第1話「祐徳稲荷神社門前商店街」⑦

※場所は前線カフェ店舗内(但しオープン準備中の状態)。⑥からの続き。時間の頃は⑤から1時間程経過 (※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーションです。




稲穂いなほ:「ふ~~~ん。じゃあ、亜都あとちゃんは、そこの沙希さき姉ちゃんを探す為に、この場所に来たと。」




亜都あと:「はい。沙希さき様は次期隠神刑部いぬがみぎょうぶとなられる方。ただ、400年程前から一切の消息を絶たれてしまい。一族総出で探してたんですが今まで、気配さえも誰も感じることが出来ず、ここ最近になって隠神刑部いぬがみぎょうぶ様が、こちらの稲荷神社いなりじんじゃ参道内にある"おとぎ前線"に沙希さき様の気配を感じると仰って、何か良く分からないんですけど、ここに"編みぐるみ"の姿で待ってたんです。」




祈里いのり:「沙希さきちゃんって…(※少し間を置き、疑問形な声で)本当は??」




神那かんな:「隠神刑部いぬがみぎょうぶといえば、何人かいらっしゃる"狸神たぬきがみ様"の最高の位よ。私たちでいうとウカノミタマ様と変らない偉大な存在。いや…この、いつもきょどってる沙希さきが…それはないと思うわ。じゃないの?」




亜都あと:「(※やや怒り気味の声で)沙希さき様を”きょどってる”だの”沙希さき”と呼び捨てするなぞ、私は許しません!」




沙希さき:「(※困った声で)あ、亜都あとちゃん…。」




神那かんな:「(※半ば馬鹿にした声色で)まさか、400年もとは思えなかったけど、沙希さきはずっと冬眠してたわよ。それを偶々、祈里いのりが見つけて起こしたって訳。で、今は私たちと一緒に行動してる。」




美琴みこと:「神那かんなさんの言う通り。それに沙希さきさんが次期隠神刑部いぬがみぎょうぶ様としたら、多少でも神気しんきを感じるはずだけど、それも感じない。逆に亜都あとちゃん、あなたの方が微小だけど神気しんきを感じるんけど…。」




亜都あと:「私もお恥ずかしながら、隠神刑部いぬがみぎょうぶ様直系の者。神気しんきはございます。それに沙希さき様は先々代の隠神刑部いぬがみぎょうぶ様の1人娘で…(※声のトーンが下げつつ最後はボソリと)本来なら、今の隠神刑部いぬがみぎょうぶ様は沙希さき様だったはずです。」




祈里いのり:「(※心配そうな声で)さ、沙希さきちゃん…。」




沙希さき:「亜都あとちゃん、お、お父さんは?」




亜都あと:「元気にされてますよ。ですから人間とは違います。沙希さき様がお消えになってから、心配で本来の隠神刑部いぬがみぎょうぶ様の仕事ができないと悩まれて、今の隠神刑部いぬがみぎょうぶ様は私の父が代わりにやってます。先々代様は本当に…この400年沙希さき様の事ばかり考えこまれていて…」




沙希さき:「(※オドオドしながら)ご、ごめんなさい。冬眠しなくちゃと眠ってただけだなの…。それにお父さんみたいな神気しんきもないし…。次期隠神刑部いぬがみぎょうぶだなんて…」




亜都あと:「沙希さき様は歴代最高クラスの神気しんきの持ち主だと、先々代様からも父からも聞きました。ただ、それが覚醒していないだけとも…」




祈里いのり:「(※驚いた声で)沙希さきちゃん、凄~い。」




沙希さき:「(※オドオドしながら)い、いや…。違うと思う…絶対違うと思う…」




稲穂いなほ:「事情は分かったけど、亜都あとちゃんは、その沙希さき姉ちゃんを向こうへ連れていくつもりなの?」




亜都あと:「いえ、違います。先々代様と父より、沙希さき様の様子を見ながら、覚醒されるのを補助せよと言われています。」




稲穂いなほ:「あら、私と逆ね(※フフッと小声で苦笑)。私はこちらのお姉さま方からウカノミタマ様より厳し~いご指導を受けつつ1人前の眷属となるようにと、ここにいるの。立場は違うけど、亜都あとちゃん、仲良くしようね。これから宜しく!」




亜都あと:「い、稲穂いなほちゃん…私からも宜しくお願いします。」




<熱い握手を交わす稲穂いなほ亜都あと。その光景に唖然とする蒼羽あおばと、困った表情の狐神族きつねがみぞくの3人。不安な気持ちで一杯の沙希さき


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