快楽殺人鬼の異世界殺戮譚

Leiren Storathijs

プロローグ-処刑までの経歴-

 快楽殺人とは、殺人自体が快楽で、殺人により快楽を得る目的で行う殺人のことである。


 男の名はアクトル・ガロウズ。最初のあだ名は親殺しから始まった。

 理由はただ人間の死に様を見てみたかったから。当時の歳は僅か八歳。


 周囲からは例え親殺しでも何かもっと深い意味があったのでは無いかと噂されていたが、この次に起こした連続殺人で全てがひっくり返された。


 アクトルは幼少期、とある小さな集落で暮らしており、親を殺した後、友人、知り合い、世話してれた大人を殺し、家を放火し回っては、子供を炎へ投げ込み、最早なんと言われようがどんな場所でも殺し続け。


 アクトルが十歳の頃にして、集落は全滅に至った。


 理由はただつまらなかっただけ。人を殺すことだけが唯一の楽しみとなっていた。

 それから食べ物は殺した人間の家から盗み、八歳から何とか二年間食い繋いだが、アクトルにその二年間は一切の苦では無かった。むしろ快楽であった。


 異変に気が付いて町から来た警備兵によれば、血みどろの民家でアクトルは幸せそうな顔で寝ていたという。


◆◇◆◇◆◇


 警備兵が身元を確認したところ、アクトル以外生き残りはおらず、最初は何者かのテロがあったのかと思われ、訳もわからず見知らぬ場所で目を覚ましたアクトルの絶望しきったような表情から、周りの者達はアクトルを哀れんでいた。


 しかし、当のアクトルは絶望などしていなかった。見知らぬ場所て目を覚ましたことについては混乱はしているが、絶望ではなく集落全ての人間を殺してただならぬ達成感の余韻に浸っていたのだ。


 それから数日間、町に保護という形て連れてこられたアクトルは、親がいない為拾い手が現れるまで長期の保護期間とされたが、その後にまた事件は起きた。


 保護期間中、カウンセラー兼世話係をしていた女性職員が絞殺された。

 女性職員がいつも通りにアクトルの話し相手になっていた所、突然アクトルが暴れだし女性職員を押し倒し首を両手で絞め、直ぐに近くにいた警備員が駆けつけ、アクトルを無理やり引き剥がすも、既に女性職員は、首の骨を折って死亡していた。


 殺した理由は『全てを受け止めてあげる』と言ってくれたから、何も知らない彼女に全てを教えてあげたという。


 当初この事件は精神が不安定なアクトルに不用意な言葉を投げたとする女性職員の不注意が問題だったと片付けられたが、この時点でアクトルの殺人衝動は再度膨れ上がっていた。


 アクトルが保護されてから更に二年。十二歳になった頃、漸く拾い手が現れた。

 アクトルの新しい保護者として現れたのは、町で有名なヤブ医者だった。


 ヤブ医者はアクトルを見つめると直ぐにその心意を見抜き、保護することに大いに喜んだ。

 ただ喜ぶヤブ医者に周りの者は誰一人として理解する者は居なかった。アクトルを除いて。


◆◇◆◇◆◇


 アクトルはヤブ医者の病院へ連れて行かれ、ヤブ医者はアクトルに最初に霊安室に保管された死体を見せた。ヤブ医者はただ単にアクトルの反応が見たかった。


 ただ霊安室と言えど、保管されている死体は保存状態が良く欠損したものは稀で、それでも殆どの人間は気分を悪くしていたことをヤブ医者は知っていた。

 しかしアクトルはそこで笑みを零した。


「やっぱりだ! 君は快楽殺人鬼に違いない! これから君はそう。ゲイルと名乗りなさい。ゲイルとは世界で、一時期名を馳せた殺し屋の名前だ」


 ここでアクトルは名前をゲイルと名付けられた。

 そこからゲイルの快楽殺人鬼の歴史は始まった。


 それからゲイルが処刑に至るまではとても速く、凄まじい勢いで世界に名を上げ、絞首台まで一気に駆け上がった。

 ゲイルの協力者であるヤブ医者も同じく吊るされ、ゲイルは首に縄を掛けられる間に舌を噛んで自決した。

 

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