第19話

冒険者ギルドから出た後、僕はアニーさんに


「アニーさん、とりあえず、必要な物をそろえてから、出かけた方がいいんじゃないですか?」

と言うと


「そうね……食料とか必要になりそうだしね? じゃあ、必要な分だけ、買い物をしましょうか」


「はい、そうですね」

こうして、僕とアニーさんは、食料を買い込んで準備をして、依頼、 魔導書「魅惑の庭園」の調査をする事になりました。今、いるグランド王国を出て、シュミッツ平原に行き、そこから確か……東の方角に、神殿があるらしいので、その神殿を目指す事になったんだけど……本当に、その神殿、見つかるのか?って感じがしてきた。僕は、アニーさんがどう思ってるのか、気になったので、聞いてみる事にした。


「アニーさん、神殿って、本当にあると思います?」


「そうね……確かに怪しいわよね……でも、行って見ないと解らないじゃない、それにね……依頼を受けちゃったんだし、きっちりこなさないとね」


「そういうものですか?」


「ええ、あ、どうやら敵みたいよ!」


そう言って、目の前に獣型の生物が現れた。

牙を剥き出しにして、「こいつ旨そうじゃね?」って感じで、僕らの事を、睨んでいる。


「この生物って……もしかして」


「まあ、魔物よ、名前はナイトウルフ、最近現れるようになった魔物ね、倒し方だけど……ここは、私に任せて」


そう言って、アニーさんが杖を取り出して、こう言う。



「雷の力により、悪を滅ぼせ、デインボルト」


そう言った瞬間、杖が発光して、ナイトウルフの足元に魔方陣が出来て、その中に雷が発生し、ナイトウルフに命中、ナイトウルフは一撃で消滅し、魔方陣が消えると、その場に一個の瓶が出現した。


「これって?」


「ドロップアイテム、闇の液体よ、この材料はね? 剣と組み合わせると、刀身が闇属性が付いて、影の攻撃が出来るようになるわ」


「そうなんですか、あ、じゃあ……僕が持っている、このエミューの剣を、強化出来るんですか?」


「ええ、出来るわよ? 今やっていく?」


「はい、やってみます」


「解ったわ、じゃあそのエミューの剣の刀身を、こちらに向けて?」


「あ、はい」


そう言って、僕はエミューの剣を取り出して、アニーさんに向ける。


「じゃ、行くわよ?」


さっき出現した闇の液体を、エミューの剣に振り掛けると、剣の刀身が黒色に変色した。


「うん、ばっちりね、エフィー、一回振ってみて?」


「解りました」


僕はエミューの剣を振ってみる。

すると、刀身から影の塊が出現して、降った方向に伸びていき、5メートルぐらいで影が消滅した。一回放ったからか、刀身がちょっと元の色に戻りかけていた。


「今のが、影の弾ね? これで相手にダメージを与える事が出来るわ、で、使用回数に限りがあるから、使いすぎると、影の弾が撃てなくなって、元の剣に戻るわよ」


「そっか……使用回数に限りがあるんですね?」


「ええ、まあ……またナイトウルフを倒して、アイテム、闇の液体を入手すれば何回も使えるわ」


「解りました、あと何回使えるか、解りませんが、大事にしてみようと思います」


「ええ、じゃあ……神殿を目指して、行きましょう?」

「はい」


そう言って、僕とアニーさんは、東の方角へ進んでいく事にした。その間に現れた魔物は、スライム状の魔物、スラームで、その魔物を剣で倒していって、神殿を目指す事にした。

二時間ぐらい歩いて、辿り着いた場所は、雑草が大きくなり、先がほとんど見えなくなった状態の奥に、古ぼけた建物を発見した。


「アニーさん、もしかして、ここが……」


「ええ、どうやらそうらしいわね?早速、中に入ろうかと言うとこだけど……休憩して、食事をしてから、入りましょうか?」


「あ、そうですね」


僕とアニーさんは、神殿の入り口で、グランド王国で買い込んだ食料を食べる事にした。

味に関しては、そんなに不味くはなく、でも、サーシャルランドの料理と比べると、ちょっと薄味な感じがした。食事が終わった後、神殿の中に入ってみると、中は真っ暗で、全く何も見えなかった。


