第20話
僕と店長のアニーさんは、シュミッツ平原の東にある、古ぼけた謎の神殿の中に入り、迫り来るトラップを回避して、地下への階段を見つけたのだった。うん、この先、一体何があるんだ?まあ、行って見なければ分からないし……少なくとも、僕は、そう思っていたのでした。
「エフィー、ここから地下に潜る訳だけど……どう思う?」
「どう思うって、何がです?」
「何があるか解らないし、用心に越した事はないでしょ?」
「まあ、そうですよね……とりあえず、慎重に行って見ましょうよ」
「ええ」
そう言いながら、地下へと降りていく。
階段は、そんなに長くなく、二十段ぐらいだった。階段を抜けると、そこに広がっていたのは、大きな空洞の部屋だった。壁をちょっと叩いてみると、あまり音がしなく、結構頑丈な作りになっているみたいだった。
「とりあえず、何もないみたいね……あるのは……分かれ道ね」
「そうみたいですね……」
目の前に現れたのは、右と左に分かれた、二つの通路だった。
「アニーさん、どっちに行ってみます?」
「そうね……エフィーは、どっちに行ってみる?」
「う~ん……とりあえず、右の道からですかね?」
「そう……じゃあ、そっちの道から行って見ましょうか?」
「はい」
そう決めて、とりあえず右の道に進んでみる事にした。右の道を進んで行くと、小部屋に繋がっていて、部屋の中心に宝箱が一個置いてあった。
「宝箱が一個だけみたいですね……」
「ええ、でもこの宝箱……かなり怪しいわね」
「僕も、そう思います、一つだけの宝箱……物凄く怪しいですよ」
何もなに小部屋に、ぽつんとある宝箱……これは、罠が仕掛けられてますよ~って感じ、見え見えじゃないか?って感じだった。
「でも、開けてみないと、何が入っているか、解らないわね……」
「ええ……」
「じゃあ、とりあえず……開けてみるわよ? 罠が発動したら、それがどんな罠か見極めて、解決していきましょう?」
「はい、解りました」
とりあえず僕は、化け物が現れるかも知れないので、エミューの剣を構える事にした。
「じゃあ、開けるわ」
そう言って、アニーさんが、宝箱を開けた。
すると……地響きが鳴り出して、パカっと地面が割れて、穴が開いて
「あっ……!!」
あっという間に、アニーさんが、吸い込まれてしまって、穴が閉じられてしまった。
「あ……アニーさん!」
僕は、そう叫んで、地面を叩く。
しかし、地面が全くびくともしなく、何回か叫んでみても、返事が全く聞こえてこなかった。
「いきなり、一人ぼっち……アニーさん、無事だといいけど……」
とりあえず……どうしようか……と考えて、無闇に宝箱は開けない事にした。僕が開けると、また地面がパカっと開く可能性があるしなあ……とにかく、来た道を引き返して、アニーさんの捜索をする事にした。来た道を引き返し、さっきの大部屋に辿り着く。
アニーさんの出してくれた、魔法、ライトボールのおかげで、真っ暗闇になると言う事はなく、とりあえず安心した。
さて……ここからどうするか……だけど、右の道は行ったから、今度は、左の道に行ってみる事にした。左の道に進んで行くと、こっちも右の道と同じく、小部屋に繋がっていて、右の小部屋とは違い、こっちは階段だけがあり、辺りを調べてみても、何も変わった所はなかったので、そのまま下に下りて行き、地下三階へと辿り着く。もしかしたら、アニーさんが何所かにいるかも知れなかったので「アニーさん!」と叫びながら、捜索していると、シャーーー!!と、何か奇怪な声が聞こえたと思ったら、僕に向かって、何かが襲い掛かってきた。
「うわ!」
襲い掛かってきたのは、真っ黒な姿に、牙が生えていて、目が三つあり、蝙蝠みたいな姿の化け物が、数十匹現れて、僕に向かって、今にも噛み付かんとする勢いで、襲い掛かってきたので、驚いてしまった。僕は、咄嗟に、エミューの剣で切り付けていき、化け物を倒していく。
だけど、数が多く、牙が体を突き刺して、痛みを感じてしまい
「っつ……痛……」
何とか全て、切り裂くは出来たけど、右腕と顔、左足に傷が出来てしまった。
「もしかして……毒とかないよなあ……ないと嬉しいんだけど……」
