第15話

僕が、このエルフィーの体となって、大体一週間ぐらいが経過しました。

女の子の体なので、前は自分の裸体を見て、かなり恥ずかしくなってしまったけれど、自分の体なので、慣れてしまったかな……?って感じになってしまった。そんなある日、僕が働いているお菓子屋さん、「シュガーレスト」の店長のアニスさんが


「エルフィー、知ってる? 今日から始まる事を」


そんな事を言ってきた。

うん、一体何が始まるんだろ? と思い、アニスさんに


「今日から何が始まるんですか?」

そう聞いてみると


「エルフィーは、記憶が戻ってないから初めての経験になるのかしらね……今日からね? 冬日と言う季節になったのよ」


冬日……それは、季節で言うところの冬で間違いはないのだろうか……じゃあ、昨日までの季節は何だったんだろう? と思い


「じゃあ、昨日までは、何と呼ばれていたんですか?」


「昨日までは、夏日と呼ばれていたわ、で、冬日となった今日からね? 隣国のグランド王国の商人達が、このサーシャルランドに集まって来るのよ、今日から店を出している店もあるわよ?」


そういう事なのか……じゃあ冬日となったからこのサーシャルランドも季節は冬らしいので、気温が下がったりするのだろうか?そう考えていると、アニスさんが


「だからね、お菓子もなるべく温かい商品を出そうかな?って思ってるのよ、エルフィー、手伝ってくれない?」


「それは構いませんが……一体何を作るつもりなんです?」


「それはね? スポンジケーキとか、パイとか焼き菓子を中心に作っていこうと思ってるわ、さ、エルフィーも調理場に来て、手伝ってね」


アニスさんがそう言ってきたので、僕も一緒にお菓子作りを手伝う事にした。まあ……実際に男だった頃にお菓子を作った事があるかと聞かれたら、それは全くなく、自炊料理しか出来なかったのを覚えている。お菓子とかは、まったく作っていなかったなあ……僕……

お菓子作りは、アニスさんに教えてもらいながら作る事になったわけでアニスさんに「お菓子はあまり作った事がないので、教えて下さい」と言うと

「じゃあ、作り方を教えるわね?」と、ご丁寧に教えてくれた。

そして……作れるようになったのは、パイみたいな物と、クッキーみたいな物が、作れるようになった。

出来上がった物をアニスさんに味見してもらうと


「うん、なかなかいけるわ、エルフィー、お菓子作りの才能あるんじゃない?」


「そうですか? えっと……ありがとうございます」


「これなら、店に出しても問題はないわね、商品の名前だけど……エルフィー、どういった名前にする?」


そう言われたので、僕はちょっと考えて


「じゃあ、このパイみたいな物は、バナナパイで、こっちの焼き菓子はクッキーって名前にします」


何でパイの名前をバナナパイにしたのかと言うと、見た目が黄色く、味も僕が元いた世界にあった果物、バナナの味にそっくりだったから、単純にその名前をつけたのであった。クッキーは、焼き菓子の見た目がクッキー見たいな姿をしていたので、そのまま名づける事に決めた。


「バナナパイにクッキーね? じゃあ、ネームプレートを付けてっと……うん、これでいいわね……金額はどうする?」


「やっぱり安いほうがいいですかね?」


「そうね……高いより安い方が、興味をもって買ってくれるかもね? でもあまり安すぎるってのも駄目よ?」


そう言われたので、ちょっと考えて、バナナパイを100ベニー、クッキーを50ベニーにしてみると、アニスさんが「うん、手頃な値段じゃないかしら?」と言ってくれた。値段もつけ終わったので、お店のあいているスペースにそのバナナパイとクッキーを置く。配置が終わった後、アニスさんが

「じゃあエルフィー、店を開店させましょうか?」

と言ってきたので


「はい」

と言って、慣れた手つきでエプロンを装着して、店を開ける事にした。もう、この従業員姿もすっかりなれたかも……と思いながら、お客が来るまで待っていると


「こんにちは、おねーさん」

お店にやって来たのは、金髪のロクス君だった。


「いらっしゃいませ」


「なんかいい匂いがするけど……これって新商品?」


ロクス君は、さっき作ったばかりのバナナパイを見てそう言ってきた。


「はい、こちら新商品のバナナパイとなります」

僕が言うと


「そうなんだ!じゃあ興味があるから、一つ頂戴?」


「100ベニーになります」


「はい、100ベニー」

そう言って、僕に1枚の硬貨を渡して、ロクス君は、僕から受け取った後、その場で食べていた。


「うわ、美味しい! これ」


美味しいと言ってくれたので、ここはお礼を言った方がいいかな? と思い


「ありがとうございます」


「これ……流行になるかも……う~ん……」

なんか……ロクス君が考えているので


「どうしました?」

そう聞いてみると


「もし人気になっちゃったら、品切れで食べられなくなるかも……もう一個食べたいけど、今、持ちあわせがないし……ねえ、また僕が来た時、作ってくれる?」

と言ってきたので、ここはどう言った方がいいんだと迷っていると、アニスさんが


「ええ、また作っておいてあげるわね?」

笑顔で、そう言っていた。


「ありがと! じゃあ、僕は行くね!」


そう言って、ロクス君は店から立ち去って、その後に


「よし、顧客ゲット……ふっふっふ、この調子で集めて行けば、この店も人気になるのかしらね?」

とか言っていた。アニスさん、そんな事を考えてたのか……と思いながら、お客が来るまで店の掃除をする事にしたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る