「何も見えないわね……ここは私の出番ね? 光を照らし出せ、ライト・ボール」


すると、ボール型の光の球体が現れて、神殿内を照らし出す。神殿内で、僕達が見た物とは……


「うわ……凄惨だわね……」


「ほんとですね……」

そこにあったのは、何十人ぐらいはあると思われる、骸骨の山だった。頭が欠けている物、バラバラに砕かれた物、色々あって、一体何があて、こんな風になったのか? 全く謎だった。


「これって……罠にかかったとか、魔物にやられたとか?」


「その可能性は、あるわね? とりあえず……先に進みましょう」


「ええ、そうですね」


とりあえずその骸骨の山を無視する事にして、奥の部屋へと進んでいく事にした。奥の部屋は、一本道になっていて、全く迷う事はなかった。数分歩いて行くと、目の前に扉が現れて、扉は閉まったままになっている。


「一方通行だから、この中に入るしかないのだけれど……」


「あ、アニーさん、何か文字がかかれてありますよ?」


「え? あ、ほんとだ……え~っと」


「アニーさん、読めるんですか?」


「ええ、ちょっと勉強した所の文字だから、読めるわ、読んで見るわね?「この先に行く者、命の保障はしない、神の裁きを受けて、滅ぼされろ」……えらくぶっそうな事、書いてあるわね?」


「ええ……どうします?」


「それでも、行くっきゃないでしょ? でも……開けた途端に罠が発動って、可能性もあるわね?」


「やっぱり、そうですよね?」


「罠があったら、身代わりが必要よね? とりあえず……」

「何かあるんですか?」

「ええ、ちょっと召還術で、身代わりを立てるわ、土の盟約により、我に従え、サンド・ゴーレム」


アニーさんがそう言うと、地面に魔法陣が描かれて、その中心に、砂で出来た、人型の物体が現れた。


「もしかして、これって」


「これはね? 砂を固めて作った魔法生物よ? 名前はサンドゴーレムと言うわ、結構強いわよ? じゃあ、この子に扉を開けさせて、私達は下がっていましょう?」


「わ、解りました」


そう言って、僕とアニーさんは、一本道を戻り、大広間みたいな場所に戻った。そこからアニーさんが「サンドゴーレム、扉を開けなさい!」と命令すると、サンド・ゴーレムが、お辞儀みたいな事をした後、扉に手をかけて、扉を開く。すると、バシュっと音がして、サンド・ゴーレムが大広間に吹っ飛ばされていた。

かなりの速さだったので、これは避けられそうになかった。しかも、中心に巨大なギロチンみたいな刃が突き刺さっていて、もし生身だったら、体が真っ二つになっていたと思うと、結構ぞっとした。じゃあ、この骸骨の山の中に、ギロチンをもろに受けて死んだ者もいるのかも知れないって事なのかも……お、恐ろしいよ……


「やっぱり、一本道だから、何かありそうだわ……と思ったら、あったわね……エフィー、今のうちに先に進むわよ?」


「解りました、あ、でもこのサンド・ゴーレムは、どうするんです?」


「そのままで大丈夫よ、時間が経過すると、勝手に消えるしね? それよりエフィー! 今のうちに、扉の奥に行くわよ! このギロチン、どういう訳か、一度発射された後、また元の場所に戻る仕組みになってるみたいみたいね……サンド・ゴーレムは、時間が経過すると、自然消滅するから、問題はないわ」


「了解しました」

僕とエフィーさんは、ギロチンが元の場所に戻る前に、奥の部屋に進む事にした。

扉の奥に行くと、そこにあったのは、地下へと続く階段があり、その先がやはり光がないので、真っ暗だった。


「うん、この部屋を調べてみても、何もないみたいね……あるのは、地下へと続く階段だけって、感じみたい……」


「そうみたいですね……」

「とりあえず、行きましょう?何があるか、解らないけど」


「はい」

こうして、僕とエフィーさんは、この謎だらけの神殿の地下へと進入する事にしたのでした。

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