全く未知の生物だったので、何か状態以上の心配があったけど、数十分経過しても、状態異常には、ならなかったので、とりあえず安心した。地下三階のフロアを移動していき、見つけた物と言えば、錆びた剣と杖、あと少量ながらの宝石だった。
「とりあえず、持って帰る事にしようかな……?」
まだ使えるかも知れないし、売れるかも知れなかったので、その拾った物を道具入れに入れて、アニーさんの捜索をしていると
「あ、アニーさん!」
アニーさんを見つけて、近寄ってみると、アニーさんの衣装が穴だらけだった。
「な、何かあったんですか……?」
「あ、エフィー……ええ……実はあの穴にあったのって、針の山でね? 何とか回避行動をとったんだけど、少し刺さっちゃったの……で、傷は魔法で直したのよ……それより、エフィー、怪我してるみたいね?」
「ええ……さっき、化け物に襲われて、退治してたら、傷をおっちゃいまして」
「じゃあ、治してあげるわ、じっとしてて?」
そう言ってアニーさんは、杖を振るって、呪文らしき言葉を言った。
「癒しの風により、傷を癒せ……ヒーラルレイン」
そう言った瞬間、傷が治っていき、完全に完治したみたいだった。
「す、すごいですね……その魔法」
「まあ、この魔法は、結構上級な魔法よ? エフィーには、出来ないかもね?」
もし出来たら、覚えてみたいかも……その魔法、でも……僕の今の体じゃ、魔力と言うか、魔法のやり方とか全く解らなかったので、不可能に近かった。
「とりあえず……エフィー、このフロアを見回って、何か見つけた?」
「あ、剣と杖と、宝石を見つけました、これです」
そう言って僕は、アニーさんに見つけた物を見せる。
「うん……剣と杖は、錆びてるけど、鍛え直したら使えそうね……宝石だけど、これは売れる見込みあるから、持って帰りましょう」
「解りました」
「とりあえず……このフロアには、魔導書「魅惑の庭園」はないみたいね? で、さっき、地下へ続く階段を見つけたから、降りるわよ」
「解りました」
僕達は神殿の中を進む事にした。長時間も中に入っているからか、さすがに疲れてきたって感じがしてきた。
地下へ続く階段を下っていき、地下四階に辿り着く。地下四階のフロアは、気温が低いからか、結構寒く感じた。
「なんか、寒いわね……」
「ええ……上の階と違って、若干気温が低く感じます」
「そうね……でも、凍えるような寒さではないし、このまま先に進みましょう」
「解りました」
地下四階のフロアを探索する事にした。
アニーさんの魔法で、明るさは大丈夫だったので、部屋を見渡してみると、全くと言っていいほど、何もなく、道だけが続いていて、その道を辿って行くと……目の前に扉が現れて、その扉の前に、二体の石像があった。
「扉の前にある石像……これって」
「アニーさん?」
アニーさんが、そうつぶやいた後、石像を調べて、調べ終わった後、こう言って来た。
「やっぱり……エフィー、この石像、見てみて」
アニーさんに言われたとおりに、石像を見てみると、解った事があった。
それは……表情が驚愕の表情をしているのである。まるで……何かに驚いて、そのまま石像化したような……そんな感じの表情だった。
「多分、この扉を開けようとして、開けた瞬間に罠が発動して、この二人、石像になったみたいね?」
「あ、そうですか……アニーさん、魔法で石像を直せます?」
「……そうね……この石像、結構な時間が経過してるんじゃないかしら? ほら」
そう言って、軽く叩いて見ると、叩いた所が崩れて、片腕が地面に落ちて、ぼろぼろになっていた。
「こうなってしまっては、石像を直した途端、死んでる可能性が大ね」
「そうですか……あ、じゃあ……アニーさんは、蘇生術って出来るんですか?」
「蘇生術ねえ……私は、覚えてないわね、つまり……死んだらおしまいって訳、まあ確かに……死霊術、ネクロマンサーはいるけど、あれは死霊術だから、生き返らせたら、ゾンビになってしまうわ、私は死霊術は覚えてないから、蘇生は出来ないわね」
と言う事は……ゲームとかの「おお、死んでしまうと言うのは何事か、生き返らせてやろう」と言う、教会に行って、金を払って生き返らせると言うのは、出来ない事なのか……あ、じゃあ……石化したら、ゲームセットって感じじゃないか!? 石像になってしまっては、ゲームオーバーっって事みたい……うわ、嫌だなあ!
