第47話 報告と報酬

 しばらく時間が経ち街に到着した時は大騒ぎだった、遺跡後からゴーレムと巨大なハイドラの頭を持った俺達が出て来たのだ見張りは唖然としていたし周りに居た人達も信じられないという顔をしているくらいだった。


 どうにか、人だかりを避けてギルド前に到着したころにはもうギルド長のベダロットも出てきて再び大騒ぎで大変だった。


「タカユキ殿、よくおかえりになられた…早速ですまないのだが、話を聞いてもいいだろうか?」

「ですよね…。」

 休む暇もなく説明しなきゃいけないらしい、どっと疲れが湧き上がってきた。


「わかりました…とりあえず、ちゃんとした椅子に座らせてください…。」

「あぁ、すまないでは早速応接室に…。」

 そういうベダロットの後をゼルに肩を貸してもらいながら4人でついて行った。


「ベダロットさん、こっちも万全じゃないから詳しくは後日にしてもらっても?」

「あぁ、わかっている、宿屋に部屋を用意させてるから終わったらそこで休んでくれ。」

 そうして俺達は遺跡であったことを説明した。


 特殊なラットマンが発生していたこと、下層に白いハイドラが住み着いていたこと、ロゼッタの父のこと、ウガルルムのこと、陰で糸を引いていた者が居た可能性ざっとではあったが遺跡で俺達が経験し見てきたことを説明した。


