第8話
次の日になって、僕は、朝早くに目が覚めたようだった。
目覚めは、まあ普通かな……? 夢も見なかったし、窓の外を見てみると、そこはやっぱりと言うか……異世界のサーシャルランドの風景で、もしかしたら、寝たら、元の世界に戻っていて、男に戻っていると言う事はなかった。
とりあえず……目が覚めたので、今日も、サーシャレストの手伝いをする為
アニスさんに会いに行く事にした。
部屋から出て、一階に降りて、店内に出ると
「おはよう、よく眠れたかしら?」
従業員姿の、アニスさんが、品物を展示してる真っ最中だった。
「はい、よく眠れたかどうかは、解りませんが……まあ、眠れました」
「そう、じゃあ早速、仕事をやって貰おうかしら、はい、エプロンよ?」
そう言って、僕に従業員用のエプロンを渡してきたので、僕は、それを装着して、アニスさんと一緒に、品物を陳列する作業をする事にした。
数十分後、作業が終わり、アニスさんが
「じゃあ、お店を開くわね? エルフィーは、カウンターをお願いね?」
「はい」
アニスさんにそう言われたので、カウンター席につき、アニス店長が、お店を開け、シュガーレストが開店した。
店を開いた後、アニスさんは
「じゃあ、私は、お菓子を製作する作業にするから、お店の事はエルフィーに任せるわ」
と言って、厨房に向かってしまったので、店内にいるのは、僕一人になってしまった。と言っても、お客が来ないと、本当に暇で、ぼ~っとしてるのが、ちょっと退屈だった。僕もこの暇な時間になにかしようかな……とか、考えていると
「エルフィー! み、見つけたわよ……」
そう言って店内に入ってきたのは、シュミッツ平原で遭遇した確か……アリサとか言う、女性だった。見つけたと言われてもね……とりあえず僕は、一応お客様なので
「いらっしゃいませ、何か、お求めですか?」
僕がそう言うとアリサさんが
「何言ってるのよ? 私の事、本当に忘れちゃったの?」
そう言って来たので、僕は
「すいませんが、全く思い出せないです」
「うう~……じゃあ、教えてあげるわ、貴方は私と冒険者をコンビでやってたの、私が魔法使いで、貴方が剣士としてね、で、依頼を受けた途中で、魔物に襲われて、逃げる途中ではぐれちゃって、やっと見つけたのに、本当に私の事、思い出せない?」
そうだったのか……じゃあ……僕がこの体に転生? した時に、草原で倒れていた理由が、やっと解った。たぶん、元の人格のエルフィーさんは、魔物に襲われて、一度死んだ後、今の僕になったんだと思う。僕は、アリサさんに言っても、信じてもらえそうになかったので
「すいません、本当に思い出せないですね……今の僕は、ここの従業員として働いてますし」
「うう~……とりあえず……グランド王国に来てくれない? グランド王国を拠点に活動してたしさ?」
「それは、店長に相談してみないと」
「じゃあ、店長に言ってみるわ!」
アリサさんがそう大声で言うと
「何か、五月蝿いわね……」
そう言って、奥からアニスさんがやって来た。
「貴方が、店長よね?」
「ええ、そうですが?」
「エルフィーは、私と冒険者をやってたの、返してくれない?」
「返してって言われてもね? エルフィー、どうしたいの?」
「どうしたいのって言われても……僕は、ここにいたいんですけど?」
少なくとも、ここが一番、安全だと思う。
冒険者とかやっていると、命の危険とかありそうだしね……
「そう……じゃあ、エルフィーは、こう言ってるんだから、あきらめてちょうだい」
「うう~……何で記憶をなくしちゃったの? エルフィー……私の大親友だったのに~……」
そう言われても……これは、僕のせいじゃないと思うんだけど……?
「さあ、仕事の邪魔だから、お帰り下さい」
「ちょ、仕事の邪魔って、客いないじゃない!」
「店の中で、大声で騒がれたら、迷惑ですので、退場してもらいます、では、お帰りなさい」
アニスさんが、何か言葉を言うと、目の前にいたアリサさんが、ぱっと消滅した。
「い、今のって……」
「強制転送の魔法です、グランド王国の広場あたりにでも、転送させときました、はあ……無駄な時間だったかも……エルフィー? カウンター、お願いしますね」
「あ、はい」
そう言って、アニスさんは、再び厨房に戻っていった。
僕は、カウンターにいながら、あの調子だと、再び来るんじゃないか……と、そう思っていた。アリサさんがお店から、いなくなったその後、お店に来たのは、数人の子供達だった。
買ったのは、見た目はチョコの色をしていて、名前が「チョック」とか言われているお菓子で、これ……チョコバーみたいな味がするのかな? と疑問に思いながら、お会計をやって、最後に「ありがとうございました~」と言う事にした。
うん、なんか……接客業をなれた感じがするかも?
