第24話

僕が、この異世界に来て、二週間ぐらい経過しました。元の体に戻ると言う事が全く解らないので、このままエルフィーとして、過ごしていくのかな……と、思ってしまっていた。

それにこの自分の体、エルフィーとして過ごして行くうちに、別にこのままでもいっか……と言う気持ちも、持ってしまっているのも事実だった。

でも……嫌だな……と思う事はと言うと


「今日も、来ましたよ」


いつものように、サーシャルランドにあるお菓子屋さん「シュガーレスト」で、従業員として働いているとお店にやって来たのは……


「またですか……いらっしゃいませ、リグルさん」


そう……前に僕に、「結婚を前提に付き合って下さい」と告白してきた、冒険者の、リグルだった。リグルは、ここの所、このお店に毎日来てるって感じがする。と言うか……ぶっちゃけて言うと、僕に会いに来てる感じがするかもなあ……


「あ、また来たのね? リグル」


「はい、あの店長さん、エフィーさんを誘って、デートしたいんですけど? OKを貰えないでしょうか?」


リグルさんが、そんな事を言ってきた。

僕は、別にデートなんかしたくなかったので、アニスさんに


「アニーさん……僕、行きたくありませんので……」

と言うと


「そう? たまにはいいんじゃないの?」


「でも、お店もありますし」


「今の時間帯だと、お客さん少ないから、大丈夫よ?」


「リグルさんと出かけるのなら、ここで店番をしてる方がいいです」


「あの……俺と一緒にお出かけしたくないって事ですか?」


「はっきり言って、そうですね」


「リグル……貴方、相当嫌われてるわね~」


「う……でも俺! 諦めませんから! また来ます!」


そう言って、リグルさんは、お店の外に出て行った。


「あらら、ねえ? エフィー」


「はい?」


「そんなにも、リグルの事、嫌いなの? あの子、結構いい子よ?」 確かに、見た目は爽やかで、イケメンで、冒険者だから結構強そうだった。でも、まだ男と付き合うとか、考えられないし……それに……あの笑顔、何か胡散臭く感じるしね?しかも、思いっきり求愛してくるから、本当に参ってしまう。


「確かにいい人そうなのですが……今は、誰とも付き合いたいとは思っていませんので」


「そう? でも、そう言ってると、誰かに取られちゃうわよ?」


「そうなったら、それでいいかもって感じですね、僕が気にする事では無いと思います」


「そう……ま、この話はここまでにしときましょう? そうね……お客もいないみたいだし、お店を閉めて、一緒に出かけましょうか?」


「あ、はい、分かりました」


そう言った後、自分の部屋に戻り、服を脱いで、下着姿になる。もう自分の体を見ても、すっかり見慣れてしまったので、何にも感じなかった。どれを着ようかな……と悩み、動きやすい格好に着替える事にした。

この時代の服装は、薄手のTシャツみたいなのが、存在してないので、厚手の服を着て、その上にベストみたいな物を着込み、下には、ロングスカートにする事にした。武器は必要なさそうなので、装備する事はなく、着替えが終わり、自分の部屋から出ると、アニーさんも、着替え終わっていた。西部劇に出てきそうな、長めのテンガロハットをかぶっていて、結構似合っている。


「さ、出かけましょう? ついでに何かいい物があったら、買うわよ」


「分かりました」


店を出た後、しっかりと施錠してから、サーシャルランドの町の中を、移動する事にした。

サーシャルランドの町は、商人の町らしいので、商人の格好をした人が、沢山いて、お店も沢山あって、結構にぎわっている。今は冬日なので、グランド王国の人達も、こっちに来ているらしく、結構沢山の人がいる感じがした。

