第51話 ダンジョン市場

 ドルガードを出発してしばらくたった、アルメア領まではまだしばらく掛かるようだが旅はとても快適だ。


「ご主人結構センスいいのでございますね、ちょっと意外です。」

「一言余計だよ。」

 旅の途中暇だったのもあり馬の操り方をムゥに教わりながら手綱を握っていた。


「ダンジョンは逃げませんしこのままのペースでも今日中にはアルメアに入れると思いますよ。」

 ドルガードに向かった時のような速度ではないが順調に進んで行く、バルダーストロングは大人しく扱いやすいのもあり操る練習もできていいことばかりだ。


「ご主人も慣れてきたしお昼寝しても大丈夫そうでございますね~。」

「隣で寝るなよ、突き落とすぞ。」

「ご主人、あたくしの扱いなんでそんなに雑なのでございますか!!」

「助手席は寝ちゃだめだろ!」

 この前のネズミやハイドラなど化け物との乱戦が嘘のようにのんびりとした平穏な旅ができていた。


「では、暇ですし目的地について簡単に説明しておきましょうか。まずアルメア公国ですがドルガードの隣に位置する小国であまり豊かではございませんでした、ですがつい最近ダンジョンアントが巣を作り大型ダンジョンができたことで一変します。」

 ムゥのお話に耳を傾けながら馬を操っていく、向こうの世界ではペーパードライバーで運転なんて全然しなかったがこんな感じだったのだろうか。


「ダンジョンを求めて様々な国や地方から冒険者が集まりお祭りのような賑わいを見せております、ダンジョンは滅多に作られないので当然と言えばそうなのでしょう、国もダンジョンの保護をしつつ利用して国益をあげております。」

「保護ってなんか制限でもあるのか?」

「ありますよ~、ダンジョンアントはなるべく討伐してはいけない特にクィーンは絶対に倒してはいけないとかですね。ダンジョンとなる巣を形成している群れを討伐してしまうと維持ができなくなってしまうのでなるべく倒すのを避けなければいけないのです。」

 確かに国にとっても金のなる木をそう簡単に手放したくはないだろう。


「で・す・が!ダンジョンアントの中にはジュエルキャリーという蟻が居まして、光物、レアなアイテムを収集しているのでそれを狙ってなんだかんだ狩られてしまうのでございます。」

「え、それって急がないとダンジョン枯れちゃうんじゃないの?」

「大丈夫でございます、保護とは言ってますがそんな必要ないくらいダンジョンアントは強いし危険なのでございますよ。」

 保護する必要はないらしい。


「なにより群れとして連携してきますからね、普通の冒険者じゃあっという間に餌になっちゃいます。」

「結構リスクあるのね。」

「元々魔獣や魔物などをフェロモンで集めてそれを巣の中に住まわせて壁兼餌とする性質を持っておりますから蟻の居る場所まで潜り込むのも至難の業でございます。」

「でもその魔物とかを全部倒したら空になるんでしょ?」

「いいえ、なりませんよ?ダンジョンの入り口は大穴、つまりメインの出入り口ってだけであって他にも小穴が複数存在していてそこからフェロモンで魔物が少なくなったら補充される無限機関のような感じなのでございます。」

