第59話 ジェネラル・クワッド・ソード
とりあえず、ソルドが言うにはクワッド・ソードと呼ばれる最強の近衛が道を塞いでいて二代目の成長に必要なロイヤルシロップが取りに行けないということらしい。
「他の働き蟻やアンティオンはどうしたのですか?」
「我ガ命二ヨリ、最深部デ休眠状態ニシテイル…シカシ双璧ノクワッドダケハ権限ガナイ…。」
「つまり他の蟻は邪魔しないよう休眠させているけどそのクワッドだけは命令できないからどうしようもできないと?」
「然リ、奴ハ武ノ頭…文ノ頭ノ我デハ止メレヌ…。」
ソルドは文官の頭でその暴走しているクワッドが武官の頭ということらしい、確かに戦闘力では勝てないのであろう。
「今ノ奴は、何カニ憑リツカレタヨウニ女王ヲ守ッテイル…話ニ一切応ジヨウトシナイ。」
話の通じない…嫌な予感がする、今気づいたがよくよく見るとソルドの体はあっちこっち傷ついていた。
「クワッドをどうにかしようとしていたんでしょうね。」
ムゥがボソッと呟いた。
「実際、上まで行って保護してもらう時間はないんだろうな…。」
「姫ニロイヤルシロップヲ与エナケレバ、女王ニナレヌ…。」
時間的な余裕は無いらしい。
「あの勇者達じゃどうしようもできないでしょうね…。」
「どういうこと?」
「基本的にダンジョンに居る魔物は戦闘蟻より弱いんですよ、戦闘の頭ということはこのダンジョン最強、つまりキマイラにやられていたあの人たちじゃ…。」
確かにそうなると全滅してもおかしくは無いだろう。
「そんな!?助けなきゃ!」
マサトは今すぐにでも追いかけていきそうになっていた。
「片腕の無い君が一人行っただけで死体が一つ増えるだけだよ?」
「…それでも、僕はっ…。」
「ソルド、報酬は用意できる?」
「我ラガ集メタ秘宝ヲ差シ上ゲル、ドウカ助ケテ欲シイ…我ラノ全滅ガ掛カッテイル。」
マサトは立ち止まりこっちを向き見つめていた。
「了解した、クエストはジェネラル・クワッド・ソードを止めてロイヤルシロップを手に入れる…報酬はダンジョンアントの秘宝でいいね?」
「ドウカ、ヨロシク頼ム…。」
俺達は冒険者、財宝を求めてダンジョンに潜っている…ならばこれはチャンスだ、受けないわけにはいかない!
「皆、準備はいい?」
「ご主人も甘いでございますね…。」
「おうよ!」
「いつでも!」
「いいよ!」
「行こう!ソルド、道案内お願い。」
「承知シタ、コッチダ。」
俺はマサトの背中をバンと叩き、ソルドを先頭にさらに奥深くを目指し歩みだした。
~同時刻~
「くっそ!まだいてぇ…なんなんだよあいつら!!」
お腹の辺りを擦りながらセイジは悪態をついていた。
「ダンジョンで困ってない、むしろ私達が邪魔してるなんてね…。」
「そんなことあるか!こんな危険な魔物が多い場所があるのに困っていないわけないじゃないか!!」
ユウトは少し怒っているようで速足になっていた。
「どうせあいつらは自分らの獲物を横取りされると思って嘘をついていたんだろ、あんなどこの馬の骨ともわかんないやつらがこの先戦えるわけがない!!」
「そうだったのね、私嘘だなんて思わなかった…。」
「俺達で女王蟻を倒してこの国に平和をもたらすぞ!!」
「「おー!!」」
そうして勇者達は先を急ぎ巨大な空間へとたどり着いた、そこの奥には巨大な蟻が横たわり、正面に鎧を纏い佇むアンティオンと呼ばれた亜人が居た。
「去レ…ココハ女王陛下ノ休息ノ間、誰ニモ邪魔ハサセヌ…。」
重く響く声が響き、勇者達の侵入を拒絶する。
「なんか、ヤバくね?」
セイジはその雰囲気にビクビクしているようだった。
「臆するな!俺達は勇者だ!!あんな蟻くらい敵じゃない、行くぞ!!」
そうして剣を抜き放ちユウト達はその巨大な空間へと踏み入れた。
「!?っ来るぞ、皆、散開!!」
入った瞬間空気が変わるのを感じた、ユウト達は左右に展開しフォーメーションを形成し始める。
「我ガ聖域ヘノ侵入、万死ニ値スル!!」
アンティオンの騎士は高速でユウトに接近し剣を一本抜き放つ!
