第12話

運送の仕事になったので、グランド王国の内部の、東通りの奥に行き、一軒の家に辿り着く。


「もしかして……ここに、依頼主が?」


「ええ、コリンが言っていたのは、この家に住んでいる者から、荷物を運んでほしいって事よ?」


そう言って、アリサさんは、家の扉を叩く。すると、中から四十代ぐらいのダンディーな男が、姿を現した。


「一体、何の用だ」


「ギルドに依頼を出したでしょ? それを私達が引き受けたのよ」


そうアリサさんが言うと、男が


「お、そうか、じゃあ頼んでいいか?」


そう言ってきたので、アリサさんが


「ええ、任せて」


「じゃあ、ちょっと待ってろ」

そう言って、一度奥の部屋に行き、大きな箱を持ってきた。


「この箱を、サーシャルランドのある女に渡して欲しいんだ」


「サーシャルランドのある女?」


「ああ、名前は、アニス・レスト、お菓子屋さん「シュガーレスト」の店長だな」


「え……それって」


「何だ、知っているのか?」


「知っているも何も、僕が働いている場所です」


「なんだ、お前さん従業員だったのか、なら話は早い、私はアニスの叔父でな? そろそろ誕生日が近いんで、そのプレゼントだ、従業員なら直接渡してくれないか?」


「あ、はい、判りました」


「う~……そうね、エルフィーが持っていた方がいいかもね」


「じゃあ、頼んだぞ」

男の人が僕に大きな箱を持たせ、扉がしまった。箱は、結構重く、持ち運びが大変そうだったけど、背中にしょっていけばいいと思い、アリサさんが、紐をくれたので、それで縛って、背中にくくりつけた。


「じゃあ、行きましょうか?」


「これ、僕一人で運べば問題はないと思うけど……お菓子屋さんに戻るのだし」


「シュミッツ平原を移動中に魔物が現れるかも知れないでしょ? それに……私達は仲間なんだからさ?」


「そうですね……うん、じゃあ、行きましょう」


「ええ」

そう言って、サーシャルランドへ向けて、運送を始める事にした。グランド王国を出る時に、門番の二人が

「お、出かけるのか?」と聞いてきたので、アリサさんが

「ちょっと仕事でね?」と言うと


「気をつけてな? 俺達は、ここで待っているから」


「ああ」

と言って、見送ってくれた。グランド王国の外に出て、シュミッツへ平原を歩き、サーシャルランドに向けて歩いていると、スラームが一匹現れた。


「魔物ね? ここは、私に任せて」


アリサさんが杖を構えて、呪文を言う。


「火の力によって、滅ぼせ、フレア・ボース」

そう言うと、杖から火の玉が出て、スラームに命中、スラームが、一瞬で消滅した。うん、やっぱり魔法って良いなあ……僕も覚えられるんだったら、使ってみたいかも?


「ふう、今のうちに行きましょ?」


「はい」

そう言って、先を進み、何も問題もなく、サーシャルランドに辿り着いた。

箱が重いので、ちょっと疲れてきたので、急いでお菓子屋さん「シュガーレスト」に向かった。シュガーレストに辿り着き、店内入ると、店長のアニスさんが


「あ、お帰り、エルフィー」

そう言ってきたので、僕は


「ただいまです、アニスさん、お届け物を持ってきました」


背負っていた箱を下ろす。


「お届け物?」


「グランド王国にいる、叔父と名乗る人物から、貰い受けたんですけど?」


「ああ、なら判るわ、ありがと、エルフィー……で、何で貴方は、まだいるんです?」


「いちゃ悪いかしら?」


「エルフィーは、ここの従業員だし、もう役目は終わったようなものですけど?」


「……ホントむかつくわね……ねえ、エルフィー? やっぱり記憶、思い出さない?」


そう言われても、思い出す事はないので


「すいませんが……思い出せないです」


「そう……はあ……」


「じゃあ、用はないですね? とっととお帰り下さい」


「うぐぐ……判ったわよ!また来るわよ? エルフィー」


そう言って、アリサさんは怒りながら、店を出て行った。


「ふ~……とりあえず……エルフィー明日からまた、よろしく頼むわね?」


「あ……はい」


「じゃあ、今日はもう休んでいいわよ?」


「判りました……ところで……」


「何?」


「その箱の中身って一体、何だったんですか?」


「それは……秘密、まあ、時期がきたら教えるわ」


「あ、そうですか」

う~む、気になる、まあ……後で教えてくれると言うんだし今日はもう、休むか……そう思いながら、用意された自分の部屋に行き、休む事にしたのでした。

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