町の中を歩いていると……、あきらかに人間じゃない、獣姿の人型、所謂……獣人?って感じの者も見かけて、なんか強そうだなあ……と、思ってしまった。

町の中を歩き回っていると、アニーさんが


「とりあえず……、何所に行ってみる?」


僕に聞いてきたので、僕はと言うと


「そうですね……まだ見た所のない場所に行ってみたいです」


僕がそう言うと、アニーさんが


「そうね……じゃあ、こっちの方角かしら? ちょっと行ってみましょう」


そう言ったので、黙ってついていく事にした。

さっきまでの町並みとは違い、建物があんまりなく、何か……怪しい雰囲気の店もあったりして、こう言う場所をスラム街とか言うんじゃないか?って感じの雰囲気だった。名前も付いているらしく「裏通り」と看板に書かれてあるので、ここは、サーシャルランドの裏通り地区なんだと思われる。その裏通り地区を歩いていると、不思議な感じのお店?を発見した。

たった一人が座っていて、その人物は、全身にフードを被っていて、素顔が全く見えず、小さいテーブルの上に、サッカーボールぐらいの大きな水晶玉を置いてあり、この感じ……、もしかして……占い師?って感じの人物だった。

その人物が、僕達に


「そこの二人……ちょっと占いはどうかい? 今ならベニーはなしで、占ってあげるよ」


と、声が女性独特の声だったので、多分、女性なんだと思われる。


「占いだって、どうする? エフィー」


「そうですね……ちょっと気になるので、占ってもらいましょう?」


「そうね、どうせ無料なんだし、たまにはいいかもね、じゃあ、占いなさい」


「では、手を水晶玉に翳しなさい、一人一人順番にお願いするよ」

そう言ったので、最初にアニーさんが、水晶玉に手を翳す。すると、占い師が


「ふむ……近い将来素敵な出会いがあって、結婚すると出ているぞ」


「あ、そうなの? 一体誰なのかしらねー」


「よかったですね、じゃあ次は、僕の番ですね」

そう言って、手を水晶玉に翳してみる。

すると、占い師が


「む……何者だ? 気が全く違うんだが……別の所から来たのか?」

そう言われて驚いてしまった。別の所って……それって、僕がこの体に乗り移ったから、そう感じたって事なのかな? それが解るなんて、凄いんじゃないか?って思う。

僕は気になったので、占い師に


「あの、元には戻れますか?」

と、聞いてみると


「ふむ…………元に戻ると言うのが、どんな風なのかが解らないが、はっきりと無理と出ているぞ」


「そうですか……」

戻れないと言う事は、じゃあ……この姿でずっと過ごして行くと言う事なのかな……そんな事を考えていると


「まあ、この先に、素敵な出会いがあり、幸せに過ごすと出ているから、気を落とさぬように」


幸せに過ごすね……それって今あっている人物とは、幸せになれないって事だから、僕に結婚を申し込んでいるリグルは、結婚相手には相応しくないって事なのか……


「とりあえず……エフィーもよかったんじゃないかしら?」


「……そうですね、ありがとうございます」


「うむ、また何か聞きたい事があれば、ここに来るといい、ではな」


すると、占い師は何か言葉を発した後、地面に魔方陣が出現して、占い師が、ぱっと消滅したのだった。


「転送魔法……と言う事は、あの占い師、相当な実力の魔術師みたいね」


「そうなんですか?」


「ええ……転送魔法は、上級魔法だからね、普通に練習したって、なかなか覚える事が難しい呪文なのよ……それよりエフィー? 元に戻りたいと言っていたけど、どう言う事なの?」

そう聞いてきたので、ここは正直に話すか? と考えて、正直に僕の事をアニーさんに話す事にした。それを聞いた後、アニーさんが


「そう、だから……記憶喪失のふりをしていたのね? 服に穴が開いていたのでしょ? と言う事は……その本来の持ち主は、一度死んで、貴方がその体に乗り移ったって事みたいね?」


「はい、そういう感じです」


「そっか……まあ私はいつものように、貴方の事をエフィーとして扱うけど、それでいいかしら? 今は貴方がエフィーなのだしね?」


「はい、そうしてくれると嬉しいです」


「さ、もうここには用がないし、店に戻りましょうか?」

「そうですね、判りました」


そう言って、シュガーレストに戻る事に決めて、今日の一日が、終わったのでした。

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