「ぐあ!?」
剣を合わせ受け流そうとするがそのまま後ろへと飛ばされてしまった。
「優斗!!」
ケンゴは弓を構え即座に3本を連射する、しかし奴は空いている左腕全て払いのけてしまった。
「んなろ!!」
セイジはナイフを投げつけながら近づき短刀で斬りつける。
「効カヌ…。」
剣を振り、ナイフを弾くとそのまま剣を跳ね上げ短刀を吹き飛ばしセイジの首を掴み上げてしまった。
「くそ、放せ!!ヤダッ死にたくないっ、ひっ…嫌だっ!?」
「誠司!!」
そこへユキが飛び込み胴目掛けて拳を振るい衝撃波を送りセイジを振り落とした。
「…。」
「ウィンディセイバー!!」
ユキがバックステップで距離をとった瞬間、風の刃がアンティオン目掛けて飛んで行き爆風を巻き上げた。
「優斗!今よ!!」
「はぁぁぁぁぁ!!!」
ユウトが煙の中アンティオンに斬りつけた!!
「剣が…動かない!?」
斬りつけたまでは良かった、しかし剣が全く動かなくなってしまった。
「ソノ程度デ、我ヲ倒ス?フザケルナ…。」
「ぐはっ!?」
ユウトは思いっきり蹴り飛ばされてしまった。
「優斗!!」
ミオはユウトの下へと走って行く。
「ウィンデぃっ!?」
牽制のために魔法を撃とうとしたリエの目の前にアンティオンは迫りそのまま胸を剣で貫き、横に振り抜いた。
「理恵ぇぇ!!!!」
そこには胸を裂かれ、左腕の転がったリエだった物が転がった。
「こんのぉぉぉ!!!」
涙を堪え殴りかかるユキの拳を左腕で受け止め次の瞬間、今まで使っていなかった中央の左右の腕で剣を更に二本抜き放ち彼女の体をクロス状に斬り裂いた。
「えっ…?」
驚きの表情のままドサドサっとユキの体は文字通り崩れ落ちた。
「ひっひぃぃぃ!?」
セイジはその光景を目にして完全に怖気づき腰を抜かしズルズルと後退りを始めた。
「きっさまぁぁぁぁぁ!!!」
ユウトはミオの回復も待たずに斬りかかる!
「あああああぁぁぁ!?」
しかし一瞬で3本の剣を振るい脇、腹部、太ももを貫かれ仕上げと再び思いっきり蹴り飛ばされユウトは壁にめり込んでしまった。
「澪ちゃんこっちに!!」
ショウコは叫びながら澪の下へと走った、ミオもそれに気づいて急いで戻ろうとする。
「逃ガサヌ…。」
背後にアンティオンは迫り3本の刃がショウコを捉えた。
「翔子ーーー!!!」
「あっがっ!?」
ショウコと剣の間にケンゴが飛び込んだのだ、剣はケンゴを貫通しショウコの背中に届いたが軽傷で済んでいた。
「健吾君!?翔子!!」
剣を引き抜かれケンゴはその場に倒れ、ショウコを抱きかかえたミオへアンティオンは再び剣を振り上げた。
「っ!?…雅人ぉぉ!!!!!」
死の間際、ミオは大切な幼馴染の名を叫んでいた。
「澪ぉ!!!!」
ガキンっと大きな音が響き渡り、目を開けると目の前には右腕を失い痛々しい姿だったがマサトが盾を構え3本の剣を受け止めていた。
「雅人!!」
ミオは涙を流しながらショウコを抱え再会の奇跡を喜んだ。
「殺させないっ!!絶対に!!!」
ギリギリと次第に押されて行き盾にもビキビキとヒビが入り始めついには膝をついてしまった。
「はぁ!」
その時、白い何かがアンティオン目掛けて飛び込みその二つはそのまま距離をとるように飛んでいった。
「助かった…どうか、あとは、よろしくお願いします…。」
マサトの盾はそのままガランと音を立てて地面へ落ち、激しく斬りあうアンティオンとタカユキを見つめるのだった。
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