第49話 次の目的地
この世界はすでに数多くの地球からの転移者がいていろいろと文化を侵食しているらしい、特に食事だ中世に魔法を加えたような雰囲気が基本だが食事が異様なほど進歩しているのだ。
「スパゲッティのミートソースを二つ!片方大盛りで。」
ゼルと二人で食事に来ていて、今日のランチはスパゲッティにしようとなったのだ、地球に居た頃と全く同じ食事がとれるこの世界に不満もそうそうでないだろう。
「こういうご飯も美味しいんだよね。」
遺跡から戻ってきてステーキ屋やバーなどいろんなとこに行ったがこのスパゲッティのお店がなかなかにコスパもよくて美味しかったのだ。
「ミートソース二つ、片方大盛りです。」
「はい、どうも!」
しばらくして料理が運ばれてきた。
「これ魔物の肉らしいけど美味しいね。」
地球と違うところ、食事に向こうには居ない生物が普通に食べられ料理されているというところだ、これは味が広がり正直地球よりも食事は楽しいかもしれない。
「あ、ここに居ましたね!!」
食事をしていると聞き覚えのあるおじゃま虫の声が聞こえてきた。
「あたくしにもミートソース大盛りで!」
おじゃま虫は何の躊躇もなく同じテーブルに座りミートソースを注文していた。
「急にどうしたんだよ、ムゥ?」
ご飯を待っているムゥに尋ねる。
「一応今後のことについて話がまとまったのでお話しとこうかと!」
「俺の怪我も完治したしな。」
ドルガードに滞在してしばらくたったが俺達は冒険者、そろそろ次の目的地に向かう頃合いなのだろう。
「で、次の目的地なんですけど、ご主人、ダンジョンに興味ありませんか?」
ムゥがニヤッと笑いながら聞いてくる。
「ミートソース大盛りです。」
運ばれてきたスパゲッティを食べながらムゥは続ける。
「隣の国なんですけど、なんでも新しいダンジョンアントの巣が発見されたらしくて冒険者の間で超話題らしいのでございます。」
「ダンジョンアント?なんだそれ?」
「女王アリを中心に一つの群れを形成する巨大なアリで、巣を作ると巨大な空間をいくつも作り、そこにフェロモンで集めた様々な魔物を配置し自分たちは奥深くへ潜りその魔物を餌にしたり外敵からの防波堤として利用する習性があるのでございます。」
「つまり探索するといろんな魔物と遭遇するってこと?」
「そうでございます、レアな素材やひょっとしたらその魔物が人から奪った貴重な武器が手に入るかもしれないまさにダンジョンなのでございます!」
この世界ではアリがダンジョンを生成するということらしい、確かにアリの巣はダンジョンみたいに見えるし納得できる。
「じゃあそのアリの巣ダンジョンに行ってみようか、ゼルもいい?」
「うん、私はタカユキについて行くだけだから。」
そう言うとゼルは微笑んで見せた。
「じゃあ早速準備を始めましょうか!ちょっと買おうと思っていた物がやっと入手できたので後で紹介しますね!これからの旅が快適になる一品でございますよ!」
そう言うといつの間にか食事を終えたムゥはではまたあとで~とタッタッタッと出ていってしまったのだった。
「あいつ、食事代丸投げしやがった…。」
ゼルはフフフと笑っていた。
食事が終わり宿屋に戻ってからのことだ、ゼルとのんびりとした時間を過ごしていると再び騒がしいのが入ってきた。
「ご主人~!!完成したから見に行きましょ!!」
「なにをだよ!?」
主語のない事を言いながら早く早くと俺とゼルを急かしてムゥは連れだしていくのだ。
「せっかくの時間を邪魔して、なんなんだよ…。」
俺とゼルはムゥに連れられギルドの工房横の広場に連れてこられる。
「ふっふっふ、これをご覧あれ!」
ムゥが指差す方向を見ると、そこには木製だろうか大きな長方形の箱に車輪がついた家のようなものが用意されていた。
「ムゥ、これは?」
「あたくしが依頼して作ってもらっていたキャラバン用の馬車でございます~。」
「すごいね、お家みたい…。」
実際小さな家に車輪を付けたような雰囲気の物だった。
「野宿なんて嫌でございますからね、向こうの世界でいうキャンピングカーでございます。」
「確かにそんな感じだけど…。」
「きゃんぴんぐ?」
「えっとね、移動できる小さな家ってことかな?」
「なるほど…。」
話していてちょっと気になったことがある。
「てかこれ、馬の力で動かせるのか?めちゃくちゃ重いんじゃ?」
「実際結構な重量ですけど…。」
「そこは解決済だよ!」
話に割って入るように奥の方からロゼッタが歩いてきた。
「こいつにはゴーレム技術の復活で考え出されたパワーアシスターを試験的に積んでるんだ。」
「なんだそれ?」
「簡単に言うと、クリスタルの魔力を使ってこいつ自体が動くのを補助するんだ。」
電動自転車のアシスト機能みたいな物だろうか?急に技術が発達した感じがする。
「予定では馬二頭にこれと物置用のもう一台を引かせる予定でございます。」
「ちなみに、今エネルギー充電してあるからタカユキの力でも動くんじゃねぇかな?」
ロゼッタにそう言われ、俺は試しにその車体に手を当てて力を込めてみる。
「ふん!」
ぐぐぐと音を立てながらその車体はゆっくりと前進してみせた。
「これなら予定通りいけそうだな。」
その様子を見ていたロゼッタとムゥは嬉しそうに頷いていた。
「では善は急げということで明日にでも出発しましょうか、ゴーレムの方も一段落着いたらしいですし。」
「そうなのね…。」
知らなかった。
「急がないとダンジョンのモンスターが狩られつくしちゃうのでございます!!」
「それもそうだな、じゃあ明日準備ができ次第出発しようか。」
「うん!」
その場にいた全員が頷き、出発の準備を始めるのであった。
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