりしていた。と言うか……中に入って大丈夫なのか?って思うんだけど?


「アニーさん、お城の中に入って、大丈夫なのですか?」


「この格好なら、大丈夫だと思うわよ? 一応、これでも正装だしね」

確かに従業員の服なので、正装と言われれば、正装なんだけど……でも、普通……この様な格好で、お城に入れそうに無いんだけど? 本当に大丈夫なのか?って感じがする。

結果、行って見たら、すんなりと怪しまれる事なく、入れました。

入った後、アニーさんが「っふ、ちょろいわね」とか言っていた。

いや、そんな事言っちゃ駄目だと思います、アニーさん……そんな訳で、お城の中に入って、まず驚いたのが、かなりの豪華さだった。

地面に赤絨毯は敷いてあるし、なんか額縁や置物とか飾ってあるし、これ、結構値打ち物なのか?って感じがする。

そんなお城の中を歩いていき、大広間と言う部屋を見つけたので、その中に入ってみる事にした。中に入ってみると、タキシードを来た男達、綺麗なドレスを着た女性達がいて、賑わっている。テーブルには、色々な料理があって、結構美味しそうに見えた。


「エフィー? ここから、私は別行動を取るわ、エフィーも好きに行動するといいわよ」


そう言って、アニーさんは、人ごみの中に入って行き、僕から、全く見えなくなってしまった。別行動と言われても……どうすればいいんだ?って感じなんだけど……

とりあえず、食べ物が美味しそうなので、食べ物を頂く事にした。色々な料理がおかれてあり、魚料理や、肉料理、あと僕がいた世界でよく目にしていた、うどんみたいな麺料理があって、その麺料理を頂いてみると、思いっきり味がらーめんみたいだった。

これ作った奴、凄くないか?って思う。

まさか、この異世界で、らーめん紛いな物を食べられるとは、思わなかったし……

是非作り方とこの材料を教えてもらいたい所だが、誰が料理人なのか? 全く解らなかった。

ま……旨いから、お腹いっぱいになるまで、食べる事にするか……と決めて

お腹いっぱいになるまで、食べていると……


「あ……もしかして……エルフィー嬢ですか?」

僕に声をかけて来たのは、見た事のないおじさんだった。貴族が着るような服を着ていて、髭がよく似合っていて、とてもダンディーなおじさんだった。


「はい?」


「えっと……人違いかな……あの、私です、二年ぐらい前にお会いした、クリフ・シャルダンですよ」


そう言われてもな……全く思い出せないんだけど……二年前?と言う事は……この元の持ち主の、エルフィーが過去にあった人物なのかな……?と思ったので、僕は、このクリフって人に、情報を聞きだす事にした。


「はい、確かに私はエルフィーと申します、でも……私、記憶をほとんど失ってしまったんです、過去に会った人なんか、全く覚えておりません、で……貴方は、私の事をどれくらい知っているんですか?」


「……そうでしたか……これは失礼しました、私は貴方の父上とはお知り合いでしてね、記憶を無くされたと言う事は、家族の事も思い出せないのですか?」


「……はい、そう言う事になります」


「そうですか、じゃあ、私が知っている限り、教えますね? 貴方の本当の名前は、エルフィー・スカーレット、スカーレット家のご息女で、確か……家はここから随分と離れた国、シュド王国で暮らしておりましたよ? 思い出せませんか?」


ご息女……と言う事は……僕、貴族のお嬢様だったの!?何があって、冒険者なんかやっていたんだ?って気になるし、それに、シュド王国……全く聞いた事のない国だった。

まあ、何所にあるか全く解らないしね?


「えっと……やっぱり、思い出せないです」


「そうですか……あ、でしたら私がエルフィー嬢の両親に、連絡を取りましょうか?」


そう言われて、ちょっと考えてみる。

今更、このエルフィーの両親会っても、記憶を失ったフリをしなきゃいけないので、なんか……面倒臭そうだった。


「い、いえ、結構です、私は今のままで、十分やっていけてますし、連絡する必要がないです、あの……私の事を教えてくれて、ありがとうございます」


「そうですか……でも、一度、両親に会われた方がいいですよ?」


「そうですね……一度、行ってみる事にします」

そう話していると、アニーさんが俺の所に戻ってきた。


「ふー、堪能したわ……エフィーは、どうだった?」


「とりあえず……料理は、美味しかったです」


「そっか、じゃあ……そろそろ帰りましょうか? ずっといるのもね? ところで……その人は?」


「あ、クリフさんです、私の事を知っていたようで、声をかけて来たんです」


「ほうほう……あ、私はアニスって言います、サーシャルランドで、お菓子屋さん、シュガーレストを経営していますから、もし興味があれば立ち寄って下さいね?」


「そうですか、これはご丁寧にどうもありがとうございます、帰られるようですし、ここでお別れですね? それでは、また、どこかで会えたらです、では」


そう言って、クリフさんと別れて、僕とアニーさんは、サーシャルランドに戻る事にした。

戻る途中、僕はアニーさんに


「アニーさん、シュド王国って知っていますか?」


「シュド王国? そうね……ここからかなり離れた場所にある国よ、その国がどうかしたの?」


「何でも、あのクリフさんが言うには、僕の両親がそこにいる見たいなんです」


「そう……でも、今のエフィーとしては会いに行っても、しょうがないんでしょ?」


「……はい、そうですね、今は僕がエフィーですし」


「でもさ……」


「……はい?」

「リグルに求婚されてるんだしさ?、結婚する事になったら、一度は報告しに行かないとよね~? ね? エフィー」


「……そう言われても……」


「ま、この話はおいといて、とりあえず、戻りましょうか」


「……そうですね」

とりあえず……解った事は、エルフィーの本名は、エルフィー・スカーレットと言う事、年齢は不明だが、大体十代ぐらい?

元冒険者で現、シュガーレスト店員で、両親? がシュド王国にいると言う事が解ったのでした。両親ね……

どんな人達なんだろう……

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