「で、下層にはまだ稼働中のゴーレムが残っていてそのうちの1体を鹵獲してここまで引っ張ってもらった感じだよ。」

「なるほどなぁ…で、外のあれが住み着いていた白いハイドラの頭と…。」

 話を聞きベダロットは頭を抱えて項垂れているようだった。


「とりあえず、倒したあの個体だけで他には居なさそうだったから心配はないと思うけど…。」

「そうだな…そうだと思うておこう…。」

「ムゥ。」

 俺がムゥを呼ぶとカバンの中からゴソゴソと回収してきたギルドカードを取り出してテーブルに置いた。


「これが今回の探索で回収できたギルドカードでございます。」

「こんなにか…。」

 ベダロットはギルドカードを眺めながら悲しそうな顔をしていた。


「後はゴーレム関連の書物も何冊かあります。」

 俺の説明に合わせてムゥが回収していた本を並べていく。


「お、おう…結構な量だなっ!?」

「これでも重要そうな本だけを選んで持ってきた感じですよ。」

 ギルドメンバーの死にいろいろと思うこともあるだろう、だけどこっちも体が辛い、申し訳ないが急がしてもらおう。


「そうなのか…これは大規模編成で一回探索に行くべきなのか…うぅむ。」

「あとは、神官ネズミの衣装や筋肉ネズミが装備していた脱皮したハイドラの皮などがロゼッタのリュックに入ってます。」 

「見せてもらっても?」

 俺は目でロゼッタを見やると頷きリュックを開いた。


「ちょ!?うお!?」

 ロゼッタの急な驚く声に全員がそっちを見るとなんとリュックの中からスルスルとサラマンダーが現れ顔を覗かせているのだ。


「いつの間に潜り込んだんだよ!?」

 忍び込んでいたサラマンダーはそのままスルスルと這いずり俺の肩の上に登ってきた。


「なんだ!?」

「これは、ご主人の魔力が気に入ったんでしょうね、サラマンダーはめんどくさがり屋が多くて餌が貰えるならそこにずっと滞在するくらいなので。」

「食事のために付いて来たってことね…。」

 サラマンダーの顎を撫でてあげると眠そうな大きなあくびをしてボーっと落ち着きだしてしまった。


「とりあえず、特殊なネズミの素材はここに置いておきます。」

 ロゼッタも驚きながらも荷物を出してくれた。


「後は外にあるゴーレムと倒したハイドラの頭くらいですね…。」

「そうか、いやぁ調査依頼のはずがネズミの掃除といい大変なことになってしまったな…なんて感謝すればいいか…。」

「とりあえず、そこら辺の話は後日でも…。」

 言いかけた時ムゥがニヤッと笑った気がした。


「報酬の件なのですがあたくしから提案がありまして、ギルド長さんちょっとよろしいですか?」

「お、おう?」

 ムゥが急に立ち上がり報酬の相談をしだした。


「ご主人はそろそろ限界でしょうしあたくしに任せて宿屋でおやすみくださいませ~!」

 正直めっちゃ不安だが限界なのも事実ですぐにでも寝たいくらいだ…。


「ちょっと怖いけど任せるよ…。」

「お任せください、悪いようには致しませんので!」

 そしてムゥとロゼッタに後を任せて俺はゼルに肩を借りながらギルドを後にした、出る時ちらっとゴーレムと頭を見るとすごい人だかりができて大騒ぎが続いていた。


「知らんぷりしておこう…。」

 巻き込まれたくなかったのでそそくさと宿屋に俺達は向かうのだった。


 どの位経ったのだろうか、俺は宿屋に着きベッドに寝転がった途端に深い眠りについてしまった、意識が戻り気が付くとゼルが隣で寝ていて驚いた…。


「ん…おはよう、目が覚めた?」

 動いた拍子にゼルも起こしてしまったみたいだ。


「ごめん、起こしちゃったね…。」

「大丈夫、タカユキこそ体調はどう?丸一日眠ってたよ…。」

 結構眠ってたらしい。


「まだ体中痛むけど、だいぶ楽になったよ…ありがと。」 

「うん!」

 ゼルの笑顔が嬉しかった。


「ごっしゅじ~ん!目が覚めました~?」

 バタンと扉が勢いよく開きムゥが入ってきた…。


「お前…。」

「なんか入ってきたらまずい事でもしてたんですか~?」 

 ニヤニヤしながらそう言ってくるムゥには少しイラっとした。


「何もしてないよ?」

 ゼルは笑いながらそう答えた。


「そうですか…ご主人も元気そうですね、何か食べますか?持ってきますよ?」

「ああ、そうだね…。」

 するとムゥは部屋を出ていきしばらくしてご飯を持って帰ってきた。


「冷めないうちに食べちゃってくださいね。」

「ありがと。」

 はい!と笑うムゥは普通にかわいかった…。


「食べながらでいいので聞いてくださいませ、とりあえず昨日の内に報酬に関しては決定しハイドラの頭とゴーレムはギルド買取の下で研究が行われるそうでございます。」

「ドルガードのゴーレム開発の再開って感じだな。」

 ご飯を食べながら左手で傍らでのんびりしているサラマンダーに魔力をあげつつ話を聞いている。


「で、とりあえず、ご主人は完治するまでここを好きに使っていいということになっておりますのでご安心ください。」

「よかったね、タカユキ。」

「だね、お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうよ。」

「それではあたくしはギルドの技術者方とお話があるので失礼するのでございます~。」

 そう言うとムゥは部屋を出ていこうとして扉のとこでピタッと止まった。


「あ、ゼルさんは後で私とお出かけしましょう、ちょっと用事があるのでございます。」

「あ、うん、わかった~。」

 そうしてムゥは部屋を後にするのであった。しばらくしてゼルはムゥと一緒に出掛けてきたのだがなにをしてきたか聞くと。


「ナイショ!」

 と言いながら人差し指を口に当て可愛くウィンクをしてきた。


「こうするとタカユキが喜ぶってムゥちゃんが言ってた…。」

 だそうだが、ムゥの奴…ありがとうございますめっちゃ可愛かったです。


 この後数日が経ち、ムゥの魔法もあるおかげで普通に歩けるまでに回復することができた。


「そろそろまともに歩けそうでございますね、サラマンダーと遊んでるのもそろそろ飽きたでございましょ?」

 まともに動けなかった俺はサラマンダーを撫でたり可愛がったりして過ごすことが多く、おかげで火のクリスタルが大量生産されてそれをムゥが売りに行くという状況が続いていたのだ。


「二匹とも可愛いんだけどなぁ…。」

 二匹、そう…サラマンダーは魔力のあげすぎでなんと増殖してしまったのだった…精霊が大量の魔力と核の分裂で増えるのは聞いてなかった。


「今日は一緒に来てくださいませ、見せなきゃな物があるのでございます~。」

「わかったよ、留守番よろしくね!」

 サラマンダー達を撫でるとわかったのかどうかはわからないが口を大きく開けて反応していた。


「ここでございますよ!」

 ムゥに連れてこられたのはギルド直属の作業場だった。


「ここの技術者は凄腕が多いでございますからね、お願いしていたのでございます。」

「何の話?」

「話してませんでしたっけ?この前の報酬、ご主人の新しい装備でございますよ。」

 そう言って見せられたのは綺麗な白いハイドラの素材を使って組み上げられた全身分の軽鎧とシミターだろうか?二振りの剣がそこには用意されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る