アリサさんも入れて、今日、シュガーレストに来たお客様は、6人だった。
それ以降、人がまったく来なくなったので、思いっきり暇になってしまった。
どうしようか……と思っていると
「今日は、もう人が来る事はなさそうですし、店を閉店させましょう」
厨房にいたアニスさんが、そう言って来たので
「解りました」
そう言って、閉店の手伝いをする事にした。
店を閉めて、アニスさんが
「じゃあ、店も閉めたし、出かけましょうか?」
そう言ってきた。
「出かけるって、何所にですか?」
「エルフィーの装備品を購入しようと思ってね? あのアリサって子が言っていたけど、エルフィーって冒険者だったんでしょ?」
「はあ、どうやらそのようです」
「じゃあ、エルフィーが使えそうな武器と防具、それに服も買ってあげるわよ?」
「でも、悪いですよ? そこまでしてもらわなくても」
「いいのよ、私のお店の従業員だしね?」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、まずは……エルフィー、エプロンを外してね」
「あ、はい」
僕は、そう言われて、従業員用のエプロンを外して、アニス店長に渡した。
アニスさんは、それを受け取った後、奥の部屋に持って行って、戻ってくる。
「じゃあ、行きましょう、まずは武器屋かな」
「はい」
武器か……僕に、あうのは何だろう?
剣? 槍? 矛? 杖?
でも、アリサさんが「剣士だった」って言っていたから、扱うのは剣かもな……そう思いながら、シュガーレストのお店を出て、広場の方に向かった。
町の中を数分歩いて、広場に辿り着いてから、ある一軒のお店の中に入る。
看板に剣と盾を象っているので、たぶんと言うか……ここが武器屋なんだと思う。
「いらっしゃい」
そう言って出迎えてくれたのは、滅茶苦茶髭の長い渋いおじさんだった。
マッチョな肉体に、所々に切り傷とかあるので、なんか、歴戦を生き抜いてきた戦士って感じの男だった。
「この子に似合いそうな武器を探しに来たの、安物でいいのないかしら?」
「この子か? ふ~む……お前さん、名前は?」
「あ、エルフィーです」
「エルフィーか……ちょっと手を見せてくれ」
「あ、はい」
そう言って、僕は男に手を見せる。
「ふむ……この手は、剣を握って出来た跡があるな、じゃあお前さんは、剣士だったんだろう」
「ええ、この子、元は剣士だったのよ、だから安物であるかしら?」
「なぜ安物に拘るのかは知らんが、とりあえず……これなんか、どうだ?」
そう言って、一本の剣を渡してきた。
「これは?」
「これは、エミューの剣と言ってな? 魔法付加はないが、切れ味はそこそこで、剣士がよく使う、一般的の剣だな、ちょっと振ってみてくれ」
「あ、はい」
僕は、剣を握って、振ってみる。
ブンブンっと風を切る音がして、重さはあまりなく、使いやすそうな感じだった。
「どうだ、使いやすそうか?」
「はい、重くないですし、これなら大丈夫かと」
「じゃあ、これでいい? エルフィー」
「ええ」
「で、親父、いくらかしら?」
「親父って、ワシはまだ若いんだがな……まあいい、これは200ベニーだな」
「もうちょっとまけられない? こんな美少女がお願いしてるんだから~?」
「そう言われてもな……と言うか、自分で美少女とか言うもんじゃないぞ?ふう……まあ、これは在庫が沢山あるからな、150ベニーでも構わないぞ」
「ありがとう、じゃあ150ベニーね」
そう言って、アニスさんは、店員に硬貨を渡す。
「毎度あり、他に何か買っていくかい?」
「いいえ、別のお店に行くわ、じゃあ、行きましょう? エルフィー」
「あ、はい、でも別のお店って?」
「ふっふっふ、それは着いてからのお楽しみよ~」
なんか、含み笑いをしていた。
凄い気になるけど……お楽しみって言っているし、アリサ店長の言う通りにしておこうっと……僕は、そう思っていたのであった。
こうして僕は、エミューの剣を手に入れたのでした。
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