「ど、どうします?」
「そうね……扉を開けたら、石化するんだから……その石化させる物を破壊しないと、先に進めない感じね……じゃあ、さっき呼び出したサンド・ゴーレムを召喚してみて、それを囮に使って、やるしかないわね」
「それしかなさそうですね……」
「ええ、じゃあ行くわよ? サンド・ゴーレム!」
アニーさんがそう言うと、地面に魔方陣が現れて、地下一階で使用した、同じタイプのサンド・ゴーレムが現れた。
「サンドゴーレム、扉を開けなさい、私達は、石像の後ろに隠れるわよ」
「わ、解りました」
石化されたくなかったので、僕とアニーさんは、石像の後ろに回り込み、体が隠れるようにした。隠れた後、アニーさんが「お願いよ、ゴーレム」と言って、ゴーレムが扉を開けた瞬間、扉の奥に、両目が赤く光っている犬の石像があって、その石像から、赤色の光線が発射されて、サンド・ゴーレムに命中して、砂のゴーレムが石化を始めた。
「今よ! これは効くかしら、フレア・バーン!」
アニーさんが魔法を発動、杖から火の玉が現れて、犬の石像に命中。犬の石像は、粉々に破壊されて、赤く光っていた目が消滅した。
それを確認した後、僕とアニーさんは、石化しているサンド・ゴーレムを置いて、扉の奥に行ってみる。扉の奥に入っても、石化する事はなく、どうやら……トラップを回避する事が出来たみたいだった。
「うん、上手く行ったわね……」
「はい……あ、棺がありますよ?」
「あ、本当ね? 他には何が……うん……何もないようね……じゃあ、この棺を開けてみましょう?」
「はい」
僕とアニーさんは、棺を開けてみる。
中に入っていたのは、一体の骸骨と、その手に握られているのは、一冊の本だった。
「本ね……もしかして、これが……?」
そう言ってアニーさんが、骨をどかして本を取ってみる。取っても、罠が発動しなく、取っても大丈夫な感じだった。
「………………」
アニーさんが、本をじ~っと見ていて、こう言った。
「駄目ね、全く読めないわ、エフィー、貴方は読める?」
「え? あ、貸してください」
「ええ」
僕はアニーさんから、本を受け取って、読んでみる。文字が見た事があるな……って思い、よく見てみると、この文字って…………僕がこの体に入る前に使っていた文字じゃないか!?
しかも、タイトルが「魅惑の庭園」って書かれているし
「エフィー? 読める?」
「あ……はい、読めます、タイトルが「魅惑の庭園」って書かれてありますし、これが魔導書だと思います」
「じゃあ、これで依頼完了ね? は~……長かったわね……」
「そうですね……」
それにしても……何で、僕が元いた世界で日常的に使われていた文字が使われてるんだろ? この本……うん、かなり謎だ……とりあえず……中身を確認してみようかな……?
そう思って、中身を見ようとすると
「エフィー、すぐに戻るわよ」
「あ、はい、あの……一瞬でダンジョンから出る魔法ってあるんですか?」
「転送術ね? あるにあるけど、駄目なのよ」
「どうしてです?」
「さっきの召喚術や魔法を使ってね?、魔力不足……つまり、もう魔法が使えないって事ね、だから来た道を地道に戻るしかないわ、この明りだって、魔力が完全に切れたら、消滅しちゃうから、真っ暗闇になるわよ」
「あ、じゃあ……急いで、戻らないとですね!」
「ええ、戻るわよ!」
そう言って、僕とアニーさんは、来た道を引き返す事にした。道順は何とか覚えていたので、あとはトラップをどう切り抜けるか? だった。地下一階の刃のトラップが一番厄介で、開けた瞬間に、罠が発動しちゃうので、どうするか考えて、地下四階にあった石像を使う事にした。
重さにして、そんなに重くなく、何なく運べそうだったので、その石像を二つ、扉の前に置いて、扉を開けた時に、罠が発動して、刃が石像に命中、威力が半減されたので、その隙にダッシュで駆け抜けて、階段をあがって、地上に出る事に成功した。
「うん……何とか地上に出られたわね? ちゃんと、魔導書「魅惑の庭園」は持っているわね?」
「はい、ちゃんと、懐に入れときました」
「じゃあ、それをグランド王国のコリンに渡して、依頼を完了しましょう? 私、魔法が使えないから、もし魔物が現れたら、エフィー、貴方だけが頼りだわ」
「わ、解りました」
「じゃあ、行くわよ」
「はい」
僕とアニーさんは、グランド王国に行く事にした。道中、魔物、スラームが現れたが、弱い魔物だったので、僕のエミューの剣で退治して、これ以上魔物が現れないうちに、進んでいき、グランド王国に辿り着いた頃には、日が暮れて、夜になっていた。
門番の二人に「お、無事に戻ってきたか、よかったな」と言われて、中に入れてもらい、早速、コリンさんのいる冒険者ギルドに向かい、そこで、魔導書「魅惑の庭園」を、コリンさんに渡して、3000ベニーの報酬を受け取った。報酬を受け取った後、アニーさんが
「今日は疲れたし、宿屋で一泊してから、サーシャルランドに戻りましょう」
「あ、はい、解りました」
そう言って、僕とアニーさんは、宿屋を探して、そこで一泊する事になった。アニーさんと同じ部屋になって、ちょっと、どきどきしてしまった。まあ……僕も一応今の体、女の子なんだよね……と思いながら、疲れていたのか
凄い眠気が襲ってきたので、そのまま眠り込んでしまい、今日の一日が、終了したのでした。
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