●ハウリン・ウルフ「THE REAL FOLK BLUES」(MCA/Chess)

ハウリン・ウルフ、本名チェスター・バーネットは1910年生まれ、マディ・ウォーターズ、サニー・ボーイ・ウィリアムスンらと並んで、60年代シカゴ・ブルース・ブームの立役者となったシンガーである。ギター、ハープもやるが、やはり彼の本領は圧倒的な迫力の、そのダミ声にあるだろう。


広沢虎造かハウリン・ウルフかという、一度聴いたら一生耳に残りそうなその声で、彼は1976年に亡くなるまで数多くの曲を精力的にレコーディングした。


でも、声ばかりでなく、彼のヴォーカル・テクニックも実は相当なもの、ということが分かるのが、このアルバム。フォーク・ブルースなんて言っても、全然枯れてなくて、もうコテコテのシカゴ・ブルース12曲がつまっているのだが、不思議と一枚通しで聴いてもトゥー・マッチな感じがしない。やはり、歌がウマいのだ。


曲の配列が絶妙ということもある。まずは、レッド・ツェッぺリンの「ザ・レモン・ソング」(2ndアルバム所収)の原曲、「キリング・フロア」でオープニング。エリック・クラプトンが在籍していた「クリーム」のレパートリーでもある「シッティン・オン・ザ・トップ・オブ・ザ・ワールド」をはじめとして、アップテンポ、ミディアム、スローと曲配分もほどよく、結構ポップで聴きやすい。ブギウギのリズムが心地よい「ネイチャー」、シャッフル調の「プアー・ボーイ」などはお薦め。基本的に彼の歌は陽性なのだ。


アルバム・ジャケットは、もろ50代のオッサンなんで若い女性リスナーは引いちゃうだろうが、ジャケを伏せて聴かせたらけっこうウケるかも。


ブルースというと重苦しいとか、暗いとかいう先入観を持っているひとも多いと思うが(実際それらもブルースのもつ性格の一部ではあるのだが)、意外に陽気でノリノリなブルースもあるんだよ、とこの一枚は教えてくれます。


(2000.11、原文ママです)

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