第4話 先輩を見捨てる



 私は決めた。

 先輩を見捨てよう。


 その先輩は、落ち着いていて冷静でとても頼りがいのある先輩だ。

 頭も良いから成績優秀で、誰からも頼られる存在。


 けれど、私は知っている。

 先輩は、彼女は……私の彼氏を奪い取ったのだ。


 私には好きな人がいた。

 面白くて、傍にいると楽しいから好きだった。

 その人と一緒にいると笑いが絶えなくて、困った時はいつでも力を貸してくれた。


 けれど、先輩はそんな私の彼氏に言い寄って、私の彼氏だと知りながら、何度も遊びにさそって二人きりになった。


 そして、先輩は私達を別れさせた。


 何も知らないフリをして、いつか復讐してやろうと思っていた。

 けれど、彼は先輩と一緒にいる時に楽しそうにしていたから。

 だから、我慢していたのだ。


 でも、それも今日で終わりだ。

 やむおえない事情があるなら、彼の悲しみも少しは少なくなるだろう。


「先輩、さようならです。あなたを見捨てますね」

「どうしてよ! 貴方も女なら私の気持ち分かるでしょう!」


 一番大切な物に必死になる気持ちは分かる。


 でも、それを声高に正当な権利だと主張するその心には虫唾が走った。


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