 この世界のダンジョンは結構長持ちしそうだしめんどくさい無限ループ機関を持っているらしい。


「その分素材はたくさん手に入るし経験も積めるので冒険者にとってはいいこと多いのでございますよ。」

「確かにいろんな奴と戦えるのはいい経験になりそうだね。」

「ちなみに、もちろん他のパーティが戦ってる敵の横取り禁止、助けてほしかったら救難要請をだすなどネトゲみたいなルールもありますよ。」

「そういうとこはゲームっぽいな。」

「昔こっちの世界に来た人が最低限のルールをって作ったのでございます。」

「ネトゲみたいになるわけね…。」

 たぶん、こういうルールを破るやつの対応のため冒険者同士の殺し合いを黙認する決まりがあるのだろう。


「あ、ご主人、関所見えてきましたよ。」

「いよいよアルメアかぁ。」

 そうして俺達は関所を通過してアルメア領へと入国してダンジョンを目指していくのであった。


「大型キャラバンの入国料高くない??」

「ぼったくりくらい高かったのでございます!!」

 ちなみに銀貨40枚掛かった…。


「まったく、ダンジョンがあるからって入国料上げ過ぎなのでございますぅ!!」

 予想外の出費で不満たらたらなムゥであった。


「とりあえず、ダンジョンってもうちょっと先だっけ?」

「一日はかかるかと?」

「じゃあのんびりいこっか。」

「程よいとこで馬達も休ませましょう。」 

「おっけ~。」

 俺達は暗くなってきた頃合いで一度休憩を取ることにし馬達を休ませつつ食事を済ませ睡眠をとることにした。


「ゼル、部屋はどうだった?」

「快適だったよ、よく眠れちゃった。」

「あたしたちずっと休ませてもらったし夜の見張りはやっとくから二人とも寝とくといいよ。」

「そうさせてもらうのでございます~。」

 キャンピングカーのような馬車の中は快適でソファー置いてあり寛げる空間も確保され梯子で登る2階部分もあり狭いが横になって眠れるスペースとなっていてそこに布団を用意しておけば熟睡できるほどだった。


「このオーダーメイド馬車作って正解だったのでございます!」

「そうだね。」

 ムゥ曰く旅のスピードよりも快適性を優先したらしい。


「で、お前はなんで隣に潜り込んでくるんだよ!!」

「今更減るもんじゃないしいいじゃないですかぁ!」

 この日は一晩ゼルとロゼッタに任せて俺とムゥは寝かせてもらった。なぜか俺が寝てる布団に潜り込んで来るムゥに困らせられながら…。


「おはよ。」

「タカユキ、おはよ。」

 翌朝、目覚めるとムゥが裸で抱きついており抜け出すのに苦労したがどうにか抜け出し外に出てくるとゼルが焚火をしながら座っていた。


「よく眠れた?」

「うん、快適。」

「食事は保存食だけどな。」

 そう言いながらロゼッタが固焼きのパンと干し肉、ドライフルーツを持ってきた。


「誰も料理できないのは不便だよね…。」

「覚えようとは思うんだけど…。」

 そもそも教えれる人が居ないのだ。


「そこら辺は追々だね…。」

 そう言いながらパンと干し肉を齧った。


「とりあえず、食事がすんだら出発しましょ、順調に行けば昼過ぎには目的地に到着すると思いますよ。」

 いつの間にか起きて馬車の屋根に腰掛けてナッツを摘まんでいるムゥはそう言いながら足をブラブラと遊ばせていた。


「じゃあ準備して出発しようか、ゼル達は休んでて。」

「そうする~。」

 馬達の準備を済ませ俺達は再びダンジョン目指して出発するのであった。


「ご主人、見えてきましたよ。」

「うわぁ…なんか思ってたのと違う…。」

 昼過ぎ、到着したダンジョンの入り口はなんというか縁日のように屋台が並びまさにお祭り騒ぎという感じだった。


「馬車は並んでいるのでその順番に沿って止めてください、そこをキャンプとして使っていただいて構いません。」

 アルメアの騎士だろうか、交通整理をするように誘導された。


「とりあえずここを拠点にダンジョンに潜る準備をしましょうか。」

 俺達は馬車を止め、ゼル達を起こしたらその場所をキャンプとして準備をした。


「ある程度窃盗などの犯罪は騎士が見張ってくれていますけど追加でお金を払えば馬の面倒も見てくれるしっかりとした見張りを派遣してくれるそうですよ。」

「そういうとこはしっかりしてるのね。」

「まぁこれだけ人が居たらなぁ。」

「ホントすごいよね。」

 周りを見渡すと拠点でダンジョン進行の相談をするパーティ、屋台で食べたり飲んだりしている者など様々な人達が居てまさにお祭り騒ぎだ。


「まずは情報収集かなぁ。」

「ギルドの出張支部があるらしいからそこに行くのがいいかもな。」

「とりあえず見張りの依頼はしてきたから荷物は大丈夫だと思うよ。」

「じゃあ早速行きましょうかね。」

 こうして俺達のアルメアダンジョン探索が始まるのであった。

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