第16話

お店での仕事内容もすっかりと慣れてきて、お客も結構入るようになり、このままずっとここで生活してくのもありか……と思い始めていた。ま、元の世界に戻る方法解らないし、それに時間関係がどうなってるかもさっぱりだし、元の男に戻った所で、僕って刺し殺されてるわけだから、戻ったら激痛で即死な状態なんじゃないかなあって感じもするので、元の世界に戻っても、あんまりいい事はなさそうに思えてきた。そう思いながら、お店「シュガーレスト」店員として働いていると、お店に一人の男がやってきた。

恰好は剣士風のスタイルで、茶髪でなかなかのイケメンな感じで、なんか……女子にもてそうな感じの男の人だった。そんな男がこの店に一体何の用なんだろ……と思いながら、とりあえずお客なので「いらっしゃいませ」と言って、笑顔で接客する事にした。

僕がそう言った後、男は僕を見るなり


「えっと、まず貴方の名前は?」

そう聞いてきた。名前聞いてどうすんだ? と思いながら、僕は素直に


「エルフィーですけど……」

僕がそう言うと、男が


「エルフィーさん、俺、冒険者をやってるリグルと言います、ぶっちゃけ一目ぼれしました、俺の妻になって下さい!」

と言ってきた。 は? 妻って……

僕は、驚いて固まってしまい、断ろうとしたら手を握ってきた。


「絶対に幸せにしますから!!」

いや、そんな熱く語られてもな……とりあえず手を離してほしかったので


「あの、手を離してください」

僕がそう言うと


「あ、すみません」


とりあえず離してくれた。


「で、返事を聞かせてもらうと、ありがたいんですが?」


僕に迫ってきたので、僕は答えはもう決まってるので


「すいませんが、お断りします」

そう言うと、リグルと呼ばれた男が


「何故ですか!? 見た目ですか? 見た目は悪くないと思うし、もしかして金ですか? 大丈夫、手持ちは結構持っています!」

豪語してきた。いや……そういう問題じゃないんだけど……とりあえず僕は、再び彼に向って


「もう一回言いますが、ごめんなさい」

と言うと


「もしかして、俺の事嫌いですか?」


なんか、悲しそうに言ってきた。

と言うか、初対面で好きか嫌いかと聞かれてもな……ここは、正直に話す事にした。


「あの、初対面ですし、貴方の事何も知りませんし、いきなりそんな事言われて、はいOkですと言う筈がないですよ」


「じゃあ、俺の事もっと知って下さい、何でも話しますよ」


と言われてもな……別に聞きたい事とかないんだが……そう困っていると、奥の部屋から


「一体、何事よ?」

アニスさんがやってきた。


「あの、僕に告白してきたんです、この人」


「へ~そうなの?」

アニスさんは、リグルの事をジロジロ見た後


「なかなかいい男ね? ねえ?」


「はい? 何でしょうか」


「エルフィーの何所が気に入ったの?」


「そうですね……まず見た目ですね、あとなんか……優しそうに見えたので」


「ほ~……エルフィー、誉められてるわね? 嬉しい?」


「えっと……誉められるのはちょっと嬉しいです」


「だそうよ? じゃあ、エルフィーはOkしたの?」


「いえ、断りました」


「あら、何で?」


「何でって……この人、妻になって下さいって言ってきたんですよ?」


「あら、そうなの?」


「はい、絶対に俺の物にしたいので、ストレートに言ってみました」


「結構正直に話すのね……でも、いきなり妻には早いんじゃない? もうちょっと仲良くなってから言うといいわよ?」


「そうですね……ちょっと焦りすぎました、でも俺、断られてもあきらめませんから、では、また来ます!」


と言って、リグルは店から出て行った。お店から出ていた後、アニスさんが


「エルフィー、どうするの? あの人の妻になっちゃう?」


「……今の所まったく考えてないですよ」


「そう……ま、貴方の気持ちしだいよね? でも彼、また来るわねえ……あの様子だと……」


「ええ、そうですね……」


また来たら、どういう風に対応したらいいんだ?と、そう思ってしまった。

僕の事を好きねえ……今の僕は、見た目は美少女だし、男の人に惚れられると言うのは、解る気がするけど……今は、男の人と付き合うとか全く考えていないしね……でも、いずれ……僕も心変わりとかして、好きな人でも出来るのかな? その場合、男と女……どっちなんだろう……と、そんな事を考えてしまったのでした……

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